Existing Home Sales Rebound, FHA’s New Guidelines Could Attract More Buyers.
全米リアルター協会(NAR)が発表した米7月中古住宅販売件数は年率542万件と、市場予想の540万件を上回った。前月の529万件(527万件から上方修正)を2.5%上回る。金利低下に支えられ増加に転じただけでなく、5ヵ月ぶりの高水準。前年比では0.6%増と、2018年2月以来のプラスに転じた。
内訳をみると、一戸建てが484万件と前月の471万件(修正値)を2.8%上回った。複合住宅は横ばいの58万件となったが、これはNY州でのマンション税引き上げが影響した可能性がある。
中古住宅販売件数、一戸建ては増加も複合は変わらず。
4大地域別では、3地域で増加し前月の2地域を上回った。複合住宅比率が高い北東部のみ2.9%減(3ヵ月ぶりの減少)の66万件だったが、他は全て増加。IT企業が集まり住宅価格の高騰が著しい西部が8.1%増(過去4ヵ月間で3回目の増加)の118万件だった。住宅市場規模が最大の南部は1.8%増(前月から増加に反転)の231万件、中西部も1.6%増(4ヵ月連続で増加)の127万件だった。
在庫件数は前月比1.6%減の189万件と7ヵ月ぶりに減少も、2018年6月以来の高水準近くを保つ。前年比では1.6%減となり、2ヵ月連続で減少した。なお、在庫件数は2016年12月に165万件と1999年以来での最低を更新していたが、以降は回復基調に入っている。販売が増加し在庫が減少した結果、在庫相当は前月の4.2ヵ月となった。
中央価格は前月比2.6%上昇の28.08万ドルと、6ヵ月ぶりに下落し過去最高から後退した。前年比では4.3%上昇、2012年3月以降続くプラス基調を保った。前年比で平均時給の上昇ペースを上回るペースを維持している。販売日数は29日と、前月と前年同月の27日から延びた。NARは、販売件数の51%が1ヵ月以内に買い手がついたと説明、前月の56%を下回った。
買い手の内訳は、以下の通り。
・新規購入者32%<前月は35%、前年同月は32%
・現金購入者19%>前月は16%、前年同月は20%
・住居用ではなく投資向け11%>前月は10%、前年同期は13%
発表元のNARのローレンス・ユン米エコノミストは、結果を受け「値ごろな価格帯の住宅在庫が不足しており、販売向け住宅の増加が望ましい」と振り返った。もっとも、米連邦住宅局(FHA)の規制緩和により「新規建設中のアパートメント(賃貸の複合住宅、あるいはオーナーが建物全ての所有権を有する)をコンドミニアム(分譲の複合住宅、各室ごとにオーナーが異なる)に転換する可能性があり、住宅在庫のひっ迫状況の改善が期待できる」と結んだ。
――FHAの債務保証に関する規制は2008年9月の金融危機で強化された後、2016年頃から緩和が議論され、政権交代後に漸く日の目を見ることとなりました。FHAの債務保証がついた住宅ローンは、頭金比率が3.5%(通常は20%)、信用スコアは580点(通常、620点以下がサブプライム=低信用)で金融機関から融資を受けられる半面、住宅ローン保険の加入(通常、年間保険支払い額は借入額の0.5%)が義務付けられています。もちろん、高価格帯の物件は対象外で上限は州によって異なり、NY州では73万ドル、フロリダ州では35万ドルが目安となっています。
今回の主な変更点は以下の通りで、10月15日から施行されます。
1)FHAが1棟全てを債務保証しなくとも、10室以上を有する複合住宅の場合、FHAを通じた住宅ローン融資の割合が10%未満であれば、個別で対応が可能に。10室以下の場合は、2室のみが個別対応での債務保証対象となる。
2)コンドミニアムでの商用スペース比率を引き上げ
3)建設業者が債務保証認証を申請するための期間を2年から3年へ延長
4)これまで分譲比率が50%のコンドミニアムをFHAの債務保証対象としたが、35%へ引き下げ
5)FHAの融資受付認証手続きを簡素化
FHAによれば、規制緩和前でFHAの債務保証対象はコンドミニアム建設予定15万件のうち6.5%程度でした。今後は、対象件数が2万~6万件へ増加する見通しです。
2018年にはFHAの債務保証が承認されたコンドミニアムの住宅ローン比率は2.1%まで低下しましたが、今後は金利低下と堅調な労働市場を追い風に好転が期待されます。
(カバー写真:Jorge Quinteros/Flickr)
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