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米1月雇用統計・NFPは予想以上の伸びも、ベンチマーク改定が一因?

by • February 4, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2684

Payrolls And Wage Growth Show Surprisingly Powerful Possibly Because Of New Seasonal Adjustment Factors .

<本稿のサマリー>

米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、前哨戦となる米1月ADP全国雇用者数が減少した結果に反し、好調な伸びを達成しました。オミクロン株の感染拡大が広がり、新規感染者数が一時は130万人を突破したものの、企業の積極的な賃上げと貯蓄率の低下を受け、労働市場から退出した人々が戻ってきたようです。

チャート:新型コロナウイルス感染者数、足元は30万人台へ減少

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(作成:My Big Apple NY)

もうひとつ、今回の結果に多大な影響を及した可能性がある要因があります。今回の雇用統計では例年通り、2017年以降のNFPデータの年次ベンチマーク改定に伴い修正されました。コロナ禍もあって、特に2020年3月から21年12月まで、大幅な修正を確認しています。どれほど大きかったかというと、21年11月は39.8万人と過去最大の修正幅を記録しました。これは経済ファンダメンタルズそのものというより、季節調整に伴うデータ改定が一因と言えます。さらに、年に一度の改定では人口推計の変更も影響した公算大です。

失業率は2020年2月以来の低水準となった前月の3.9%から4.0%へ上昇しました。しかし、潜在労働者が市場にカムバックしたため、労働参加率が3ヵ月連続で改善しただけでなく前月比0.3ポイントも上昇したためで、コロナ禍において最高を更新しました。さらに米失業保険給付上乗せが21年9月6日に終了した後、回復ペースが鈍かった長期失業者の割合も、今回は史上2番目の下げ幅を記録するなど、改善が著しい。平均時給は、労働参加率が改善し労働市場に人々が再参入しているにも関わらず、一段と上昇しました。12月に有効求人倍率が過去最高を遂げ、パウエルFRB議長率いるFedが1月FOMCで①3月の利上げ、②年内の保有資産の縮小――を示唆したように、賃上げ圧力が根強いことが分かります。

今回の結果を受け、米東部時間の午後12時5分時点で、米株の主要3指数はまちまちで、S&P500とナスダックはアマゾンやスナップチャットなどの好決算に支えられ上昇しています。米10年債利回りは大幅上昇し、一時1.932%と2019年12月以来の高水準に。3月FOMCでの50bp利上げ観測が高まったためで、織り込み度は32.7%と前日の14.3%から急上昇しています。ドルはまちまち、ドル円は115円前半へ小幅上昇したもののユーロドルは小幅高となっています。

今回の米1月雇用統計のポイントは、以下の通り。労働市場の質的な改善を確認する結果となった。

(労働市場にポジティブ)

・NFPは前月の伸びを下回ったが、堅調な伸びをキープ
・平均時給は前月比と前年比で高止まり(インフレの側面ではネガティブ材料)
・就業率は59.7%、20年3月以来の水準を回復
・労働参加率は62.2%、2020年3月以来の水準へ改善
・不完全就業率は7.1%、2000年11月の低水準
・長期失業者の割合は25.9%、20年9月以来の低水準

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・失業率は4.0%、20年2月以来の低水準だった前月から上昇(ただし労働参加率は改善しており、ポジティブな側面も)
・週当たり平均労働時間は、柔軟な雇用体系の受け入れや寒波の影響で前月以下

米1月雇用統計の詳細は、以下の通り。

米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比46.7万人増となり、市場予想の15.0万人増を大きく上回った。前月の51.0万人増(前月の改定前は19.9万人増、以下同じ)を下回ったものの、13ヵ月連続で増加した。

21年11~22年1月の3ヵ月平均は54.1万人増となった。2021年平均は53.7万人増と、2021年平均の55.5万人増を小幅に下回った。

就労者数は20年5月以降、今回で1,912万人の雇用を取り戻した。ただ、同年3~4月の記録的な減少(2,199万人)を打ち消し同年2月の水準を回復するには、あと約288万人必要となる。

チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと約288万人増加する必要あり

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(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比44.4万人増と市場予想の15.0万人増を上回った。前月の50.3万人増(21.1万人増から上方修正)を含め、13ヵ月連続で増加した。民間サービス業は44.0万人増、前月の44.1万人増(15.7万人増から上方修正)を下回った。

チャート:NFPは13ヵ月連続で増加、失業率は20年2月以来の低水準

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、11業種中で10業種が増加した。今回最も雇用が増加した業種は前月に続き娯楽・宿泊、続いて前月と同じく専門サービス、3位は小売が入った。一方で、公益のみ横ばいとなった。

なお、ベンチマーク改定の影響で、足元弱さが目立った業種は上方修正された。政府は就労者数が5ヵ月連続で減少していたが21年10月のみの増加、小売も直近の減少が全て増加に転じた。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種

・娯楽/宿泊 15.1万人増、13ヵ月連続で増加<前月は16.3万人増、6ヵ月平均は16.4万人増(そのうち食品サービスは10.8万人増>前月は10.4万人増、6ヵ月平均は10.4万人増)
・専門サービス 8.6万人増、9ヵ月連続で増加<前月は8.8万人増、6ヵ月平均は11.3万人増(そのうち派遣は2.6万人増、9ヵ月ぶりに減少<前月は2.9万人増、6ヵ月平均は3.9万人増)
・小売 6.1万人増、8カ月連続で増加>前月は4.0万人増、6ヵ月平均は3.9万人増

・輸送/倉庫 5.4万人増、21ヵ月連続で増加>前月は2.5万人増、6ヵ月平均は3.9万人増
・教育/健康 2.9万人増、21ヵ月連続で増加<前月は5.0万人増、6ヵ月平均は4.2万人増(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は1.6万人増、7ヵ月連続で増加<前月は3.2万人増、6ヵ月平均は2.3万人増)
・政府 2.3万人増、3ヵ月連続で増加>前月は0.7万人増、6ヵ月平均は1.1万人増

・情報 1.8万人増、16ヵ月連続で増加>前月は1.2万人増、6ヵ月平均は1.6万人増
・卸売 1.6万人増、13ヵ月連続で増加<前月は3.2万人増、6ヵ月平均は2.3万人増
・その他サービス 1.5万人増、13ヵ月連続で増加<前月は2.6万人増、6ヵ月平均は2.5万人増
・金融 0.9万人増、7ヵ月連続で増加<前月は1.7万人増、6ヵ月平均は1.7万人増

―横ばいの業種

・公益 横ばい>前月は0.1万人減、6ヵ月平均は0.1万人減

―減少した業種

・なし

財生産業は、前月0.4万人増となった。前月の6.2万人増(修正値)を大幅に下回った。オミクロン株の感染拡大や寒波の影響を受け、9ヵ月連続で増加した中で最も小幅な伸びにとどまった。業種別をみると、製造業が9ヵ月連続で増加した半面、建設は7ヵ月ぶりに減少。油価がオミクロン株の影響で高騰していたが、鉱業・伐採は11ヵ月ぶりに減少した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・製造業 1.3万人増、9ヵ月連続で増加<前月は3.2万人増、6ヵ月平均は3.5万人増
・建設 0.5万人減、7ヵ月ぶりに減少<前月は2.6万人増、6ヵ月平均は2.1万人増
・鉱業/伐採 0.4万人減(石油・ガス採掘は200人減)、11ヵ月ぶりに減少<前月は0.4万人増、6ヵ月平均は0.2万人増

チャート:1月のセクター別、就労者の増減

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:20年2月との比較、民間サービス部門は前月の2.0%減→1.6%減へ下げ幅を縮小した。ベンチマーク改定を受け、11凝集中で当時の水準を上回るのは5業種で、前月までの3業種(輸送・倉庫、情報、卸売)に加え、今回は小売と金融が増加に転じた財部門は前月の2.1%減→2.0%減とほぼ変わらなかった

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.7%上昇の31.63ドル(約3,620円)と、市場予想と前月の0.5%を上回り12ヵ月連続で上昇した。前年比は5.7%上昇し前月の5.0%(4.7%から上方修正)を超え、コロナ禍での経済活動停止直後の20年5月以来の高い伸びとなった。

チャート:平均時給は、根強い賃上げ圧力を示唆

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は前月と変わらず34.5時間となり、市場予想と前月の34.7時間を下回った。2006年以来の最長を記録した1月の35時間を12ヵ月連続で下回った。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は39.8時間と、前月の40.0時間を下回り、21年2月以来の低水準となった。コロナ禍で最高となった21年9月の40.4時間以下が続く。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.5時間と、前月まで2ヵ月連続での33.7時間から短縮、2006年以降で最長を記録した21年5月の33.9時間以下が続く。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が前月を下回る伸びだった上、週当たり労働時間が短縮したため、前月比0.2%減と11ヵ月ぶりにマイナスに転じた。平均時給が12ヵ月連続で上昇した結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.5%増だった。

失業率は4.0%と、市場予想と前月の3.9%を上回った。コロナ直前にあたる2020年2月の3.5%からやや遠のいた。失業者の増加が影響したが、これは労働市場の再参入者が増加したとみられ、労働力人口は前月比140万人増(0.9%増)となっていた。なお、自発的離職者数は減少した。

労働参加率は62.2%と、前月の61.9%を上回り20年3月(62.7%)以来の高水準となった。ただし、コロナ感染拡大直前の20年2月の63.4%以下で推移し続けている。

就業率は59.7%と、前月の59.5%を上回り20年3月(59.9%)以来の高水準だが、コロナ感染拡大直前の61.1%を下回ったままだ。

コロナ禍を理由に在宅勤務を行ったとする労働者の割合は15.4%とオミクロン株の感染拡大を受け前月の11.1%を上回り、21年5月以来の高水準だった。

コロナ禍が理由で過去4週間に職探しをしなかった労働者は1月に181万人と、コロナ禍以降で最低となった前月の112万人を超え、21年5月以来の高水準となった。しかし、労働参加率はそうした動きに反し、労働市場への再参入者の増加に押し上げられ改善した。

チャート:職探しをしなかった労働者は4ヵ月ぶりに増加も、労働参加率は3ヵ月連続で改善

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(作成:My Big Apple NY)

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.7%増(97.3万人増)の1億3,116万人だった。一方で、パートタイムは同0.5%増(13.6万人増)の2,582万人と、増加に転じた。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全就業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全就業率 採点-〇
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全就業率は7.1%と、前月の7.3%だけでなく20年2月(7.2%)も抜け、2000年11月の低水準に並んだ

チャート:不完全就業率は急速に改善、就業率も右肩上がり。

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(作成:My Big Apple NY)

2)長期失業者 採点-〇
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均値は24.6週と、前月の28.6週から短縮。失業期間の中央値も10.1週と前月の12.9週を下回り、20年5月以来の低水準へ急回復した。27週以上にわたる失業者の割合は25.9%と前月の31.7%から急低下し、1回目の失業保険給付上乗せが終了した2020年9月以来の低水準となった。下げ幅は、過去2番目の大きさとなる。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、1月に5.8ポイントと過去2番目の下げ幅に

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(作成:My Big Apple NY)

3)労働参加率 採点-〇
労働参加率は62.2%と前月の61.9%を超え、2020年3月以来(62.7%)の水準を回復した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。

4)賃金 採点-〇
今回は前月比0.7%と12ヵ月連続で上昇し、前年比は5.7%と20年5月以来の上昇率となった。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.6%上昇の26.92ドル前年比は6.9%の上昇と20年4月以来の高い伸びを記録、管理職を含めた全体を11ヵ月連続で上回った。

(カバー写真:Rawpixel Ltd/Flickr)

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