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米4月雇用統計:男女間、人種別、学歴別で明暗分かれる

by • May 8, 2021 • Latest News, NY TipsComments Off2592

U.S. Job Market Recovers Unevenly In Race, Gender, And Educational Attainment.

米4月雇用統計は、非常業部門就労者数(NFP)の伸びが急減速し、失業率が上昇した一方で、労働参加率が上昇したほか、平均時給が予想外に伸びるなど、希望の一筋が見えた結果となりました。明るい材料があったとはいえ、こちらでお伝えしたように、テーパリング観測後退につながったことでしょう。その裏側で、質的な改善はどうなったのか探ってみました。業種別の平均時給を始め、人種や学歴別などでどのような結果になったのか、詳しく見てみましょう。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.8%上昇の25.45ドル。前年比では1.2%上昇し、管理職を含めた全体の0.3%を超えた。業種別を前月比でみると、平均時給の伸び0.8%を上回ったのは、13業種中で6業種にとどまり、前月の9業種以下に。娯楽・宿泊が2.7%と最も力強く伸び、次いで小売が2.1%となり、3月に続きコロナ禍で対面サービスを余儀なくされ、且つ失業保険の上乗せを踏まえると低賃金での業種で上昇が目立つ。その他、鉱業・伐採や建設、教育・健康が好調だった。一方で前月に続き公益、そして情報は下落した。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

働き盛りの男性(25~54歳)の労働参加率は、全米が61.7%と前月の61.5%を上回り20年3月以来の水準へ改善したように、そろって上昇した。特に25~34歳の全米の男性に至っては、20年3月以来の水準へ切り返している。以下、季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 87.8%、6ヵ月ぶりの水準を回復>前月は87.6%、6ヵ月平均は87.6%
・25~54歳(白人) 89.1%、6ヵ月ぶりの水準を回復>前月は89.0%、6ヵ月平均は88.8%
・25~34歳 87.8%、20年3月以来の水準を回復>前月は87.3%、6ヵ月平均は87.1%
・25~34歳(白人) 88.9%、6ヵ月ぶりの水準を回復>前月は88.5%、6ヵ月平均は88.4%

チャート:働き盛りの男性、労働参加率はそろって5ヵ月ぶりの水準を回復

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(作成:My Big Apple NY)

労働参加率は25~34歳の働き盛りの女性は、前月に2020年3月以来の水準を回復した水準を保った。ただ、25~54歳の間では、20年7月以来の高水準から若干後退した。また、25~34歳も全体より改善ペースが加速し20年7月以来の水準へ切り返した。このように男女別では女性での労働参加率の改善ペースが鈍化し、16歳以上で男性が3月の67.3%→4月に67.6%、20歳以上の男性で3月の69.5%→4月に69.8%と上昇した一方で、女性は16歳以上で43に56.1%→4月に56.1%、20歳以上で3月に57.4%→4月に57.2%と横ばい、あるいは低下していた。65歳以上でも男性は22.8%→23.2%と上昇したが、女性は15.5%→15.2%と低下した。

・25~54歳 75.1%<前月は75.2%と2020年7月以来の水準を回復、6ヵ月平均は74.9%
・25~34歳 76.0%、前月と同水準で2020年3月以来の水準を回復、6ヵ月平均は75.3%

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で3.0%減の665万人(男性は314.9万人、女性は349.8万人)。過去最多をつけた20年4月でピークアウトし、20年3月以来の低水準となる。男女別では、10ヵ月連続で女性が男性を上回った。労働市場の需要と供給が引き続きマッチせず、雇用が進まない状況を表す。

チャート:就職を望む非労働力人口

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の労働参加率は、ヒスパニック系とアジア系以外が全て上昇した。黒人は2ヵ月続けて大幅上昇し20年3月の水準まで、あと0.6ポイントに接近、労働参加率の改善を牽引している。白人は20年5月以来の低水準から若干の上昇にとどまった。

・白人 61.5%>前月は61.4%、3ヵ月連続で20年5月以来の低水準、6ヵ月平均は61.5%
・黒人 61.2%、20年3月以来の水準を回復>前月は60.1%、6ヵ月平均は60.2%
・ヒスパニック 65.3%<前月は65.6%と5ヵ月ぶりの水準を回復、6ヵ月平均は65.3%
・アジア系 62.8%<前月は63.0%と20年8月以来の水準を回復、6ヵ月平均は62.6%
・全米 61.7%>前月は61.5%、6ヵ月平均は61.5%

チャート:人種別の労働参加率

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(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率は、黒人とヒスパニック系を除き改善。ヒスパニック系は前月と変わらなかったが、黒人は労働参加率の上昇に伴い9.7%へ上昇した。結果、黒人と白人の失業率格差は4.4ポイントと、5ヵ月ぶりの水準へ拡大した。トランプ前政権で記録した19年8月の1.8ポイントから程遠い水準を保つ。その他、アジア系は労働参加率の低下を受け失業率も下振れした。

・白人 5.3%<前月は5.4%と20年3月以来の低水準、6ヵ月平均は5.7%
・黒人 9.7%>前月は9.6%、6ヵ月平均は9.9%
・ヒスパニック 7.9%、前月に続き20年3月以来の低水準、6ヵ月平均は8.5%
・アジア系 5.7%<前月は6.0%、6ヵ月平均は6.2%
・全米 6.1%、20年5月以降で初の上昇>前月は6.1%、6ヵ月平均は6.4%

チャート:人種別の失業率

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チャート:黒人と白人の失業率格差

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(作成:My Big Apple NY)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、中卒以外で全て上昇した。特に高卒は0.5ポイント大きく上昇。半面、中卒は低下しており、対人サービス業の娯楽・宿泊や小売の伸びが前月以下にとどまった影響が及んだ可能性がある。

・中卒以下 44.2%、20年9月以来の低水準<前月は44.4%、6ヵ月平均は45.0%
・高卒 55.3%>前月は54.8%と20年4月以来の低水準、6ヵ月平均は55.2%
・大卒以上 72.2%、3ヵ月ぶりの水準を回復>前月は72.0%、6ヵ月平均は72.1%
・全米 61.7%、20年3月以来の水準を回復>前月は61.5%、6ヵ月平均は61.5%

学歴別の失業率は高学歴で低下が著しく、特に大学院卒は急激に低下し20年3月の水準を回復するまであと0.2ポイントに迫った。それ以外は上昇。とりわけ労働参加率が低下していた中卒以下で失業率が悪化している点は懸念材料。高卒は労働参加率が0.5ポイントも大幅に上昇した分、吸収しきれなかったとみられる。大学卒も含め20年3月以来の水準へ改善した。

・中卒以下 9.3%>前月は8.2%と20年3月以来の水準を回復、6ヵ月平均は9.3%
・高卒 6.9%>前月は6.7%と20年3月以来の水準を回復、6ヵ月平均は7.3%
・大卒 3.5%、20年3月以来の水準を回復<前月は3.7%、6ヵ月平均は3.4%
・大学院卒以上 2.7%、20年3月以来の水準に迫る<前月は3.6%、6ヵ月平均は3.6%
・全米 6.0%、20年3月以来の低水準<前月は6.2%、6ヵ月平均は6.5%

チャート:学歴別の失業率

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(作成:My Big Apple NY)

--4月の雇用統計を詳細にみると、①引き続き低賃金職の平均時給が上昇を牽引、人材不足で賃上げ圧力拡大か②労働参加率は前月と逆に女性で改善ペース鈍化③人種別の失業率は労働参加率が大幅改善した黒人で上昇④学歴別では労働参加率と失業率ともに大学院卒など高学歴で改善進む――といった実態が浮かび上がります。

つまり、引き続きコロナ禍で失われた娯楽・宿泊や小売など低賃金職での雇用改善が全体を支える一方で、こうした業種の採用活動がゆるみ、その影響が黒人の失業率悪化やヒスパニック系の失業率横ばい、そして女性の労働参加率の伸び悩みにつながったと想定されます。一方で、高学歴の労働参加率の改善と失業率の改善は、経済正常化に伴い企業における高度人材の需要改善のサインと解釈できるような。とにもかくにも、男女、人種、学歴で明暗がはっきり分かれた雇用統計となりました。パウエルFRB議長が4月FOMC後に発言したように、経済の回復はまだら模様なんですよね・・・。バイデン政権が掲げるインフラ計画”米国雇用計画”には法人税率の引き上げが含まれますが、米国人は労働市場の回復が鈍化において何を思うのでしょうか。

(カバー写真:Amtec Photos/Flickr)

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