Temporary Census Workers Supported A Large Gain In August.
米8月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比137.1万人増となり、市場予想の135万人増を上回った。前月の173.4万人増(176.3万人増から下方修正)を含め、4ヵ月連続で増加し、これで約1,061万人を回復したことになる。3~4月の記録的な減少(2,216万人)を回復するにはあと1,155万人必要だ。なお、トランプ政権は政策アジェンダとして、10ヵ月間で1,000万人の雇用創出を掲げる。
チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと1,155万人増加する必要。
6月分の1万人の下方修正(479.1万人増→478.1万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で3.9万人の下方修正となった。6~8月の3ヵ月平均は262.9万人増となり、コロナ禍を受けた大幅減から回復をたどるなかで、2019年平均の17.5万人増を大幅に上回った。
NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比102.7万人増と市場予想の129.4万人増を下回った。前月の148.1万人増(146.2万人増から上方修正)に届かなかったものの、改善をたどる。民間サービス業は98.4万人増となり、前月の142.0万人増(142.3万人増から下方修正)を上回った。
チャート:NFP、失業率ともに4ヵ月連続で改善
サービス部門のセクター別動向は、11業種中全て増加し前月の9業種を上回った。8月は国勢調査に関わる臨時雇用により、政府が押し上げた。今回の増加分の4分の1を占める。その他、経済活動の再開が奏功し小売が力強く増加、専門サービスも好調だった。なお、これまで雇用回復をけん引してきた娯楽・宿泊は、一部の州でレストランなど対面サービスの営業再開に規制を課すなか、今回は鈍化した。詳細は、以下の通り。
(サービスの主な内訳)
―増加した業種
・政府 34.4万人増、3ヵ月連続で増加>前月は25.3万人増、6ヵ月平均は13.9万人減
・小売 24.9万人増、4ヵ月連続で増加>前月は23.9万人増、6ヵ月平均は10.9万人減
・専門サービス 19.7万人増、4ヵ月連続で増加>前月は15.3万人増、6ヵ月平均は24.6万人減(そのうち、派遣は10.7万人増<前月は12.2万人増、6ヵ月平均は7.9万人減)
・娯楽・宿泊 17.4万人増、4ヵ月連続で増加<前月は62.1万人増、6ヵ月平均は69.0万人減(そのうち食品サービスは13.4万人増<前月は52.5万人増、6ヵ月平均は41.5万人減)
・教育・健康 14.7万人増、4ヵ月連続で増加<前月は22.2万人増、6ヵ月平均は24.3万人減(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は9.0万人増<前月は19.6万人増、6ヵ月平均は19.3万人減)
・輸送/倉庫 7.8万人増、3ヵ月連続で増加>前月は4.9万人増、6ヵ月平均は6.3万人減
・その他サービス 7.4万人増、4ヵ月連続で増加<前月は15.4万人増、6ヵ月平均は8.9万人減
・金融 3.6万人増、4ヵ月連続で増加>前月は1.3万人増、6ヵ月平均は3.2万人減
・情報 1.5万人増、過去6ヵ月間で2回目の増加>前月は0.9万人減、6ヵ月平均は5.2万人減
・卸売 1.4万人増、過去4カ月間で3回目の増加>前月は2.0万人減、6ヵ月平均は5.5万人減
・公益 0.1万人増、2ヵ月連続で増加=前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.1万人減
―減少した業種
なし
財生産業は前月比4.3万人増と、前月の6.1万人増(3.9万人増から上方修正)を含め4ヵ月連続で増加した。経済活動の再開に伴い、4カ月連続で製造業と建設が改善したが、油価が徐々に回復しているとはいえ鉱業は減少基調を保つ。詳細は、以下の通り。
(財生産業の内訳)
・製造業 2.9万人増、4ヵ月連続で増加<前月は4.1万人増、6ヵ月平均は12.0万人減
・建設 1.6万人増、4ヵ月連続で増加<前月は2.7万人増、6ヵ月平均は7.1万人減
・鉱業・伐採 0.2万人減、6ヵ月連続で減少(石油・ガス採掘は1,100人減)>前月は0.7万人減、6ヵ月平均は1.6万人減
チャート:サービス11業種中全てが増加の快挙
平均時給は前月比0.4%上昇の29.47ドル(約3,120円)と、市場予想の横ばいに反しプラス圏を確保した。前月の0.1%(0.2%から下方修正)を超え、2ヵ月連続で上昇している。前年比は4.7%上昇し前月と一致(4.8%から下方修正)し、市場予想の4.5%も上回った。高い水準を保ち、前年比の3%超えは25ヵ月連続となる。
チャート:平均時給は前年比で4月をピークに鈍化しつつ高水準を維持
週当たりの平均労働時間は34.6時間と、市場予想と前月の34.5時間を上回った。ただし、統計が開始した2006年以来で最長となる5月の34.7時間には届いていない。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は39.7時間と、前月の39.5時間を上回り3月以来の40時間回復に近づいた。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.6時間と、前月の33.5時間を上回った。なお5月は、33.8時間で少なくとも2006年以降で過去最長だった。
失業率は8.4%と、市場予想の9.8%を下回った。前月の10.2%からも低下し、過去最悪だった4月の14.7%でピークアウトを示す。失業者は前月比279万人減の1,355万人となっただけでなく、就労者も同376万人増の1億4,729万人と3ヵ月連続で増加した。
労働参加率は61.7%と市場予想の61.8%に届かなかったとはいえ、前月の61.4%から改善した。コロナ禍を受け1973年1月以来の低水準だった4月の60.2%から上昇を続けている。就業率は過去最低だった4月の51.3%から4カ月連続で改善をたどり、56.5%と、3月以来の高水準だった。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比2.4%増の1億2,237万人、前月から284万人増加した。パートタイムは同4.1%増の2,497万人となり、前月から99.1万人増加した。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が増加を続けただけでなく、平均労働時間もわずかながら上昇したため、前月比1.2%増と4ヵ月連続でプラスとなった。平均時給が前月比で上昇に転じるなか、雇用増が支え労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比1.5%増と、こちらも4ヵ月連続で増加した。
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-〇
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は14.2%と、前月の16.5%から改善した。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は前月比14.7%減の621.4万人と大幅に4ヵ月連続で減少した。
チャート:不完全失業率、労働参加率、就業率はそろって改善
(作成:My Big Apple NY)
2)長期失業者 採点-△
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均は20.2週と、前月の17.9週から延びコロナ禍前の2月の水準に近づいた。失業期間の中央値は16.7週と、前月の15.0週から延び2013年12月以来の高水準に。27週以上にわたる失業者の割合は12.0%と前月の9.2%から上昇、3月以来の水準へ上昇した。それぞれコロナ禍以前の水準に回復しつつあるように、感染拡大中に労働市場から退出した洗剤労働者が市場に戻ってきたことを示すが、吸収できるかが課題となる。
3)賃金 採点-〇
今回は前月比0.4%上昇し、前月の0.1%(修正値)を含め2ヵ月連続で上昇した。前年比は4.7%上昇し、前年比で3%超えは24ヵ月連続。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比0.7%上昇の24.81ドル。前年比でも4.9%上昇し、前月比と前年比ともに管理職を含めた全体を上回った。
4)労働参加率 採点-〇
労働参加率は61.7%と前月の61.4%を上回り、5ヵ月ぶりの水準を回復した。1973年1月以来の低水準だった4月の60.2%、5月の60.8%から着実な改善をたどる。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。
――今回、国勢調査に絡む臨時雇用が23.8万人押し上げ、NFPは大幅増を遂げました。この支えがなければ市場予想を下回ったとはいえ、民間サービス業の11業種のうち、全て増加する快挙を果たしています。さらに労働参加率や失業率、週当たり平均労働時間、不完全失業率などそろって改善。Fedはインフレ目標値と共に雇用の最大化を巡る文言を修正しましたが、労働市場の改善を受けて市場が緩和終了を先取りすることを防ぐ目的が透けて見えます。
平均時給が2ヵ月連続で上昇したことも、心強い。雇用増加分の約半分を担ってきた低賃金の娯楽・宿泊の回復ペースが、一部の州で対面サービス部門での営業再開停止などを受け鈍化した統計上の事情を反映したのでしょう。とはいえ娯楽・宿泊は今回も全体の雇用増の約13%を占めており寄与度は低くはなく、コロナ禍でも8月にトランプ氏が署名した大統領令による失業保険の300ドル上乗せが徐々に各州で実施されていることも重なり、雇い主は雇用を確保する上で相応の支払いが必要となっているようです。
なお、テレワーク中の労働者は24.5%でした。5月に質問を開始した35.4%から低下が続きます。ただ、JPモルガン・チェースなど大手銀のほかIT関連企業など在宅勤務を継続する企業が増えており、コロナ禍が引き金となったはたらき方改革の流れが止まりそうにありません。
(カバー写真:Delaware FirstMap/Flickr)
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