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米2月雇用統計:NFPは7ヵ月ぶりの強い伸び、賃上げ圧力は後退の兆し

by • March 4, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2654

Jobs Growth Hits Highest Since Last July, But Wage Growth Cools.

<本稿のサマリー>

米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、前哨戦となる米2月ADP全国雇用者数が好調だった結果よりも、労働市場の力強さを確認しました。主な理由は以下の4つと考えられます、

1)オミクロン株など、新規のコロナ感染者が減少
2)米国疾病予防管理センター(CDC)がマスク義務化を2月25日に解除する過程をたどるように、屋内活動でのワクチン義務化が解除され、顧客数の増加をサポート。
3)貯蓄率の低下
4)米連邦最高裁判所が1月に従業員100人以上の企業へのワクチン接種義務化を差し止め、労働参加率の上昇に寄与

チャート:新型コロナウイルス感染者数、足元は5万人台と21年11月以来の水準に減少

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(作成:My Big Apple NY)

失業率は前月の4.0%を下回り、2020年2月以来の低水準を更新。しかも、潜在労働者が市場にカムバックしたとみられ労働参加率は2ヵ月連続で改善するというおまけつきでで、コロナ禍において最高を更新しました。さらに米失業保険給付上乗せが21年9月6日に終了した後、回復ペースが鈍かった長期失業者の割合も、引き続き低下しています。一方で、平均時給は、労働参加率が改善し労働市場に人々が再参入するなか、前月比で横ばいにとどまりました。人手不足が深刻とされてきた娯楽・宿泊や輸送・倉庫の生産労働者・非管理職の平均時給が1月に下落したように、賃上げ圧力が後退しつつある可能性を示唆します。とはいえ、依然として前年比での平均時給は5%を超え、ウクライナ情勢の緊迫化を受けたさらなるインフレ高進懸念もあります。労働市場が堅調なだけに、パウエルFRB議長率いるFedは3月の議会証言の通り①3月の利上げ、②50bpを含めた積極的な利上げも選択肢、③年内の保有資産の縮小――といった方向へ進んでいくのでしょう。

今回の米2月雇用統計のポイントは、以下の通り。労働市場の質的な改善を確認する結果となった。

(労働市場にポジティブ)

・NFPの伸びは、7ヵ月ぶりの高水準
・過去2ヵ月分のNFPが上方修正
・失業率は3.8%、前月の4.0%を下回り20年2月以来の低水準
・労働参加率は62.3%、2020年3月以来の水準へ改善
・就業率は59.9%、20年3月以来に並ぶ
・週当たり平均労働時間は、前月超え

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・平均時給は前月比横ばい、前年比と合わせ市場予想以下(インフレの側面ではポジティブ材料)
・不完全就業率は7.2%、2020年2月以来の低水準だった前月の7.1%から上昇
・長期失業者の割合は、20年9月以来の低水準だった前月から上昇

米2月雇用統計の詳細は、以下の通り。

米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比67.8万人増となり、市場予想の40.0万人増を大きく上回った。前月の48.1万人増(46.7万人増から上方修正)を超え、7ヵ月ぶりの力強い伸びを達成。14ヵ月連続で増加した。

21年12月分の10.2万人の上方修正(51.0万人増→58.8万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で9.2万人の上方修正となった。21年12~22年2月の3ヵ月平均は58.2万人増となった。2021年平均の56.2万人増を小幅に下回った。

就労者数は20年5月以降、今回で1,989万人の雇用を取り戻した。ただ、同年3~4月の記録的な減少(2,199万人)を打ち消し同年2月の水準を回復するには、あと約210.5万人必要となる。

チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと約211万人増加する必要あり

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(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比65.4万人増と市場予想の37.8万人増を上回った。前月の44.8万人増(44.4万人増から上方修正)を含め、14ヵ月連続で増加した。民間サービス業は54.9万人増、前月の42.4万人増(44.0万人増から下方修正)を超えた。

チャート:NFPは14ヵ月連続で増加、失業率は20年2月以来の低水準

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、11業種中で9業種が増加しつつ、前月の全てに届かず。今回最も雇用が増加した業種は3ヵ月連続で娯楽・宿泊、続いて教育・健康、3位は前月2位だった専門サービスが入った。一方で、公益と情報はは横ばいとなった。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種

・娯楽/宿泊 17.9万人増、14ヵ月連続で増加>前月は16.7万人増、6ヵ月平均は16.6万人増(そのうち食品サービスは12.4万人増>前月は12.5万人増、6ヵ月平均は10.8万人増)
・教育/健康 11.2万人増、22ヵ月連続で増加>前月は3.3万人増、6ヵ月平均は5.9万人増(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は9.4万人増、8ヵ月連続で増加<前月は3.2万人増、6ヵ月平均は2.3万人増)
・専門サービス 9.5万人増、11ヵ月連続で増加>前月は7.3万人増、6ヵ月平均は11.3万人増(そのうち派遣は3.6万人増、11ヵ月連続で>前月は3.3万人増、6ヵ月平均は4.7万人増)

・輸送/倉庫 4.8万人増、22ヵ月連続で増加<前月は5.1万人増、6ヵ月平均は4.1万人増
・小売 3.7万人増、9カ月連続で増加<前月は6.9万人増、6ヵ月平均は4.4万人増
・金融 3.5万人増、8ヵ月連続で増加>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は2.0万人増

・その他サービス 2.5万人増、14ヵ月連続で増加>前月は0.5万人増、6ヵ月平均は2.2万人増
・政府 2.4万人増、4ヵ月連続で増加<前月は3.3万人増、6ヵ月平均は1.7万人増
・卸売 1.8万人増、13ヵ月連続で増加>前月は1.2万人増、6ヵ月平均は1.4万人増

―横ばいの業種

・情報 横ばい<前月は1.0万人増と16ヵ月連続で増加、6ヵ月平均は1.0万人増
・公益 横ばい>前月は0.1万人増、6ヵ月平均は横ばい

―減少した業種

・なし

財生産業は、前月比10.5万人増と10ヵ月連続で増加した。前月の2.4万人増(修正値)を大幅に上回り、21年3月以来の力強い伸びとなった。業種別をみると、建設が大幅増に転じたほか、製造業も10ヵ月連続で増加した。油価がウクライナ情勢悪化で100ドル台に迫る過程で、鉱業・伐採も12ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・製造業 3.6万人増、10ヵ月連続で増加>前月は1.6万人増、6ヵ月平均は3.6万人増
・建設 6.0万人増、8ヵ月連続で増加>前月は0.6万人増、6ヵ月平均は3.6万人増
・鉱業/伐採 0.9万人増(石油・ガス採掘は2,400人増)、12ヵ月連続で増加>前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.4万人増

チャート:2月のセクター別、就労者の増減

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:20年2月との比較、民間サービス部門は前月の1.6%減→1.1%減と下げ幅を縮小させた。11業種中で当時の水準を上回るのは民間サービスを含め5業種で、前月の4業種(小売、輸送・倉庫、情報、専門サービス)に加え、今回は金融が加わった。財部門は前月の1.8%減→1.3%減となり、建設が0.1%減とプラス圏に迫った。一方で、鉱業は引き続き2桁マイナスが続く。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比横ばいの31.58ドル(約3,630円)と、市場予想の0.5%並びに前月の0.6%を下回り、上昇トレンドを12ヵ月で止めた。前年比は5.1%上昇し、市場予想の5.8%並びに前月の5.5%(5.7%から下方修正)にも届かず、5ヵ月ぶりの低い伸びだった。

チャート:平均時給は、前年比は鈍化も引き続き根強い賃上げ圧力を示唆

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は34.7時間となり、市場予想と前月の34.6時間を上回った。ただし、2006年以来の最長を記録した2021年1月の35時間を13ヵ月連続で下回った。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.4時間と、前月の39.9時間を上回り、コロナ禍で最高となった21年9月に並んだ。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.6時間と、前月の33.5時間を上回ったが2006年以降で最長を記録した21年5月の33.9時間以下が続く。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が前月を上回る伸びだった上、週当たり労働時間が延びたため、前月比0.8%増と増加に転じた。平均時給は上昇を12ヵ月で止めたが、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.8%増だった。

失業率は3.8%と、市場予想の3.9%と前月の4.0%を下回った。コロナ直前にあたる2020年2月の3.5%にまた一歩、近づいた。失業者の24.3万人減少、離職者数も小幅増加にとどまり失業率を押し上げることはなかった。

労働参加率は62.3%と、前月の62.2%を上回り20年3月(62.7%)以来の高水準となった。コロナ感染拡大直前の20年2月は63.4%である。労働力人口は前月比304万人増と増加トレンドを維持した。

就業率は59.9%と、前月の59.7%を上回り20年3月の水準を回復した。コロナ感染拡大の20年2月は、61.1%となる。

コロナ禍を理由に在宅勤務を行ったとする労働者の割合は13.0%と、オミクロン株の感染拡大を受け前月の15.4%を下回った。

コロナ禍が理由で過去4週間に職探しをしなかった労働者は2月に123万人と、前月の181万人から減少。つれて、労働参加率は上昇した。

チャート:職探しをしなかった労働者は減少トレンドへ戻し、労働参加率は2ヵ月連続で改善

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(作成:My Big Apple NY)

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.5%増(64.2万人増)の1億3,181万人だった。一方で、パートタイムは同0.1%減(1.6万人減)の2,580万人と、減少に転じた。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全就業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全就業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全就業率は7.2%と、2020年2月以来の低水準となった前月の7.1%を小幅ながら上回った。

チャート:労働参加率は2ヵ月連続で上昇し、就業率も右肩上がり

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(作成:My Big Apple NY)

2)長期失業者 採点-△
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均値は26.6週と前月の24.6週を超えたが、業期間の中央値も9.6週と前月の10.1週を下回り、20年3月以来の低水準となった。27週以上にわたる失業者の割合は26.7%と、1回目の失業保険給付上乗せが終了した2020年9月以来の低水準となった前月の25.9%から小幅上昇した。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は2月に上昇も、小幅にとどまる

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(作成:My Big Apple NY)

3)労働参加率 採点-〇
労働参加率は62.3%と前月の62.2%を超え、2020年3月以来(62.7%)の水準を回復した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。

4)賃金 採点-△
今回は前月比横ばいと上昇トレンドを12ヵ月で止めた。前年比は5.1%と、5ヵ月ぶりの低い伸びに。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.3%上昇の26.94ドル前年比は6.7%の上昇と下方修正された1月の伸びと並びつつ、20年5月以来の高い伸びを保った。前月と前年比の伸びは、管理職を含めた全体を12ヵ月連続で上回った。

(カバー写真:Save the Dream/Flickr)

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