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米4月求人数は増加も採用数は小幅減、対中貿易摩擦激化前

by • June 11, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off1470

Before U.S. Raising Tariffs On China, Job Openings Increase While Hires Decline.

米労働省が発表した米4月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は749.9万人と、市場予想の724万人を超えた。前月の747.4万人(748.8万人から下方修正)を0.3%上回り、過去最高だった2018年11月の762.6万人に近い数字となる。求人数自体は14ヵ月連続で失業者数を上回り、スプレッドはプラスに転じた2018年3月以降で最大となった。

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(作成:My Big Apple NY)

採用数は前月比0.6%減の566.0万人となり、過去最高を更新した2018年10月(587.7万人)が遠ざかった。なお、米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は20万人超えを果たした。

離職者数は前月比1.3%増の557.8人と、5ヵ月ぶりの高水準だった。過去4ヵ月間で3回目の増加となる。定年や自己都合による自発的離職者が0.6%増の348.2万人と、過去最高をつけた1月の348.3万人に接近。ただ、解雇者数も3.5%増の175.2万人と、増加に転じた。

求人率は4.7%と前月と一致し、過去最高に並んだ1月の4.8%に迫った。民間が前月通り5.0%だった一方で、政府は3ヵ月連続で3.0%での横ばいを経て、3.1%へ上昇した。

採用率は前月まで2ヵ月連続で3.8%だったが、今回は3.9%へ上昇。2007年5月以来の4%乗せから遠ざかった。民間が前月の4.2%から4.3%へ、政府も前月の1.6%から1.7%へそれぞれ上向いた。

求人数は5ヵ月ぶりの高水準も、採用数は小幅減。

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(作成:My Big Apple NY)

自発的および引退、解雇などを含めた離職率は前月まで4ヵ月連続で3.7%だった。民間が前月の4.0%から4.1%へ戻したが、政府は前月通り1.5%と変わらず。自発的離職率は2018年6月以降で2.3%と、2001年4月以来の高水準だった9月の2.4%以下が続く。解雇率は前月の1.1%から1.2%へ上昇、2000年12月に統計が開始してから最低となる2018年3月の1.0%が小幅に遠のいた。

自発的離職者数と解雇者数は増加し、離職者数は5ヵ月ぶりの高水準。

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(作成:My Big Apple NY)

――以上の結果を踏まえ、今となっては懐かしいイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は前月に続き9項目中6項目。未達項目は2月の大幅鈍化が響くNFPのほか、長期失業者の割合、労働参加率でした。ただ非農業部門就労者数は労働市場逼迫に伴い、鈍化する傾向が強まります。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字となります。

1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 4.7%

2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.2%

3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.3%
現時点 2.3%

4)採用率—○
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.9%

5)非農業部門就労者数—×
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 22.4万人増
現時点の3ヵ月平均 15.1万人増

6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 3.6%

7)不完全失業率—○
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 7.1%

8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 22.4%

9)労働参加率—×
2015年9月(最悪時点) 62.3%
2004-07年平均 66.1%
現時点 62.8%

有効求人倍率は求人数と採用数だけでなく、政府機関閉鎖を受け政府の職員の失業者が増加したため少なくとも2001年以来で最高に。

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(作成:My Big Apple NY)

――米4月雇用動態調査では、採用予定数が小幅減だったものの求人数は増加しており、米5月雇用統計で非農業部門就労者数が減速した動きと整合的ではありません。その一方で、6月ベージュブックでは、トランプ大統領が対中追加関税措置の引き上げと、残り約3,000億ドルの中国製品に対する追加関税措置発動に言及したため、“不確実性”の高まりが前回4月ベージュブックより多く指摘されました。同時に、“関税”の登場回数も前回の2倍近くとなりました。さらに設備投資や採用の遅れのほか、リストラなどを含めた緊急事態計画を策定したとの報告が聞かれ、禁輸措置が講じられた“華為技術”の言葉まで登場する始末。追加関税措置が実体経済をむしばみ始めた可能性をちらつかせます。

(カバー写真:Pierre Metivier/Flickr)

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