Construction Workers

米3月雇用統計・NFPは改善、ゴルディロックス経済継続を示唆

by • April 6, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2486

Jobs Growth Improves, Suggests Goldilocks Economy Go On.

米3月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比19.6万人増となり、市場予想の18万人増を上回った。ハリケーン“ハービー”や“マリア”の直撃を受けた2017年9月以来の低い伸びにとどまった前月の3.3万人増(2.0万人増から上方修正)を、大幅に上回る。1月25日に解除されたとはいえ一部政府機関の閉鎖のほか、豪雪などの特殊要因が剥落した。1月分の0.1万人の上方修正(31.1万人増→31.2万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で1.4万人の上方修正となった。1~3月の3ヵ月平均は18.0万人増と、2018年平均の22.3万人増を下回った。

なおトランプ政権が2018年3月23日から鉄鋼・アルミ関税を発動し、同年6月1日からは欧州連合(EU)、カナダ、メキシコも対象に含めた。中国に対しては同年8月23日から事前の340億ドルに160億ドルと合わせた500億ドル相当の追加関税を発動、同年9月24日から2,000億ドルの対中知財関税を実施した。2,000億ドル相当の対中関税措置については、2019年1月から関税率を10%から25%へ引き上げる懸念があったが、同年12月1日の米中首脳会談で90日間の猶予が設けられている。2019年1月30〜31日には米中ハイレベル通商協議で劉鶴副首相がワシントンを訪問、トランプ大統領とも会談し、大豆の500万トンを含め農産品の輸出拡大で合意した。さらに3月1日の米中通商交渉期限を前に、トランプ大統領が期限の延長を発表した。一方で、NAFTA再交渉は同年9月にカナダを含め合意が成立し、欧州とは同年7月の首脳会談にて通商協議入りで合意。日本とも個別で貿易交渉を開始し、4月15日から茂木経済産業相が訪米し初会合を行う。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比18.2万人増と2017年9月以来の低い伸びだった前月の2.8 万人増(2.5万人増から上方修正)から大幅改善。民間サービス業も17.0万人増と、前月の5.6万人増(5.7万人増から下方修正)を大きく上回った。

NFP、政府機関の閉鎖や悪天候の影響が剥落し20万人に近い伸びに。

nfp
(作成:米労働統計局よりMy Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向では、1位に教育・ヘルスケアが入り圏外だった前月から順位を上げた。2位は専門サービスで、前月の1位から転落。3位は娯楽・宿泊がこちらも前月の圏外から上位を回復している。今回、減少したセクターは小売と前月2位だった卸売の2業種。一部政府機関の閉鎖を受けて前月に減少した政府のほか、輸送・倉庫、情報、公益が増加に転じたため、3月の5業種から減少した。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・教育・健康 7.0万人増>前月は1.3万人増、6ヵ月平均は4.7万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は6.1万人増>前月は3.1万人増、6ヵ月平均は4.5万人増)
・専門サービス 3.7万人増<前月は5.4万人増、6ヵ月平均は3.7万人増
(そのうち、派遣は0.5万人減<前月は0.3万人像、6ヵ月平均は横ばい)
・娯楽・宿泊 3.3万人増>前月は0.1万人減、6ヵ月平均は5.1万人増
(そのうち食品サービスは2.7万人増>過去12ヵ月平均2.6万人増)

・その他サービス 1.4万人増>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・政府 1.4万人増>前月は0.5万人増、6ヵ月平均は0.4万人減
・金融 1.1万人増>前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.7万人増

・情報 1.0万人増>前月は0.4万人減、6ヵ月平均は横ばい
・輸送・倉庫 0.7万人増>前月は0.4 万人減、6ヵ月平均は1.3万人増
・公益 横ばい<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は横ばい

・卸売 0.2万人減、2018年4月以来の減少>前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
・小売 1.2万人減、2ヵ月連続で減少>前月は2.0 万人減、6ヵ月平均は0.1万人減

財生産業は前月比1.2万人増と、2016年8月以来の減少となった前月の2.8万人増(3.2万人増から上方修正)から増加へ転じた。悪天候で減少した建設が改善したほか、原油先物が2018年10月初めの75ドル超えから50ドル割れまで急落した後に60ドル台近くへ戻すなかで、鉱業も増加に反転。ただし、製造業は2017年7月以降で初めて減少した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 1.6万人増>前月は2.5万人減と2016年5月以来の減少、6ヵ月平均は1.6万人増
・鉱業・伐採 0.2万人増>前月は0.4万人減と4ヵ月ぶりに減少(石油・ガス採掘は700人の増加、6ヵ月連続のプラス)、6ヵ月平均は0.2万人増
・製造業 0.6万人減、2017年7月以降で初の減少<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は1.5万人増

平均時給は前月比0.1%上昇の27.70ドル(約3,070円)となり、前月の0.4%を下回った。前年比は3.2%の上昇と、市場予想と前月の3.4%に届かず、2009年4月以来の力強い伸びから鈍化した。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と、前月の34.4時間から足元のトレンドへ戻した。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間も40.5時間と、前月の40.3時間から延びたが、1月の40.7時間には及んでいない。

失業率は3.8%と、市場予想と前月と一致した。なお、2018年11月は3.7%と1969年12月以来で最低だった。3月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2019年見通しである3.7%を上回る。労働参加率は63.0%と、2013年9月以来の高水準だった前月の63.2%から低下した。事業調査であるNFPと異なり就業者が20.1万人減だったものの、失業者が2.4万人減少で労働参加率も低下し、失業率は前月横ばいにとどまったようだ。就業率は60.6%と、1~2月に2008年12月の高水準に並んだ60.7%を下回った。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.1%減の1億3,000万人と、小幅ながら減少に転じた。パートタイムは0.2%増の2,694万人と2ヵ月連続で増加した。増減数ではフルタイムが19.0万人減、パートタイムは6.0万人増だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数が前月から大幅に改善したほか、週平均労働時間も伸びたため、前月比で0.4%上昇し3ヵ月ぶりにマイナスとなった前月の減少分を打ち消した。平均時給の伸びは前月から鈍化したものの、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.6%上昇、14ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は前月通り7.3%と、2001年3月以来の低水準に並んだ。ただし、経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は449.0万人と、前月の431.0万人から増加した。

2)長期失業者 採点-×
失業期間の中央値は9.6週と前月の9.3週から延び8ヵ月ぶりの高水準、2017年12月以来の水準へ短縮した前月の8.9週から後退した。平均失業期間は21.1週と前月の20.4週を超え、こちらも2008年7月以来で最短を記録した1月の19.3週を上回る。27週以上にわたる失業者の割合も20.4%と、2008年8月以来の20%割れを遂げた前月の19.3%から上昇した。

3)賃金 採点-×
今回は前月比0.1%の上昇と、前月の0.4%を下回った。前年比は3.2%と、2009年3月以来の高水準だった2月の3.4%から鈍化した。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.3%上昇の23.24ドル前年比は3.3%の上昇と約10年ぶりの高い伸びだった2月の3.5%を下回った。全体の平均時給と合わせ、8ヵ月連続で3%を超えた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。

平均時給、前年比は全体と生産労働者・非管理職ともに鈍化。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-×
労働参加率は63.0%と、1~2月の2013年9月以来の水準から低下。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比0.1%減の1億6,296万人となり、3ヵ月連続で減少。逆に、非労働人口は0.4%増の9,558万人と2ヵ月連続で増加した。

――3月の雇用統計は、政府機関の一部閉鎖や豪雪などの悪天候といった一時的下押し要因が剥落し、NFPの伸びが改善しました。その他には①労働参加率の低下、②平均時給の伸び鈍化、③長期失業者に関する指標の改善にブレーキ―——などの軟調な材料も。ただし、労働参加率は25~54歳など男性の間で改善が目立ちます(以下、全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字)。

・25~54歳 89.5%と2010年6月以来の高水準>前月は89.4%
・25~54歳(白人) 90.8%と2009年11月以来の高水準>前月は90.5%
・25~34歳 89.9%と2012年1月以来の高水準>前月は89.1%
・25~34歳(白人) 91.3%と2012年11月以来の高水準>前月は90.5%

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(出所:My Big Apple NY)

逆に、女性は25~54歳で前月の75.9%から75.7%へ低下したほか、25~34歳に至っては76.6%から76.2%へ低下していました。労働参加率は横ばいだったものの、以前より男性の働く意欲は高まったことを示します。

平均時給は鈍化したものの、8ヵ月連続で3%に乗せています。3月に年内1回の利上げから据え置きへ転換したFed、並びに金融市場にゴルディロックス経済を連想させたと考えられ、リスク資産には引き続き追い風が吹いていると言えそうです。

(カバー写真:Adam Cohn/Flickr)

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