Unemployment Rate Falls To The Lowest In 50 Years, Yet Hourly Wage Growth Doesn’t Accelerate.
米9月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比13.4万人増となり、市場予想の18.5万人増を下回った。前月の27.0万人増(20.1万人増から上方修正)にも届かず、ハリケーン“ハービー”の影響で大幅鈍化した2017年9月以来の低水準。ただ7月分が1.8万人の上方修正(14.7万人増→16.5万人増)と合わせ、過去2ヵ月分は合計8.7万人と大幅な上方修正となり、ハリケーンの影響と勘案すると労働市場の鈍化を示す数字と判断するのは早計だろう。7~9月の3ヵ月平均は19.0万人増で、2017年の平均値17.1万人増を上回ったままだ。
なおトランプ政権が3月23日から鉄鋼・アルミ関税を発動し、6月1日からは欧州連合(EU)、カナダ、メキシコも対象に含めた。中国に対しては8月23日から事前の340億ドルに160億ドルと合わせた500億ドル相当の追加関税を発動、9月24日から2,000億ドルの対中知財関税を実施した。一方で、NAFTA再交渉は9月にカナダを含め合意が成立し、欧州とは7月の首脳会談にて通商協議入りで合意するなど、中国を除けば貿易戦争に突入する最悪の事態を回避しつつある。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比12.1万人増と市場予想の18.0万人増を下回った。前月の25.4万人増(20.4万人増から下方修正)にも及ばず、1年ぶりの低水準となる。民間サービス業は7.5万人増と、前月の21.7万人増(17.8万人増から上方修正)を下回った。
サービス部門のセクター別動向では、専門サービスが3ヵ月連続でトップに立った。2位はホリデー商戦を控えフェデックスなど配送大手臨時雇用を確保したとみられ、輸送・倉庫が入った。教育・健康が前月の2位から転落しつつ3位となる。娯楽・宿泊は、ハリケーン”フローレンス“の影響で、同じくハリケーンの直撃によって押し下げられた2017年9月以来の減少に。そのほか減少したセクターは、8月と変わらず3セクターとなる。詳細は、以下の通り。
(サービスの主な内訳)
・専門サービス 5.4万人増<前月は6.5万人増、6ヵ月平均は5.2万人増
(そのうち、派遣は1.1万人増<前月は1.2万人増、6ヵ月平均は0.7万人増)
・輸送・倉庫 2.4万人増>前月は2.1万人増、6ヵ月平均は1.4万人増
・教育・健康 1.8万人増<前月は5.8万人増、6ヵ月平均は4.3万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は3.0万人増<前月は4.2万人増、6ヵ月平均は3.4万人増)
・金融 1.3万人増>前月は1.2万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・政府 1.3万人増<前月は1.6万人増、6ヵ月平均は1.4万人増
・卸売 0.4万人増<前月は2.1万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・公益 ±0万人<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.1万人減
・情報 ±0万人>前月は0.3万人減、6ヵ月平均は±0万人
・その他サービス 0.1万人減<前月は0.9万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・娯楽・宿泊 1.7万人減<前月は2.1万人減、6ヵ月平均は1.6万人増
(そのうち食品サービスは1.8万人減<過去12ヵ月平均1.4万人増)
・小売 2.0万人減<前月は1.2万人増、6ヵ月平均は0.4万人減
財生産業は前月比4.6万人増と、前月の3.7万人増(2.6万人増から上方修正)を上回り、4ヵ月ぶりの高水準だった。製造業が前月の大幅鈍化から改善したほか、原油価格が約4年ぶりの75ドル乗せへ向かう過程で、鉱業は2ヵ月連続で増加。建設も堅調な伸びを維持した。
(財生産業の内訳)
・建設 2.3万人増<前月は2.6万人増、6ヵ月平均は2.0万人増
・鉱業・伐採 0.5万人増(石油・ガス採掘は500人の減少、3ヵ月連続でマイナス)<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
・製造業 1.8万人増>前月は0.5万人増、6ヵ月平均は2.0万人増
NFPは大幅鈍化も、8月分が大幅に上方修正。
平均時給は前月比0.3%上昇の27.24ドル(約3,100円)となり、市場予想と一致した。前年比も市場予想と並び2.8%増、2009年4月以来の高い伸びを回復した前月の2.9%増には届かなかった。
週当たりの平均労働時間は34.5時間と、市場予想と前月に並んだ。逆に財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.3時間と、前月の40.5時間を下回った。なお財部門は、4月に2006年7月以降で最高となる40.7時間を記録していた。
失業率は3.7%と、市場予想の3.8%を下回り1969年12月以来で最低となった。早くも、9月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2018年見通しに並んだ。労働参加率は62.7%と、市場予想と前月と変わらず。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。
失業者数は前月比27.0万人減少、就労者数は42.0万人増加し、低い労働参加率と合わせ失業率の低下を促した。就業率は60.4%と、2009年1月の高水準に並んだ7月の60.5%に近づいた。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.2%増の1億2,890万人と、増加に転じた。パートタイムは0.5%増の2,706万人と、過去7ヵ月間で3回目の増加となった。増減数ではフルタイムが31.7万人増、パートタイムは14.2万人増だった。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数が前月を下回ったが平均労働時間が変わらず、前月比で0.1%上昇し2ヵ月連続でプラスを示した。平均時給も上昇したため、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.4%上昇、こちらは8ヵ月連続でプラスだった。
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.5%と、2001年4月以来の低水準を記録した前月の7.4%を上回った。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は464.2万人と、前月の437.9万人から増加。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は4.6%と前月の4.7%から低下。5月に続き、金融危機前の水準をつけた。
2)長期失業者 採点-×
失業期間の中央値は9.2週と、前月の9.1週から若干延びた。なお6月は、2008年5月以来の低水準となる8.9週だった。平均失業期間も24.0週と、前月の22.6週から延びた。2009年3月以来で最短を記録した6月の21.3週が遠のいている。27週以上にわたる失業者の割合は22.9%と、前月の21.5%から上昇。2008年8月以来の20%割れを遂げた5月の19.4%を上回る水準を続けた。
3)賃金 採点-×
今回は前月比0.3%の上昇と、5月と7~8月につけた年初来で最も強い伸びとなる0.4%を下回った。前年比は前月の2.8%の上昇、こちらも2009年4月以来の高い伸びを記録した2.9%以下に。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.3%上昇の22.81ドルと全従業員の伸びに並んだ。しかし前年比は2.7%の上昇にとどまり、全従業員の水準以下となる。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。
平均時給、生産・非管理職の労働者は引き続き全従業員以下に。
4)労働参加率 採点-△
労働参加率は前月と変わらず62.7%、改善せず。2014年3月以降で2番目の高水準だった2月の63.0%から遠ざかっている。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は0.1%増の1億6,193万人と、僅かながら増加に反転。非労働人口は0.1%増の9,636万人と、小幅ながら3ヵ月連続で増加した。
――米9月雇用統計・NFPは鈍化したとはいえ、過去分の上方修正を踏まえれば決して弱い数字ではありません。また、娯楽・宿泊が1年ぶりに減少した通り、ハリケーン“フローレンス”という一時的要因も、NFPを押し下げています。
失業率が1969年以来の低水準を記録したものの、労働参加率は引き続きさえないのは気掛かり。25~54歳の働き盛り世代の男性の労働参加率は、9月に88.6%と年初来で最低でした。25~34歳も89.0%と、前月の89.2%を下回っています。
働き盛りの男性、すなわち25~54歳の男性で非労働力人口も9月に700万人近くと、高水準を維持しています。
平均時給は2009年以来の高い伸びだった8月から、鈍化しました。この背景は、前年比の伸び率が高い娯楽・宿泊や小売の就業者数が減少した結果を反映した可能性があります。今回、平均時給の前年比が全セクターの平均である2.8%を上回ったのは4セクターで、前月の7セクターを下回りました。財部門は鉱業が5.5%もの大幅上昇を遂げたため押し上げられ、平均超えとなっています。
両セクターは賃金が低いものの、足元の上昇率を牽引してきました。逆に言えば、就労者数でトップをひた走る専門サービスは2.8%の上昇と全体の平均に並ぶ程度で、上位3位の常連である教育・健康に至っては2.4%の上昇に過ぎず、それほど加速していません。労働市場が健全そのものといった様子ながら、その割に労働参加率と平均時給の伸び悩みはなかなか解消されず、数字で表れない課題を残します。
(カバー写真:Dave Collier/Flickr)
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