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対米証券投資は中国の売り越しを確認、NYとフィリーはまちまち

by • March 16, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2201

China’s U.S. Treasury Holding Hits Lowest In 6 Months.

3月のNY連銀並びにフィラデルフィア連銀の製造業景況指数、NAHB住宅市場指数、1月対米証券投資をおさらいしていきます。

1月対米証券投資は、1,197億ドルの買い越しとなった。前月の1,225億ドルの売り越し(1,193億ドルの売り越しから修正)から、流入に転じている。海外勢の動向をみると、全体で835億ドルの買い越しとなった。民間が1478.1億ドルと3ヵ月ぶりに流入しており、その他は中銀が521.5億ドル、国際機関も121.6億ドルとそれぞれ流出させていた。

期間中、税制改革法案の成立を受けて財政赤字拡大と米国債発行増が懸念され、米10年債利回りは月初の2.44%から月末に2.73%まで上昇した。一方で、米株は1月26日に過去最高値を更新するなど、上昇トレンドを保った。

国別での米国債保有高トップ5動向は、以下の通り。

1位 中国 1兆1,682億ドルと6ヵ月ぶりの低水準、過去6ヵ月間で3回目の売り越し
2位 日本 1兆658億ドルと2011年末以来の低水準だった前月から小幅改善、3ヵ月ぶりの買い越し
3位 アイルランド 3,275億ドルと過去最高、5ヵ月連続で買い越し
4位 ブラジル 2,657億ドルとレンジ上限を維持、5ヵ月ぶりに買い越し
5位 スイス 2,511億ドルと3ヵ月ぶりの水準を回復、3ヵ月ぶりに買い越し

トップ5の米国債保有高の推移

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(作成:My Big Apple NY)

――米10年債利回りの上げ足が速まった1月の裏に、中国の売り越しがありました。1月23日に1974年米通商法201条に基づき、太陽光パネルと洗濯機へのセーフガードを発動。1月中に商務省から大統領に鉄鋼・アルミの輸入が国家安全保障上の障害になっていないかの調査報告が上がる予定のなか、中国が米国債の売り越しという圧力を掛けた可能性は拭えません。結局、トランプ政権が3月2日に鉄鋼・アルミへのセーフガードを決定したのは、ご周知の通り。中国が報復措置の選択肢として、米国債に照準を絞るのでしょうか?

個人的に、その可能性は低いと考えます。第一に、利回り追求の流れが続くなかで、民間での大幅買い越しに現れる通り、米国債の利回り上昇は好材料ですよね。また米国債売却=自価格下落を意味し、損失を被るリスクが浮上します。何より、自身の米国債大量売却に端を発した米国債利回り上昇はでエマージング国の債務負担が増大し、世界経済が減速すれば、自身にも跳ね返ってきます。エマージング諸国の債務残高は増加基調にあり、IIFによれば2016年末のエマージング諸国の債務残高は55兆ドル、GDP比で215%に膨れ上がり、主に非金融機関で債務が拡大したといいます。中国の輸出を圧迫しかねず、売り越しがあったとしても、1兆ドルの大台を維持し“ブラフ”にとどまるのではないでしょうか。

▽3月のNY連銀製造業景況指数は5ヵ月ぶり高水準、フィリーは鈍化

米3月NY連銀製造業景況指数は22.5と、市場予想の15を上回った。前月の13.1を超え、5ヵ月ぶりの高水準。内訳をみると、新規受注が約15ポイントも急伸。新規受注や市入荷時間、在庫なども前月を上回った。仕入れ価格は見通し指数は2011年6月以来、販売価格は2012年1月以来で最高となる。一方で、雇用は小幅に鈍化した。見通し指数は現況指数と裏腹に44.1と、5ヵ月ぶりの低水準。新規受注をはじめ出荷、設備投資、受注残、入荷時間がそろって低下した。ただし雇用は上昇、仕入れ価格と販売価格も上向いた。

米3月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は22.3と、市場予想の23以下にとどまった。前月の25.8を下回り、4ヵ月ぶりの高水準だった前月を下回っている。内訳をみると、ヘッドラインが示すより内容は明るい。新規受注が約10ポイント、出荷も約15ポイントも急伸。在庫も分岐点を回復したように大幅上昇し、雇用も若干ながら上昇していた。一方で仕入れ価格と販売価格がそれぞれ約5年ぶりの水準から低下した。見通し指数は逆に47.9と、3ヵ月ぶりの高水準。内訳をみると新規受注、出荷、在庫、雇用が低下しており、全体的に力強さが減退していた。

NY連銀は上昇、フィラデルフィア連銀は低下。

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(作成:My Big Apple NY)

▽米3月NAHB住宅市場指数、4ヵ月ぶりの水準へ軟化

米3月NAHB住宅市場指数は70となり、市場予想の72を下回った。前月の71(72から下方修正)に届かず、4ヵ月ぶりの低水準。1999年7月以来の高水準を達成した1月の74から低下をたどる。税制改革法案が成立し所得税減税が実現するほか、労働市場も力強く拡大中だが、住宅建設業者のセンチメントは価格上昇、原材料や人材の不足が重石となって明るさが少しずつ減退している。

内訳をみると、一戸建て現況指数は77と前月と変わらず。一戸建て見通し指数は78と、少なくとも2005年6月以来で最高だった前月の80と前月の78を上回った。客足の動向を表す見込み客指数は前月の54から低下し、51だった。

NAHB住宅市場指数、4ヵ月ぶりの低水準。。

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(作成:My Big Apple NYが作成)

発表元である全米ホームビルダー協会(NAHB)のロバート・ディエス主席エコノミストは、結果に対し「利上げ段階にあるにも関わらず、労働市場の拡大を追い風に住宅購入への意欲は強い」と指摘。その上で新築住宅市場は拡大すると見込む。

(カバー写真:futureatlas.com/Flickr)

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