Five-Napkin-Burger

NYレストラン事情に異変!「信長協奏曲」もビックリな戦国時代に突入

by • October 28, 2014 • Latest News, Restaurant ReviewsComments Off7829

Zagat Survey 2015 : Casual Dinning Is Taking NYC By Storm.

ニューヨーク市内のレストランといえば、弱肉強食を地で行く激戦地。熾烈な競争は毎年厳しさを増し、開店から5年以内に店を畳む確率はどの都市をも凌ぐと言われて久しい。

ドラマ「信長協奏曲」も真っ青な戦国時代で、生き残りをかけるNYレストラン。ここにきて、さらなる異変が生じています。ザガットの「2015年版:NY市レストラン・サーベイ」によると、レストラン新規開店数は160を数えリーマン・ショック以前にあたる2007年以来で最高を遂げました。

それだけではありません。ハリウッド映画の定番よろしく良い知らせの後には悪いニュースが続くもので、閉店数も82に達していたのです。2013年の42店舗から、倍近く跳ね上がっていました。

ザガットの共同創立者であるティム・ザガット氏は、結果に対し「新規開店と店じまいのスプレッドは、2005年以来で最大」と振り返ります。戦犯は、ズバリ賃料。ザガット氏も「恐らく、レストラン賃料の引き上げが閉店を押し上げて来たのだろう。数年以内に、産業全体に影響を及ぼしうる」と不気味な未来予想図を描いていました。そういえば、筆者が贔屓にしていたうどんの「温屋」も家賃の高騰であえなく看板を下ろしてしまったんですよね。有名どころでいえば、カリスマ・シェフのゴードン・ラムジー氏の名を冠したロンドン・ホテル内のレストランも、2012年にミシュラン2つ星に輝きながら2013年に失いクローズと相成りました。

逆に、ニューヨーカーの家計状況に死角はないのでしょうか。

ザガット・サーベイによると、ニューヨーカーはランチ・ディナー含め1週間当たり4.7回外食していました。前年の4.9回を小幅に下回っております。1人当たり夕食のお値段は、48.15ドル(5200円)。こちらも、前年の48.56ドル(5240円)にわずかながら届いていません。全米平均も同様で、今年は39.40ドル(4260円)と前年の40.53ドル(4380円)以下にとどまりました。チップは19.4%ですから15−20%のレンジ上限となり、意外にも気前の良さが伺えます。しかも、前年の18.8%から上昇しているとあって頼もしい限り。

チップを弾んだのは、自炊する回数が増えた反動かもしれません。1週間に自炊する回数は5.7回で、前年の5.5回を超えました。逆に全米平均は6.8回と、前年の6.9回を若干下回っております。

NY市内で ”トップ・フード” の栄冠に輝いたレストランは、ミシュランでも3つ星を戴いた「ル・バーナディン(Le Bernadin)」で13回目、6年連続の快挙を果たしております。 ”インテリア” では、ミシュラン2つ星に格下げされた「ダニエル(Daniel)」が「アジアート(Asiate)」の7連覇を阻止。 ”最も人気のあるレストラン” では前年まで「ル・バーディナン」が2連覇を飾ったものの、今回はミシュラン1つ星の「グラマシー・タバーン(Grarmercy Tavern)」が奪取。ミシュランでこそ評価されなかった「寿司 なかざわ(Sushi Nakazawa)」、ザガットでは ”新規オープン” で1位に君臨しています。

ル・バーナディン、1986年開店の老舗にしてシーフードの最高峰。
Le_Bernardin_09
(出所:blog.archpape)

”最も人気のあるレストラン” では、景色が様変わりしております。もはや、ファイン・ダイニングの独壇場とはいかなくなりました。

2位こそ「ル・バーナディン(Le Bernadin)」だったものの、3位には「ファイブ・ナプキン・バーガー(5 Napkin Burger)」が見参、前年の26位から驚異のジャンプアップを遂げています。日本の皆さまにもお馴染み「シェイク・シャック(Shake Shack)」も、前年の25位から4位へ急浮上。その他「セカンド・アベニュー・デリ(2nd Ave. Deli)」も32位から14位、メグ・ライアンが映画「恋人達の予感(When Harry Met Sally)」でオーガズムを演じた舞台「カッツ・デリカテッセン(Katz’s Delicatessen)」も27位から18位へ大きく順位を上げてきました。

カジュアル・ダイニング躍進の陰で、高級レストランの名店が煽りを受けています。ミシュラン3つ星の「パ・セ(Per Se)」は14位から28位へ、同じく3つ星の「イレブン・マディソン・パーク(Eleven Madison Park)」は6位から23位へ、「ザ・モダン(The Modern)」も21位から34位へ陥落しました。まさにレストラン戦国時代、下剋上の風が吹き荒れています。

今回もうひとつの特徴として、ブルックリン勢の台頭が挙げられます。ザガットが評価するレストラン数は過去最高の340店舗に達し、前年比では28%も増加していました。ヒップスターの聖地ウィリアムズバーグの隆盛によるとことが大きく、アメリカ人が居酒屋をオマージュした「チェリー・イザカヤ(Cherry Izakaya)」も新参者としてザガットに加わっています。

こうしてみると、1)ローカル愛、2)手頃なお値段、3)敷居が低い——レストランへの傾倒が読み取れます。背伸びせずに気軽に食事を楽しもうとするのは、ニューヨーカーの懐事情を反映しているかのようです。

(カバー写真:Crave the date)

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