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米5月雇用統計・NFPは鈍化、7月利下げ織り込み度は上昇

by • June 7, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2062

Hiring Slows Amid Trade Tensions, Market Participants See July Rate-Cut.

米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比7.5万人増となり、市場予想の17.5万人増を上回った。前月の22.4万人増(26.3万人増から下方修正)も遠く及ばず、政府機関の一部閉鎖や悪天候などの影響で大幅鈍化した2月以来の低水準となる。3月分の3.6万人の上方修正(18.9万人増→15.3万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で7.5万人の下方修正となった。3~5月の3ヵ月平均は15.1万人増と、2018年平均の22.3万人増を下回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比9.0万人増と、市場予想の17.4万人増を下回った。前月の20.5 万人増(23.6万人増から下方修正)から大きく鈍化した。民間サービス業も8.2万人増と、前月の17.0万人増(20.2万人増から下方修正)に程遠い。

NFP、年初から2回目の10万人割れ。

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向で、1位は前月に続き専門サービスが入り、2位も前月通り教育・ヘルスケア、3位は3ヵ月連続で続き娯楽・宿泊だった。今回、減少したセクターは4ヵ月連続で小売だったほか、前月に続き情報、加えて今回は政府とその他サービスが加わり4業種となる。前月は小売、情報、公益の3業種だった。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・専門サービス 3.3万人増<前月は6.2万人増、6ヵ月平均は3.5万人増
(そのうち、派遣は0.5万人増<前月は1.0万人増、6ヵ月平均は横ばい)
・教育・健康 2.7万人増<前月は3.3万人増、6ヵ月平均は5.4万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は2.4万人増<前月は5.6万人増、6ヵ月平均は4.6万人増)}
・娯楽・宿泊 2.6万人増>前月は1.7万人増、6ヵ月平均は3.9万人増
(そのうち食品サービスは1.7万人増<過去12ヵ月平均2.7万人増)

・卸売 0.7万人増<前月は1.1万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・金融 0.2万人増<前月は1.3万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・公益 横ばい>前月は0.3万人減、6ヵ月平均は0.6万人増
・輸送・倉庫 横ばい<前月は0.7 万人増、6ヵ月平均は0.4万人

・その他サービス 0.1万人減<前月は1.4万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・情報 0.5万人減、2ヵ月連続で減少<前月は1.0万人減、6ヵ月平均は0.5万人減
・小売 0.8万人減、4ヵ月連続で減少>前月は1.6万人減、6ヵ月平均は0.1万人減
・政府 1.5万人減<前月は1.9万人増、6ヵ月平均は0.5万人増

財生産業は前月比0.8万人増と、前月の3.5万人増(3.4万人増から上方修正)を下回った。2月に減少して以来の低い水準となる。減少したセクターはなかったものの、前月横ばいだった鉱業が鈍化した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 0.4万人増<前月は3.0万人増、6ヵ月平均2.6万人増
・製造業 0.3万人増<前月は0.5万人増、6ヵ月平均は1.6万人増
・鉱業・伐採 0.1万人増>前月は横ばい(石油・ガス採掘は0.3万人増)、6ヵ月平均は0.2万人増

平均時給は前月比0.2%上昇の27.83ドル(約3,000円)と4月の伸びに並び、市場予想の0.3%を下回った。前年比は3.1%の上昇と、市場予想と前月の3.2%に届かず。2月につけた2009年4月以来の力強い伸び(3.4%)を下回ったままだ。

週当たりの平均労働時間は前月に続き34.4時間と、市場予想の34.5時間を下回った。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間が前月に続き40.3時間と、3月の40.5時間から短縮したことが大きい。なお、財部門は1月の40.7時間を下回った水準が続く。

失業率は3.6%と市場予想と前月に並び、1969年12月以来で最低をたどった。3月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2019年見通しを下回る。労働参加率は前月に続き62.8%と、市場予想の62.9%に届かず。2018年9月以来の低水準を続けた。失業率は低い労働参加率を受け、前月通りとなったとみられる。また、事業調査であるNFPと異なり就業者が11.3万人増だったものの、失業者も6.4万人増だった。就業率は前月に続き60.6%と、1~3月に2008年12月の高水準に並んだ60.7%を下回ったままだ。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは微減の1億2,970万人と、わずかながら3ヵ月連続で減少した。パートタイムは0.3%増の2,692万人と、増加に転じた。増減数ではフルタイムが8.3万人減、パートタイムは6.6万人増だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数の伸びが前月から大きく鈍化したとはいえ小幅に増加した結果、前月比で0.1%上昇した。平均時給が伸びを続けたため、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.3%上昇、16ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は前月通り7.1%と、2ヵ月続いた7.3%を下回り2000年12月以来の7%割れを意識した。ただし、経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は433.5万人と、前月の465.4万人を下回り3ヵ月ぶりに減少した。

2)長期失業者 採点-△
失業期間の中央値は9.1週と前月の9.4週から短縮、2017年12月以来の低水準だった1月の8.9週に近づいた。平均失業期間は24.1週と前月の22.9週を超え、7ヵ月ぶりの高水準に。1月に2008年7月以来で最短を記録した1月の19.3週を上回ったままだ。27週以上にわたる失業者の割合も22.4%と前月の21.1%を上回り、8ヵ月ぶりの高水準。2008年8月以来の20%割れを遂げた1月の19.3%から遠ざかっている。

3)賃金 採点-△
今回は3ヵ月連続で前月比0.2%の上昇、前年比は3.1%と3~4月の3.2%を下回った。2009年3月以来の高水準だった2月の3.4%から鈍化したままだ。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.3%上昇の23.38ドル、前年比では3.4%の上昇と、4月に続き約10年ぶりの高い伸びだった2018年12月の3.5%に次ぐ力強さをみせた。全体の平均時給と合わせ、10ヵ月連続で3%を超えた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。

平均時給、全体は伸び悩むも生産労働者・非管理職は好調を維持。
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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-△
労働参加率は62.8%と、2018年9月以来の低水準を維持。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比0.1%増の1億6,265万人となり、5ヵ月ぶりに増加した。非労働人口は横ばいの9,622万人だった。

――5月の雇用統計は、①NFPの鈍化、②NFPにおける過去2ヵ月分の下方修正、③平均時給の伸び悩み、④横ばいだった労働参加率、⑤横ばいだった週当たり平均労働時間――と、決して芳しい内容ではありません。平均時給は約8割を占める生産労働者・非管理部門が力強さを保ったとはいえ、市場が年内の利下げを期待してもおかしくない内容です。何より、労働参加率は25~54歳など働き盛りの男性の間で2ヵ月連続で低下した点は気掛かりです。(以下、全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字)。

・25~54歳 88.8%、8ヵ月ぶりの低水準<前月は89.2%
・25~54歳(白人) 90.1%、年初来で最低<前月は90.2%
・25~34歳 88.8%、2018年1月以来で最低<前月は89.1%
・25~34歳(白人) 90.1%、2018年1月以来で最低<前月は90.3%

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(出所:My Big Apple NY)

6月18~19日開催のFOMCで利下げを決定せずとも、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の記事通り、協議されるのでしょう。7月30~31日開催のFOMCでの利上げ織り込み度は、米雇用統計後に一時60.8%と、前日の58.0%から上昇。パウエルFRB議長は市場の変化に合わせ機動的に政策を調整してきたため、市場関係者が7月の利下げを織り込むのも致し方なし。労働市場ひっ迫時であればNFPが鈍化するのは想定内ですが、対中追加関税が引き上げられる以前からFOMC参加者の間で労働市場がそれほど引き締まっていないとの見方も聞かれてましたし・・。

(カバー写真:NCDOTcommunications/Flickr)

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