Draghi Points To October Decision On QE Without Surprise, But Impacts On This Market.
欧州中央銀行(ECB)は7日、フランクフルトで定例理事会を開催した。政策金利にあたるリファイナンス金利は、市場予想通り0%で維持。上限金利の限界貸出金利も0.25%、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.4%で据え置いた。金利据え置きは7回連続で、現状の低金利を長きにわたって継続する意思を示す。また、2016年12月に決定した資産買い入れプログラム(APP)の変更を堅持した。
ドラギ総裁、記者会見のポイントは以下の通り。
(政策変更について)
・今秋、年末より先の政策手段について決定する
・恐らく、大方の決定は10月(26日)に下される
・資産買入について、対象不足を協議していない
・資産買入において、発行体上限を変更を協議せず
・プログラムのあらゆる柔軟性を活用することが可能
・政策の順序をめぐって討議しなかった。つまり、金利は長きにわたり低水準で推移し、資産買入の時期を超えて現在の低水準にとどまる見通し
(緩和策について)
・金利は資産買入の時期をさらに超える長きにわたり、現状の水準で据え置かれると予想
・資産買入プログラムは2017年12月まで600億ドルで続け、インフレが持続的に調整するまで、必要ならばそれ以上にわたって継続
・インフレ圧力が高まり物価動向を支援するまで、非常に大規模な緩和策が依然として必要
・必要であれば、資産買入プログラムを規模と期間において拡大する用意がある
→前回と全て変わらず
・我慢強くあることが必要だ
→前回:我々は忍耐強く、かつ確信を持つことが必要だ
・削除;前回→ECBは市場に長く存在し続ける
(統治目標について)
・我々は1つの統治目標を持ち、それは2%以下でその付近という物価目標で、まだ底に到達していない
(為替について)
・為替市場のボラティリティは直近、不透明性の源で注視が必要
・為替レートは政策目標ではないが、中期的なインフレ見通しには非常に重要
ツイッターでの動画で、ドラギ総裁の会見での注目点をフィーチャー。
(経済見通しについて)
・経済指標はスタッフ見通しは、中期的に経済成長とインフレ予想が中期的に変わらないことを示す
・現状の循環的モメンタムは、成長が予想より上振れする可能性を強める
→前回:経済指標は、ユーロ圏経済が強まり続けていることを確認
・ユーロ圏経済見通しのリスクは概して均衡
→前回:変わらず
・ユーロ圏のインフレはエネルギー価格のベース効果によって主として押し下げられている
・経済拡大は強いインフレ動向に反映されておらず、インフレは抑制的なままだ
→前回:ほぼ変更なし
・インフレ圧力を高めるため、大いなる緩和が依然として必要
→前回:変更なし
・インフレには確信を持ち、忍耐強く、執拗でなければならない
ECBスタッフによる経済見通し、改訂版は以下の通り。2017年の成長率を大幅に引き上げたほか、2018〜19年のインフレ見通しを下方修正している。詳細は、以下の通り。
2017年見通し
GDP 2.2%
HICP 1.5%
コアHICP 1.1%
2017年見通し(6月時点)
GDP 1.9%
HICP 1.5%
コアHICP 1.1%
2018年見通し
GDP 1.8%
HICP 1.2%
コアHICP 1.3%
2018年見通し(6月時点)
GDP 1.8%
HICP 1.3%
コアHICP 1.4%
2019年見通し
GDP 1.7%
HICP 1.5%
コアHICP 1.5%
2019年見通し(6月時点)
GDP 1.7%
HICP 1.6%
コアHICP 1.7%
――10月に資産買入縮小を決定する示唆を与えたドラギ総裁、会見でユーロ高牽制を挟み込んだもののお構いなしにユーロ高で反応しました。なぜ資産買入縮小などの政策変更を10月まで待たねばならなかった疑問が残るものの、1)低インフレ動向、2)資産買入縮小の時期、テーパリング幅などの詳細、3)市場との対話の仕方、4)ユーロ高への対応——などなど、山積み状態の課題を踏まえれば、致し方なしと言えるでしょう。個人的には米国が債務上限引き上げで合意し予算協議決裂リスクも後退したので、対ドル発のユーロ高圧力はわずかなりとも緩和できたと思うんですけどね。
個人的な注目点は、資産買入縮小など政策変更に関する言葉より、こちらです。
「ユーロ圏加盟国のどの国も、自国通貨を導入できない。ユーロ圏の通貨は、ユーロである」
質疑応答でドラギ総裁の口から飛び出したこのフレーズ、エストニア政府関係者が検討中と明かした仮想通貨”エストコイン”に関する質問の回答です。欧州連合(EU)では仮想通貨を”通貨”と定義していないものの、ドラギ総裁は自国の仮想通貨発行に実質”ノー”の立場を当局者として初めて明確にしました。納税や銀行取引、運転免許証や保険証などあらゆる分野で電子化・一元化を図るエストニア政府の”デジタル国家”を築く道筋に、大きな障害が立ちはだかる。今後、エストニアがどのような決断を下すのか目が離せません。ちなみにイタリア政府も税額控除の形式として並行通貨を導入する可能性を模索している点については、「イタリアの意図についてはコメントしない」と回答するにとどめていました。
(カバー写真:European Central Bank/Flickr)
Comments
9月ベージュブックで自動車産業の減速に懸念浮上、中国の見方に変化 Next Post:
ビットコインと人民元、比例関係にみる実態