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米8月雇用統計、NFPは鈍化も平均時給と労働参加率は予想超え

by • September 8, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2870

Job Growth Slows, But Wage And Labor Force Participation Rate  Confirm U.S. Economy Is Fine.

米8月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比13.0万人増となり、市場予想の16.0万人増を下回った。前月の15.9万人増(16.4万人増から下方修正)には届かず。6月分の1.5万人の下方修正(19.3万人増→17.8万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で2万人の下方修正となった。6~8月の3ヵ月平均は15.6万人増と、2018年平均の22.3万人増を下回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比9.6万人増と、市場予想の15.0万人増を下回った。前月の13.1 万人増(14.8万人増から下方修正)にも届かず、6ヵ月ぶりの低い伸びとなる。民間サービス業も8.4万人増と、前月の13.3万人増を下回った。

NFP、伸びは鈍化したものの堅調なペースを維持。

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向で、1位は専門・サービスが6〜7月の2位から浮上、2位は政府が圏外から入り、3位は6〜7月に1位だった教育・ヘルスケアとなる。今回、減少したセクターは3業種で、7ヵ月連続で小売が入ったほか、前月に続き公益が落ち込んだ。その他、8月は輸送・倉庫とその他サービスが減少した。なお、7月に減少した娯楽・宿泊は増加に転じた。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・専門サービス 3.7万人増>前月は3.6万人増、6ヵ月平均は3.5万人増
(そのうち、派遣は1.5万人増>前月は0.8万人減、6ヵ月平均は0.1万人減)
・政府 3.4万人増>前月は2.8万人増、6ヵ月平均は1.4万人増
・教育・健康 3.2万人増<前月は7.1万人増、6ヵ月平均は5.5万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は3.7万人増<前月は4.7万人増、6ヵ月平均は4.6万人増)

・金融 1.5万人増<前月は2.0万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
・娯楽・宿泊 1.2万人増>前月は0.3万人減、6ヵ月平均は1.2万人増
(そのうち食品サービスは1.2万人増>前月は0.3万人増、平均1.3万人増)
・卸売 0.3万人増<前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.4万人増
・情報 横ばい=前月は横ばい、6ヵ月平均は0.3万人増

・その他サービス 0.1万人減<前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・輸送・倉庫 0.1万人減<前月は横ばい、6ヵ月平均は0.5万人増
・公益 0.1万人減=前月は0.1万人減、6ヵ月平均は横ばい
・小売 1.1万人減<前月は0.5万人減、6ヵ月平均は1.2万人減

財生産業は前月比1.2万人増と、前月の0.2万人減(修正値)から改善した。建設が前月の減少から増加に転じた一方で、鉱業は3ヵ月連続で減少した。製造業は、5ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 1.4万人増>前月は0.2万人減、6ヵ月平均は1.4万人増
・製造業 0.3万人増<前月は0.4万人増、6ヵ月平均は0.3万人増
・鉱業・伐採 0.5万人減<前月は0.4万人減(石油・ガス採掘は0.1万人増)、6ヵ月平均は0.1万人減

平均時給は前月比0.4%上昇の28.11ドル(約3,000円)と、市場予想と前月の0.3%を上回っただけでなく、6ヵ月ぶりの力強い伸びとなる。前年比は3.2%上昇、市場予想の3.0%を上回った。7月の3.3%に届かず、2月につけた2009年4月以来の力強い伸び(3.4%)を下回ったままだが、13ヵ月連続で3%台に乗せた。

週当たりの平均労働時間は34.4時間と市場予想と一致し、7月の34.3時間を上回った。なお7月は、ハリケーン・ハービー直撃の影響を受けた2017年9月以来の水準へ短期化していた。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.4時間と、前月の40.2時間を上回り全体を支えた。なお、財部門は1月の40.7時間を下回った水準が続く。全体の約7割を占める民間サービスも、6〜7月33.2時間を上回り33.3時間だった。

失業率は3.7%と、市場予想と6〜7月の水準と一致した。1969年12月以来で最低だった4~5月の3.6%近くを保つ。6月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2019年見通しを2ヵ月連続で上回った。労働参加率は63.2%へ上昇し、前月の63.0%を超え1〜2月の高水準に並んだ。事業調査であるNFPと異なり就業者が59.0万人増と好調だったほか、失業者も1.9万人減となり、労働参加率の上昇にも関わらず失業率は上昇を回避した。就業率は60.9%と、2008年12月以来の高水準だった。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.3%増の1億3,079万人と、3ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.4%増の2,697万人と、増加に転じた。増減数ではフルタイムが36.0万人増、パートタイムは11.3万人増だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数の伸びが前月から鈍化したものの、平均労働時間が延びたため前月比で0.3%上昇した。平均時給が上昇し続けた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.8%上昇、19ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.2%と、2000年12月以来の7%割れに迫った前月の7.0%から小幅に上昇した。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は438.1万人と、4ヵ月ぶりに増加。2006年4月以来の低水準だった前月の398.4万人から増加した。

2)長期失業者 採点-×
失業期間の中央値は8.9週と前月と変わらず、1月に続き2017年12月以来の低水準だった1月の水準に並んだ。平均失業期間は22.1週と、2008年7月以来で最短を記録した前月の19.6週から延びた。27週以上にわたる失業者の割合は20.6%と、2008年8月以来の低水準だった前月の19.2%から上昇した。

3)賃金 採点-〇
今回は前月比0.4%の上昇、前年比は3.2%と共に市場予想超え。前年比は2009年3月以来の高水準だった2月の3.4%から鈍化したままとはいえ、13ヵ月連続で3%台に乗せている。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.5%上昇の23.59ドルと2014年2月以来の高い伸びに、前年比では3.5%上昇し約10年ぶりの高い伸びだった2018年12月に並ぶ全体と合わせ、13ヵ月連続で3%台の伸びを遂げた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。

平均時給、全体は伸び悩むも生産労働者・非管理職は好調を維持。

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nfp-wage(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-〇
労働参加率は63.2%と、前月の63.0%を超え1〜2月の高水準に並ぶ。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比0.4%増の1億6,392万人となり、4ヵ月連続で増加した。非労働人口は0.4%減の9,510万人だった。

――8月の雇用統計はNFPが鈍化したものの、①全体の労働者の平均時給の前月比が7月を上回る、②労働参加率が上昇、③就業率が上昇、④労働参加率が上昇も失業率が横ばい、⑤週当たり労働時間が改善――など、労働市場の質の面でグッドニュースをもたらしました。特に②の労働参加率は7月に続き25~54歳の働き盛りの男性で改善しています。白人男性は前月から低下していたとはいえ、改善の兆しが現れたことに違いはありません(以下、全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字)。

・25~54歳 89.0%、4ヵ月ぶりの高水準>前月は88.9%、6ヵ月平均は89.0%
・25~54歳(白人) 90.2%>前月は90.0%、2018年7月以来の低水準、6ヵ月平均は90.2%
・25~34歳 88.9%、4ヵ月ぶりの高水準>前月は88.5%、6ヵ月平均は88.9%
・25~34歳(白人) 90.4%>前月は90.0%、2018年1月以来の低水準、6ヵ月平均は90.4%

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さらに、男女合わせた25〜54歳の就業率は2008年以来の80%台を回復しました。

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(作成:My Big Apple NY)

過去2ヵ月分のNFPは下方修正され、不完全失業率が上昇し、長期間の失業者をめぐる指標は前月から改善ペースが鈍化しました。しかし、労働参加率の改善に伴い、米国人全体の裁量消費余地が広がる期待が高まります。また、平均時給が力強さを維持した点も好材料。現時点で、米景気が急減速する気配は感じられません。ただ米中通商協議で改善への糸口が掴めない限り、FedはNFPの鈍化や企業の設備投資の不振が労働市場を圧迫しないよう、9月も「保険的」な利下げを続けるのでしょう。

(カバー写真:Pietro & Silvia/Flickr)

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