Drop Of The Unemployment Rate Isn’t Enough To Cover Up Disappointing Result.
米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比13.8万人増と、市場予想の18.2万人増を下回った。前月の17.4万人増(21.1万人増から下方修正)にも届かず、2016年5月以来の水準へ落ち込んだ3月の5.0万人増(7.9万人増から下方修正)を含め、3ヵ月連続で20万人台を割り込んだ。米5月ADP全国雇用者数や人材派遣会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社が発表した5月の採用予定数で明らかになった動きより、軟調な結果となった。過去2ヵ月分は、6.6万人の下方修正となる。3~5月期平均は12.1万人増で、2016年の平均18.7万人増から大きく後退した。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比14.7万人増と、市場予想の17.5万人増を下回った。前月の17.3万人増(19.4万人増から下方修正)にも及ばず。民間サービス業が13.1万人増と、前月の15.4人増(17.4万人増から下方修正)より伸びを狭めた。セクター別動向では、4月に2位だった教育/健康がトップに返り咲いた。2位は4月に3位だった専門サービス、3位は4月に1位だった娯楽/宿泊となっている。小売は、前月分が下方修正され4ヵ月連続での減少を示した。詳細は以下の通り。
(サービスの主な内訳)
・教育/健康 4.7万人増<前月は5.0万人増、6ヵ月平均は4.1万人増
(そのうち、ヘルスケア/社会福祉は3.2万人増<前月は4.5万人増、6ヵ月平均は3.2万人増)
・専門サービス 3.8万人=前月は3.8万人増、6ヵ月平均は4.4万人増
(そのうち、派遣は1.3万人増>前月0.4万人増、6ヵ月平均は0.6万人増)
・娯楽/宿泊 3.1万人増<前月は5.8万人増、6ヵ月平均は2.6万人増
(そのうち食品サービスは3.0万人増、過去12ヵ月平均は2.7万人増)
・その他サービス 1.2万人増>前月は0.9万人増、6ヵ月平均は0.3万人増
・金融 1.1万人増<前月は1.4万人増、6ヵ月平均は1.3万人増
・輸送/倉庫 0.4万人増>前月は±0万人、6ヵ月平均は0.8万人増
・公益 0.1万人減=前月は0.1万人減、6ヵ月平均は±0人
・情報 0.2万人減>前月は1.5万人減、6ヵ月平均は0.8万人減
・卸売 0.2万人減<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.4万人増
・小売 0.6万人減=前月は0.6万人減、6ヵ月平均は0.7万人減
・政府 0.9万人減<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.1万人減
財生産業は前月比1.6万人増と、4月の1.9万人増(修正値)を下回り直近で最低だった。ただし、9ヵ月連続で増加している。鉱業は7ヵ月連続で増加したほか、建設は前月の減少から増加に反転した。ただ、製造業は6ヵ月ぶりに減少した。
原油価格が安定的に推移するなか、6ヵ月連続でプラスだった。
(財生産業の内訳)
・建設 1.1万人増>前月は0.1万人減、6ヵ月平均は1.8万人増
・製造業 0.1万人減<前月は1.1万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
・鉱業/伐採 0.6万人増(石油・ガス採掘は0.6万人の増加)<前月は0.9万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
NFP、年初からの鈍化が鮮明に。
平均時給は前月比0.2%上昇の26.22ドル(約2,900円)と、市場予想に並んだ。前月の0.2%(0.3%から下方修正)と変わらず。前年比も4月と同じく2.5%上昇したが、市場予想の2.6%に届かず、8ヵ月ぶりの低水準を維持した。2009年4月以来の力強さを遂げた2016年12月の2.9%を下回るトレンドに変わりない。
週当たりの平均労働時間は34.4時間と、市場予想と前月に一致した。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.3時間と前月通り2月の水準を維持。ただ、約7年ぶりの高水準を遂げた2014年11月の41.1時間は遠い。
失業率は4.3%と、市場予想並びに前月の4.4%を下回り、景気後退以前どころか2001年5月以来の水準まで改善が進んだ。3月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2017〜19年見通し以下となる。マーケットが注目する労働参加率は62.7%と、前月の62.9%から低下し年初来で最低に。原油安が開始する前である2014年3月以来の水準へ回復した2~3月の63.0%以下を保つ。労働参加率が失業率低下の一因を担った格好だ。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月で62.4%と、1977年9月以来の低水準だった。
失業者数は前月比19.5万人減と4ヵ月連続で減少し、失業率の低下を促した。雇用者数は23.3万人減と、2桁増を3ヵ月で止めている。 就業率は60.0%となり、2009年2月以来の高水準を果たした前月の60.2%から後退した。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.3%減の1億2,562万人と7ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.5%像の2,737万人と、増加に反転。増減数ではフルタイムが36.7万人減、パートタイムは13.3万人増なる。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が小幅に前月から増加したため週当たり平均労働時間が横ばいだったものの、前月比で小幅上昇し9ヵ月連続で伸びた。平均時給は前月比で伸びが強まったため、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比でこちらも微増した。
イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-○
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全失業率は8.4%と、前月の8.6%を下回り2007年11月以来の最低を更新した。不完全失業者は308.2万人と、4ヵ月連続で減少。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は5.2%と、前月の5.3%から改善が一段と進んだ。
2)長期失業者 採点-×
失業期間の中央値は10.4週と前月の10.2週から延び、2008年11月以来の10週割れが遠のいた。平均失業期間は24.7週と、2009年6月以来で最短だった24.1週から延びた。27週以上にわたる失業者の割合は24.0%と、2009年1月以来の水準に並んだ前月の22.6%上回った。
3)賃金 採点-×
今回は前月比0.2%上昇、前年比は2.5%上昇し、2009年4月以来の高水準だった2016年12月の2.9%以下のトレンドを維持。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.1%上昇の22.00ドルに並んだが、前年比は2.4%の上昇にとどまった。非管理職・生産労働者の賃金は、2016年10月からの流れを引き継ぎ管理職を合わせた全体を下回ったままだ。
平均時給、前年比では引き続き生産・非管理職の労働者が管理職を含めた全体に及ばず。
4)労働参加率 採点-×
労働参加率は62.7%と2~3月に示した原油安が開始する前の2014年3月以来の水準、63.0%を下回った。年初来で最低となる。金融危機以前の水準である66%台が、また一歩遠のいた。 軍人を除く労働人口は0.3%減の1億5,978万人と、7ヵ月ぶりに減少した。労働参加率が改善した通り、非労働人口は0.6%増の9,498万人と3ヵ月連続で増加した。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、結果を受けて「経済はまちまちなサインを送るも、Fedは雇用増に注目(Fed Focuses on Job Gains as Economy Sends Mixed Messages)」と題した記事を配信。インフレが鈍化し賃金も伸び悩むが、Fedは賃上げや物価を見据える上で失業率の低下を重視していると伝えた。また金融環境が緩和寄りである点を踏まえ、6月13~14日開催のFOMCで利上げを行うとの示唆を与えた。
——米5月雇用統計・NFPが予想を下回ったほか、悪材料として1)NFPの過去分下方修正、2)賃金伸び悩み、3)労働参加率の低下、4)長期失業率の上昇――等が確認されました。2009年7月から米成長はプラス成長の軌道にあるもの、さすがに8年以上の長期回復となれば、longer teethという言葉そのままに米経済は循環的に頭打ち確認してく余地が残ります。今回お雇用統計は、そレを裏付けることとなりそうです。
バー写真:Ivo Oates/Flickr)
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