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米1−3月期GDP改定値は上方修正も、個人消費は振るわず

by • May 29, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off59760

Q1 GDP Revised Up, But Domestic Demand Still Sluggish.

米1−3月期国内総生産(GDP)改定値は前期比年率0.8%増と、速報値の0.5%増から上方修正された。ただし市場予想の0.9%増を下回り、前期の1.4%増にも届かず。2014年1−3月期以来の低水準を示し、これで2014年から3年連続で1−3月期に減速した格好だ。

1−3月期のGDPは前年同期比で2.0%増と前期と変わらず、2014年1−3月期以来で最低にとどまる。なお2015年通期のGDPは2.4%増、2014年に続き2010年以来で最高を遂げた。

GDPのヘッドラインこそ上方修正されたものの、成長の7割を占める消費は速報値通り1.9%増に過ぎない。前期の2.4%増から減速し、1年ぶりの低水準にとどまる。GDPの寄与度は1.29%ポイントと前期の1.66%ポイントを下回り、こちらも1年ぶりの水準へ低下。最終需要(売れ残り商品などを除いたもの)は前期比年率1.2%増と、2012年7−9月期以来で最低だった。

▽個人消費の内訳
・耐久財 1.2%減、2011年4−6月期以来のマイナス>速報値は1.6%減、前期は3.8%増
*自動車/部品が11.5%減が下押し要因
・非耐久財 1.3%増>速報値は1.0%増、前期は0.6%増と2014年1−3月期以来の低水準
*暖冬を受け服飾/靴が0.9%減だった一方、ガソリンその他エネルギー製品が6.1%増と寄与
・サービス 2.6%増<速報値は2.7%増、前期は2.8%増と1年ぶりの高水準
*原油安でも輸送サービスが6.1%増と牽引した一方、外食/宿泊が1.9%増と前期の4.4%増、娯楽も3.8%増と前期の14.2%増から鈍化

個人消費が2%割れでは、GDP押し上げ効果は限定的。

gdp

(作成:BEAよりMy Big Apple NY、GDP以外は寄与度)

民間投資は、ほとんど速報値から上方修正された。企業の設備投資を指す構造物投資は2012年7−9月期から2013年1−3月期以来の3期連続での減少を示したが、マイナス幅は縮小した。ただし機器投資は下方修正され、2013年4−9月期以来の2期連続での減少を示す。一方で住宅投資は2桁増を維持しただけでなく2012年10−12月期以来で最高に達し、民間投資を支えた。民間投資の寄与度は0.45%ポイントのマイナスで、速報値の0.60%ポイントのマイナスから上方修正。ただし、3期連続でのマイナス寄与は2007年7−9月期から2009年7−9月期以来となる。

▽民間投資の内訳
・民間投資 2.6%減、3期連続で減少し2011年1−3月期以来で最低>速報値は3.5%減、前期は1.0%減
・固定投資 1.5%減、2011年1−3月期以来の減少>速報値は1.6%減、前期は0.4%増
・非住宅 6.2%減、2009年7−9月期以来で最低<速報値は5.9%減、前期は2.1%減

・構造物投資 8.9%減、3期連続で低下し2011年1−3月期以来で最低>速報値は10.7%減、前期は5.1%減
・機器投資 8.9%減、2期連続で低下し2009年1−3月期以来で最低<速報値は8.6%減、前期は2.1%減
・無形資産 0.1%減、3期連続で減少<速報値は1.7%増、前期は0.2%減
・住宅投資 17.1%増、2012年10−12月期以来で最大>速報値は14.8%増、前期は10.1%増

在庫投資の上方修正を受け、GDPの寄与度は速報値のマイナス0.33%ポイントからマイナス0.20%ポイントへ縮小。前期のマイナス0.22%ポイントに続き、3期連続となる。純輸出の寄与度も、マイナス幅をせばめた。一方で政府支出は速報値に続き0.20%ポイント寄与し、前期の0.02%ポイントを超えた。

▽その他
・純輸出の寄与度 マイナス0.21%、3期連続でマイナス>速報値はマイナス0.34%、前期はマイナス0.14%ポイント
・在庫投資 669億ドル、2014年1−3月期以来の低水準>速報値は609億ドル、前期は783億ドル

▽政府支出
・政府支出 1.2%増=速報値は1.2%増、前期は0.1%増と3期ぶりの低水準
・連邦政府 1.6%減、2014年10−12月期以来の低水準=速報値は1.6%減、前期は2.3%増
(連邦政府は防衛支出が3.6%減と重しに、州政府・地方政府が2.9%増と増加に反転し政府支出を補った)

GDPデフレーターは前期比年率0.6%上昇し、速報値の0.7%から下方修正された。前期の0.9%にも届かず、1年ぶりの低水準を示す。PCEデフレーターは速報値並びに前期と変わらず0.3%上昇。コアPCEデフレーターも速報値と変わらず、2.1%へ上昇だった。前期の1.3%から加速、約4年ぶりの高水準を記録しただけでなくFOMCのインフレ目標値「2%」を上抜けた。

企業業績は年率換算・季調済み・税引き後のベースで1兆6714億ドルとなり、前期比では1.9%増と2015年10−12月期の8.1%減から小幅改善した。前年比では3.6%減となる。在庫価値および減価償却調整ベースでは1兆8968億ドルで、前期比で0.3%増と3期ぶりに増加した。前年比では5.8%減となり、2015年10−12月期の7.8%減に続き2期連続で減少した。

BNPパリバのブリックリン・ドワイヤー米エコノミストは、結果を受け「今回の上方修正は在庫投資、純輸出、住宅固定投資が中心となったに過ぎない」と振り返る。もっとも個人消費をめぐっては「可処分所得が速報値から642億ドル上方修正されており、個人消費が上方修正されていない分、貯蓄率を5.7%へ押し上げた」ため、4−6月期に「当方の予想値2.4%増を上回り2.8%増となる公算が出て来た」とまとめた。

——米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が利上げ示唆を与えたように、4−6月期は個人消費が盛り返す期待が出てきました。ッ気掛かりな点は、企業収益です。決して好調とは言えず、米4月雇用統計で確認されたように採用を鈍化させかねません。貯蓄率の上昇という好材料をガソリンの値上がりが打ち消す懸念もあり、米4−6月期成長率が前年同期のような力強い回復を遂げるかは疑問が残ります。

(カバー写真 : Andrew/Flickr)

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