The Number Of Major Foreign Holders Of U.S. Treasury Increases Again.
8月対米証券投資は、705億ドルの買い越しだった。前月の433億ドルの買い越しを含め、4ヵ月連続で流入している。海外の資金動向をみると、民間が4億ドル買い越し、前月の838億ドルに続き5ヵ月連続で流入した。一方で、海外中銀を含む公的機関は423億ドル売り越し、少なくとも8ヵ月ぶりに流入となった6月以外で続く縮小トレンドにある。8月は海外投資家による社債や株式から大規模な資金流出を記録した。
海外投資家の米国債投資は419億ドルの売り越しと、前月の722億ドルの買い越しから転じた。米国債の内訳をみると、民間が185億ドル買い越し、前月421億ドルと合わせ3ヵ月連続で流入した。一方で、海外中銀を含む公的機関は490億ドルの売り越しと、流出トレンドを保った。なお、米国人の海外証券投資は8億ドルの買い越しとなった。
8月の金融市場は、6月末のG20首脳会議中に行われた米中首脳会談で約3,000億ドル相当の中国製品に対する追加関税発動見送りなどで合意したものの、8月1日にトランプ大統領が一転して9月1日からの発動を発表した。7月末の米中閣僚貿易交渉で進展がみられなかったためで、8月5日には中国を為替報告書の公表を待たずに「為替操作国」に認定。人民銀行は合わせて、約11年ぶりに7元乗せを許容したほか、8月19日にはトランプ政権がファーウェイ関連の46社を新たに米国輸出管理規則に基づくエンティティー・リストに追加したため、リスク資産を中心に下落した。ダウは7月に過去最高値を更新した後、一時は6月初め以来の水準へ下落。世界各国の利下げもあって、米10年債利回りは約3年ぶりに一時1.5%を割り込んだ。
国別での米国債保有高トップ5動向は、2018年8月~19年7月と同じ顔触れとなった。ただし、1位は3ヵ月連続で日本となる。日本は6月対米証券投資で、2017年5月以来初めて中国を抜き1位の座を取り戻した。
2位以下の順位は変わらず。英国が前月に続き3位、ブラジルが4位に転落したままとなる。アイルランドは税制改革法案が成立直後の2018年前半こそ3位だったが、2018年8月にはブラジルに抜かれ4位へ、19年1月には英国に抜かれ5位となった。なおアイルランドは租税回避地として知られ、米国のIT企業や製薬企業などが拠点を置き、海外留保利益を米国債として保有してきたが、レパトリ減税が税制改革法案に盛り込まれ存在感が低下しつつある。
1位 日本 1兆1,747億ドル(2015年9月以来の高水準)、439億ドルの買い越し、4ヵ月連続で流入
2位 中国 1兆1,035億ドル(2017年4月以来の低水準)、68億ドルの売り越し、過去6ヵ間で5回目の流出
3位 英国 3,499億ドル(2010年6月以来の高水準)、152億ドルの買い越し、過去4ヵ月で3回目の流入
4位 ブラジル 3,115億ドル(4ヵ月ぶりの低水準から切り返し)、16億ドル買い越し、買い越しに反転
5位 アイルランド 2,725億ドル(2016年4月以来の低水準から切り返し)、143億ドルの買い越し、3ヵ月ぶりに流入
トップ5の米国債保有高の推移。
米国債保有高が300億ドル以上の主要国のうち、買い越しトップ5ヵ国は以下の通り。このうち、日本が3ヵ月連続で買い越し額1位だったほか、保有高3位の英国は7月に売り越し額上位2位から今回買い越し3位となった。ケイマン諸島は7月に売り越し額トップだったが、今回は買い越しで2位に入っている。その他、7月に売り越し額で5位だったアイルランド、ルクセンブルクの買い越しが目立った。
1位 日本 1兆1,747億ドル(2015年9月以来の高水準)
2位 ケイマン諸島 179億ドル増の2,363億ドル(2017年10月以来の高水準)
3位 英国 152億ドル増の3,499億ドル(2010年6月以来の高水準)
4位 ルクセンブルク 148億ドル増の2,444億ドル(過去最大)
5位 アイルランド 143億ドル増の2,725億ドル(2016年4月以来の低水準から切り返し)
売り越しトップ3ヵ国は、以下の通り。今回、トランプ政権が対中追加関税第4弾の9月1日実施を発表するなか、中国が売り越しトップだった。その他、オーストラリアやフランスが売り越し。4位のフィリピンは前月比横ばい、5位のクウェートは買い越したものの、流入させた国の中で最低の規模にとどまった。
1位 中国 68億ドル減の1兆1,035億ドル(2017年4月以来の低水準)
2位 オーストラリア 39億ドル減の384億ドル(8ヵ月ぶりの低水準)
3位 フランス 23億ドル減の1,339億ドル(過去最大近くを維持)
4位 フィリピン 横ばいの339億ドル(2017年12月以来の高水準近くを維持)
5位 クウェート 1億ドル増の441億ドル(過去最大近くを維持)
――8月に米中貿易摩擦が悪化した結果、中国は予想通り売り越してきました。しかし、中国の資金フローと関係が深いとされるルクセンブルクと英国は大幅に買い越ししています。香港も128億ドル買い越し過去最大を更新するなど、中国が公的・民間ともに米国債を売却し続けているのかは疑問が残ります。
さて、バロンズ誌で外貨準備高の多様化の一環として金への投資の高まりが指摘されていましたが、8月単月で言うならば前述の通り米国債を買い越した国が優勢でした。リスク選好度の低下で、マイナス金利にない安全資産である米国債が選好されたもようです。
その証左として、米財務省が公表する主要保有国リスト(米国債保有高300億ドル以上)入りした国は、3月と4月に32ヵ国→5月と6月に33ヵ国→7月は34ヵ国ときて、今回35ヵ国へ増加しました。今回、新たにリストに加わった国はポーランドで、3ヵ月ぶりの復帰となります。中国やロシア、トルコの米国債離れ・金シフトが指摘されていますが、世界各国の中銀が利下げを行い金利が低下するなか、米国債は安全資産としての魅力だけでなく、利回りの観点が意識され資金流入が進んでいるのでしょう。
(カバー写真:Mayastar/Flickr)
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