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2020年の米大統領選、大番狂わせはアジア系副大統領候補?

by • October 1, 2019 • Latest News, NY TipsComments Off3495

“Yang Gang” Could Affect Democratic Ticket In 2020.

民主党の米大統領候補指名争いが、太平洋の向こう側のメディアを騒がせない日はありません。ヒッケンルーパー前コロラド州知事、ジリブランド上院議員(NY州)、デブラシオNY市長など既に複数が撤退したとはいえ、9月末時点でも候補者は19名に上り、引き続き乱立気味です。

ひしめく候補者の中で、頭一つ抜きんでているのは皆様ご承知の通りジョー・バイデン前副大統領、エリザベス・ウォーレン上院議員、バーニー・サンダース上院議員の3人です。足元では、オクラホマ州出身のウォーレン氏が支持を広げる状況。サンダース議員は負けじと、足元で家賃上昇抑制計画を発表してきました。

有力候補3名を虎視眈々と追うのが、インディアナ州サウスベンド市長のピート・ブティジェッジ氏カマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州)です。ブティジェッジ氏が仮に大統領に就任すれば、最年少、初の同性愛者の大統領としてでなく、初めて出会い系アプリでパートナーと知り合った大統領となります(ちなみに、ブティジェッジ氏が利用した出会い系アプリHingeは効果を追い風にQ2のダウンロード数が3倍に)。

ブティジェッジ氏といえば37歳という若さに加え、ハーバード大とオックスフォード大ペンブローク・カレッジを卒業したエリートで、インディアナ州とラストベルト出身であることが魅力的。2007年にオバマ陣営で米大統領選に関与した後、2009年に海軍予備役として登録、2011年に29歳の若さでサウスベンド市長に当選後、2014年にはアフガニスタンに従軍した経歴を持つとあって、まさに非の打ち所のない候補者ですよね。トランプ大統領は、そんな民主党の若きスターに早速、米国の風刺雑誌MADのマスコットにちなんで“アルフレッド・E・ニューマン”というニックネームをつけましたが、ブティジェッジ氏は、“世代の違いだね”と切り返す余裕をみせつけました。

写真:ブティジェッジ氏とアルフレッド・E・ニューマン、似てますかね?

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(出所:VCU Libraries, Gage Skidmore/Flickr)

ブティジェッジ氏に続くカマラ・ハリス氏は黒人系とインド系のミックスで、元弁護士からカリフォルニア州司法長官を経て、2016年に上院議員に選出。司法長官時代はギャング団による犯罪、麻薬取り締まり、性的虐待などで断固たる姿勢で臨んだことで知られ、人権問題や人種問題にも取り組んできました。何より注目は2012年、大手金融機関5社から勝ち取った和解金250億ドルで、1998年のたばこ訴訟以来で最大となり、不当差し押さえの被害者に大いなる果実をもたらしたものです。

大成功を収めたハリス氏、翌年には友人がセッティングしたブラインド・デートで弁護士のダグラス・エンホフ氏と出会い、ユダヤ系の彼と2014年8月に結婚に至ります。ブティジェッジ氏ほどパートナーについて多くを語らないものの、6月にスピーチ中のハリス氏目掛けて演壇に上がった部外者をいち早く取り押さえた夫の姿は、SNSで大いにバズりました。

なお、SNSで見かける#KHivesとはハリス氏のサポーターを表すハッシュタグで、“hive”とはそもそもミツバチの群れを意味すますが、黒人の歌姫でビヨンセの熱烈なファンがBeyoneのBey=Beeをもじって#BeyHivesと呼び始めたことに端を発します。

エンホフ氏のインスタグラムは、支持者や愛するハリス氏とのセルフィーが目立ちます。

Kamala Harris, SF Pride 2015
(作成:Thomas Hawk/Flickr)

こうしてみるとブティジェッジ氏は同性愛者、ミレニアル、エリート層の側面が際立ち、ハリス氏は女性、黒人、インド系という3つのマイノリティにユダヤ系の票が加わり、互いに善戦しそうにみえますよね?少なくとも、有力大統領候補の3名からランニング・メイトに指名されてもおかしくありません。しかし、実はこの2人以外にダークホースが存在するのですよ。いえいえ、日本でもお馴染み、2018年の上院選で惜敗したベト・オルーク元下院議員ではありません。

足元、静かに支持を伸ばしているもう一人の候補者の名は、アンドリュー・ヤン氏。台湾系アメリカ人2世で44歳で、政治経験はありません。名門ブラウン大学で政治経済を学んだ後、コロンビア大ロー・スクールで法学士を取得するも法律事務所を早々に退職し、IT業界に飛び込みます。10万ドルの借金を抱えながら、IT関連のスタートアップ企業を立ち上げ最高経営責任者(CEO)や役員などを歴任し、2011年には若手人材と起業家をつなぐベンチャー・フォー・アメリカ(VFA)を設立しました。当時のオバマ大統領は、2012年にヤン氏を”変化のチャンピオン(Change of Champion)として表彰2015年には“グローバル・アントレプレナーシップのための大統領特使”に選出しています。

自身を「数学が得意なアジア系」と紹介し笑いを誘うヤン氏は、トランプ氏の対抗馬としてはもってこいかもしれません。政治経験がなく起業家という共通点を持つだけでなく、スローガンがMATH-Make America Think Harder(米国に知恵をふり絞らせる)なのですよ。2016年のMake America Great Againを彷彿とさせますよね。選挙公約の柱には、18歳以上の米国人に毎月1,000ドルのベーシック・インカムを支払う“自由の配当(freedom dividend)”を掲げます。

ヤン氏は“自由の配当”について熱弁する以外に、自動化による職の喪失や平均寿命の短期化をめぐり、米国の将来に影を投げかける由々しき問題として取り上げてきました。こうした語り口が受け、ツイッターなどSNSで瞬く間にヤン氏の主張が広がり、今では支持者が自らを”ヤング・ギャング(Yang Gang、一人称はYangsters)“と呼んで一致団結するほど。主に若い男性が多いとされているのは、こちらで紹介したように25~34歳の男性層での賃金伸び悩みを思い出させますね。

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(出所:Gage Skidmore/Flickr)

ヤング・ギャングの支持を追い風に、同氏の支持率は4月時点の0.8%から9月末には3.3%へ上昇。今ではハリス氏に続き6位に浮上、泡沫候補とは言わせない存在感をみせつけます。日本ではそれほど注目されていませんが、大番狂わせとしてヤン氏が副大統領候補に指名されないとは言い切れない?

(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)

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