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米8月雇用統計:白人と黒人の失業率格差は、2014年末以降で最大

by • September 6, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off3701

The Gap Black And White Unemployment Rates Is Widest In 6 Years.

米8月雇用統計は、非常業部門就労者数(NFP)は国勢調査の臨時雇用に押し上げられて大幅増を遂げただけではなく、平均時給や失業率や労働参加率など、そろって改善しました。では、業種別の平均時給を始め、人種や学歴別など改善がどこまで広がっているか、詳しく見てみましょう。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職部門(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比0.7%上昇の24.81ドル。管理職を含めた全米の上昇率を超え、前月の0.4%下落から転じ4カ月ぶりに上昇に転じた。業種別を前月比でみると、輸送・倉庫が3.4%上昇、小売が3.2%上昇し、共に3%超えを遂げた。7月の企業別採用動向をみても、コロナ禍でオンライン売上比率が上振れした結果、需要の高まりに合わせ雇用を増加させていることが分かる。同時に、コロナ禍で応募者が限られ、賃金を引き上げる必要があったようだ。生産労働者・非管理職全体の上昇率0.7%を超えた業種は4つと、輸送・倉庫と小売りに支えられた民間サービスとなる。

チャート:業種別、前年比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

働き盛りの男性(25~54歳)の労働参加率は、ヘッドライン同様にそろって上昇しコロナ禍で外出禁止措置が講じられた3月以来の水準を回復した。全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字で以下の通り。

・25~54歳 88.1%、3月以来の高水準>前月は87.6%、6ヵ月平均は87.7%
・25~54歳(白人) 89.2%、3月以来の高水準>前月は88.6%、6ヵ月平均は89.0%
・25~34歳 86.9%、3月以来の高水準>前月は86.1%、6ヵ月平均は86.6%
・25~34歳(白人) 88.6%、3月以来の高水準>前月は87.4%、6ヵ月平均は88.3%

チャート:働き盛りの男性、労働参加率

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(作成:My Big Apple NY)

〇非労働力人口

非労働力人口に属し現在職を探していないものの「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で9.7%減の698.5万人(男性は338.9万人、女性は359.6万人)。過去最多をつけた4月でピークアウトし4ヵ月連続で減少した。ただ「今すぐ仕事が欲しい」と回答した非労働力人口は、2ヵ月連続で女性が男性を上回った。

チャート:就職を望む非労働力人口

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の労働参加率は全て改善し黒人以外が全て3月以来の水準を回復、アジア系に至っては3月の水準に並んだ。

・白人 61.8%、3月以来の高水準>前月は61.6%、6ヵ月平均は61.7%
・黒人 60.4%>前月は60.2%、6ヵ月平均は60.8%
・ヒスパニック 65.3%、3月以来の高水準>前月は64.6%、6ヵ月平均は65.4%
・アジア系 63.8%、3月の水準に並ぶ>前月は63.4%、6ヵ月平均は62.6%
・全米 61.7%、3月以来の高水準>前月は61.4%、6ヵ月平均は61.7%

チャート:人種別の労働参加率

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(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率も、そろって改善。ヒスパニック系の改善が著しく7月から2.4ポイントも低下した。次いで白人が1.9ポイント、黒人が1.6ポイント、アジア系が1.3ポイントとなる。

・白人 7.3%<前月は9.2%、6ヵ月平均は8.6%
・黒人 13.0%<前月は14.6%、6ヵ月平均は12.7%
・ヒスパニック 10.5%<前月は12.9%、6ヵ月平均は12.1%
・アジア系 10.7%<前月は12.0%、6ヵ月平均は10.4%
・全米 8.4%<前月は10.2%、6ヵ月平均は9.4%

チャート:人種別の失業率

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(作成:My Big Apple NY)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、引き続きまちまち。8月は大卒以上で改善し、中卒は横ばいだったが、そろって3月以来の水準を回復した。ただし、高卒は低下し4カ月ぶりの低水準となる。

・中卒以下 44.9%、3月以来の高水準=前月は44.9%、6ヵ月平均は43.9%
・高卒 54.9%、4カ月ぶりの55%割れ<前月は55.4%、6ヵ月平均は55.4%
・大卒以上 72.8%、3月以来の高水準>前月は72.1%、6ヵ月平均は72.4%
・全米 61.7%、3月以来の高水準>前月は61.4%、6ヵ月平均は61.3%

学歴別の失業率は労働参加率がまちまちだった割に、全て改善した。特に中卒以下が2.8ポイントと最も低幅が大きく、次いで大卒が1.4ポイント、大学院卒が1.1ポイント、高卒が1.0ポイントとなった。

・中卒以下 12.6%<前月は15.4%、6ヵ月平均は15.4%
・高卒 9.8%<前月は10.8%、6ヵ月平均は11.6%
・大卒以上 5.3%<前月は6.7%、6ヵ月平均は6.2%
・大学院卒以上 4.9%<前月は6.0、6ヵ月平均は5.2%
・全米 10.2%<前月は8.4%、6ヵ月平均は10.4%

チャート:学齢別の失業率

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(作成:My Big Apple NY)

――全体的に労働市場の改善を示し、特に平均時給が上昇に転じた点は明るい材料となりました。特に伸びが目立った業種のうち、小売は前月の下落をほぼ打ち消しています。一方で、輸送・倉庫も前月の小幅下落を完全に相殺しました。唯一、低下した業種は美容室やマッサージ・サロンなどを含まれるその他サービスのみ。一部の州で営業活動が制限された影響が色濃く出たのでしょうが、レストランを含む娯楽・宿泊で賃金が上昇したことと対照的です。経済活動が再開している州では、レストランなどの活動が順調に回復している状態を示唆します。

チャート:レストラン予約状況は改善基調

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(作成:My Big Apple NY)

人種、学歴で回復スピードはまちまちとなりました。特に、白人と黒人の失業率の格差は5.7ポイントと、2014年12月以来の水準へ拡大。黒人の失業率が過去最低を更新する直前の2019年8月はわずか2.0ポイントまで大幅縮小していただけに、人種間で再び格差が広がっていることを示唆します。

チャート:白人と黒人の失業率格差

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(作成;My Big Apple NY)

それより深刻な問題は学歴別で、労働参加率は中卒から大学院卒まで3月の水準近くまで回復しているにもかかわらず、失業率は中卒で未だ2桁で、高卒も高水準を維持。もちろん高学歴も3月以前の水準から依然として遠いとはいえ中卒や高卒ほどではなく、米議会からの追加支援策が待たれます。

(カバー写真:Matthew Roth/Flickr)

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