Which State Has Most Hate Group In The U.S.?
バージニア州シャーロッツビルで12日、白人至上主義グループと反対派が衝突し女性が一人死亡し、30人以上が負傷する事態となり日本でも大きく報道されています。
この日にクー・クラックス・クランの元最高幹部であるデビッド・デューク氏をはじめ極右主義者がシャーロッツビルに集まった理由は、独立戦争時代の南軍で司令官を務めたロバート・リー将軍の銅像撤去に抗議するためでした。バージニア州生まれのリー将軍の銅像は、投資家で同州出身のポール・グッドロー・マッキンタイア氏によって1929年に建立。しかし、シャーロッツビルの市議会が4月に銅像が建つ公園の改名と共に銅像の撤去を全会一致で可決、判事が6ヵ月間の撤去延長を決定した間に流血事件に発展してしまいました。ちなみに、公園の名前はリー将軍の名前にちなんだLee ParkからEmancipation(解放) Parkに変更済みです。
シャーロッツビルに集まった白人男性陣にとって、ダイバーシティは白人の大虐殺を意味するもよう。
(出所:Rodney Dunning/Flickr)
そもそもこうしたヘイト・グループ=憎悪団体は、2001年の同時多発テロ事件をきっかけに、反イスラム団体が中心となって米国に広がっていきました。バラク・オバマ氏が2009年に黒人で初の大統領に就任してからは、さらに悪化します。南部貧困法律センター(SPLC)によると、憎悪団体の数は2008年から2012年の間に800%も急増し1,360グループに及びました。時を同じくして、オバマ政権の1期目が終焉に入った2011年には“ノックアウト・ゲーム”が全米を席捲。ペンシルベニア州フィラデルフィアで、複数の少年達がベトナム系移民に突如暴力を振るい死亡した事件がきっかけとなり、2013年にはNYに上陸したことが思い出されます。
憎悪団体は2012年に1,360グループでピークアウトしたものの、足元で再び増加の動きがみられ2016年に前年比2.8%増の917グループとなりました。では、こうした憎悪団体はどの州で多いのか、24/7ウオールストリートの情報を元に確認していきましょう。憎悪団体の割合は100万人の人口に対する比率で、人口に占める白人と外国生まれの割合は上位であればそのシェアが高いことを表します。なお、筆者は以下の州に悪意も何も持っておらずあくまで統計の数字を提供しているだけだという点をご承知おき下さい。
10位 インディアナ州
・憎悪団体の割合 3.9団体/100万人
・憎悪団体数 26
・人口に占める白人の割合 84%(全米で19位)
・人口に占める外国生まれの割合 4.9%(全米で31位)
9位 ミズーリ州
・憎悪団体の割合 3.9団体/100万人
・憎悪団体数 24
・人口に占める白人の割合 82.4%(全米で20位)
・人口に占める外国生まれの割合 4.0%(全米で38位)
8位 バージニア州
・憎悪団体の割合 4.6団体/100万人
・憎悪団体数 39
・人口に占める白人の割合 68.2%(全米で39位)
・人口に占める外国生まれの割合 4.0%(全米で14位)
7位 ケンタッキー州
・憎悪団体の割合 5.2団体/100万人
・憎悪団体数 23
・人口に占める白人の割合 87.4%(全米で11位)
・人口に占める外国生まれの割合 3.6%(全米で42位)
6位 アーカンソー州
・憎悪団体の割合 5.4団体/100万人
・憎悪団体数 16
・人口に占める白人の割合 77.5%(全米で27位)
・人口に占める外国生まれの割合 4.8%(全米で39位)
5位 アラバマ州
・憎悪団体の割合 5.6団体/100万人
・憎悪団体数 27
・人口に占める白人の割合 68.5%(全米で38位)
・人口に占める外国生まれの割合 3.5%(全米で43位)
4位 テネシー州
・憎悪団体の割合 5.7団体/100万人
・憎悪団体数 38
・人口に占める白人の割合 77.7%(全米で26位)
・人口に占める外国生まれの割合 5.0%(全米で30位)
3位 ミシシッピ州
・憎悪団体の割合 6.0団体/100万人
・憎悪団体数 18
・人口に占める白人の割合 58.8%(全米で47位)
・人口に占める外国生まれの割合 2.4%(全米で46位)
・2016年の大統領選結果
2位 アイダホ州
・憎悪団体の割合 7.1団体/100万人
・憎悪団体数 12
・人口に占める白人の割合 91.5%(全米で5位)
・人口に占める外国生まれの割合 5.7%(全米で29位)
・2016年の大統領選結果
1位 モンタナ州
・憎悪団体の割合 9.6団体/100万人
・憎悪団体数 10
・人口に占める白人の割合 88.9%(全米で8位)
・人口に占める外国生まれの割合 2.1%(全米で47位)
・2016年の大統領選結果
——ランキングでは、白人比率の高さより人口に占める外国生まれの割合が比較的低い州で憎悪団体が存在感を示していることが分かります。2013年時点で人口に占める白人のシェアが最も高いメイン州(94%)、バーモント州(93.8%)、ウェスト・バージニア州(92.7%)などが圏外であることからも、伺えますね。
敢えて理由を探すなら、教育水準が一因として挙げられます。全米での大卒の割合は2011~15年平均で29.8%のところ、人口に対する憎悪団体のシェアが高い上位10州の平均は25.2%でした。逆に白人が最も多いメイン州では29.0%と全米を小幅に下回る程度で、バーモント州は36.0%に達します。その逆も然りでバージニア州は36.3%、白人の比率の高さで全米3位のウェスト・バージニア州で大卒が占める割合は19.2%でした。必ずしも教育だけで説明はつきませんが、所得水準についてまわるため的外れとも言えないでしょう。
所得水準と言えば、経済動向や所得分配に関わります。主流メディアは単なる白人至上主義あるいは極右勢力の反乱といった調子で報じていますが、オバマ前政権では振り子のようにブッシュ元政権の反動でリベラルに振れました。結果、トランプ氏が米大統領選中から「忘れられた(the forgotten)」と呼ぶ人々の間で不満が燻ってしまったことも事実。全ての人々を幸せにする方法など存在しないのでしょうが、いかに「忘れられた」人々を取り込むかを真剣に議論すべきと考えられます。
(カバー写真:JJ/Flickr)
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