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米10−12月期GDP改定値、予想外の上方修正も3月利上げナシ

by • February 26, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off3380

Q4 GDP Revised Up Thanks To Inventories And Net Export.

米10 −12月期国内総生産(GDP)改定値は前期比年率1.0%増と、市場予想の0.4%増を上回った。速報値の0.7%増から上方修正。前期の2.0%増以下にとどまり、3期ぶりの低水準は変わらず。7−9月期の2.0%増、4−6月期の3.9%増、1−3月期の0.6%増と合わせ年初来の成長率は1.9%増と、2015年12月米連邦公開市場委員会(FOMC)の2015年末予想レンジ中央値には届いていない。10−12月期のGDPは前年同期比で1.9%増と、速報値の1.8%増から上方修正。前期の2.1%増を下回り、2014年1−3月期以来の低水準だった。ただし2015年通期のGDPは前年比で2.4%増となり、2014年と同じく2010年以来で最大だった。

GDPの7割を占める消費は2.0%増と、速報値の2.2%増から下方修正された。前期の3.0%増にも届かず。ホリデー商戦を追い風に2006年1−3月期以来の高水準に達した2014年10−12月期の4.3%増を下回る水準を維持した。GDPの寄与度は1.38%と、速報値の1.46%及び前期の2.04%を下回った。

(個人消費の内訳)
・耐久財 3.4%増、3期ぶりの低水準<速報値は4.3%増、前期は6.6%増
・非耐久財 1.2%増、3期ぶりの低水準<速報値は1.5%増、前期は4.2%増
・サービス 2.1%増>速報値は2.0%増、前期は2.1%増

金融危機後、前期比年率には4%の壁が立ちはだかる。

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(作成:BEAよりMy Big Apple NY)

民間投資は、上方修正された。ただし企業の設備投資に含まれる機器投資が押し上げており、その他は下方修正が目立つ。住宅投資や無形資産も、速報値から引き下げられた。

(民間投資の内訳)
・民間投資 0.7%減、2期連続で減少>速報値は2.5%減、前期は0.7%減
・固定投資 0.1%増、2012年7 −9月期以来で最低の伸び<速報値は0.2%増、前期は3.7%増
・非住宅 1.9%減、2012年7 −9月期以来で初の減少<速報値は1.8%減、前期は2.6%増

・構造物投資 6.6%減、2期連続で減少<速報値は5.3%減、前期は7.2%減と2012年10−12月期以来の低水準
・機器投資 1.8%減、4期ぶりに減少<速報値は2.5%減、前期は9.9%増
・無形資産 1.3%増<速報値は1.6%増、前期は0.8%減と2013年4−6月期以来の減少
・住宅投資 8.0%増、5期ぶりの低水準<速報値は8.1%増、前期は8.2%増

在庫投資が速報値から上方修正され、GDPの寄与度はマイナス0.12%ポイントと速報値の0.45%からマイナス幅を縮小させた。純輸出の寄与度も、マイナス幅をせばめている。政府支出は連邦政府が下方修正された上に、州・地方政府が減少に転じ3期ぶりにマイナスに振れた。

(その他)
・純輸出の寄与度 マイナス0.25%ポイント>速報値は0.47%ポイント、前期はマイナス0.26%ポイント
・在庫投資 817億ドル増、1年ぶりの低水準>速報値は686億ドル増、前期は855億ドル増

(政府支出)
・政府支出 0.1%減、3期ぶりに減少<速報値は0.7%増、前期は1.8%増
・連邦政府 2.2%増<速報値は2.7%増、前期は0.2%増(州政府・地方政府は1.4%減と速報値の0.6%減から下方修正、3期ぶりに減少)

GDPデフレーターは前期比年率0.9%上昇し、速報値の0.8%から上方修正された。前期の1.3%からは鈍化し、3期ぶりの低水準。1年ぶりに2%台を回復した4−6月期の2.1%を下回る水準を保った。PCEデフレーターも0.4%上昇し、速報値の0.1%から引き上げられた。もっとも前期の1.3%以下で、3期連続でプラスだったなかで最も小幅にとどまる。コアPCEデフレーターは1.3%上昇し速報値の1.2%を超えたが、こちらも前期の1.3%を下回った。2010年10−12月期以来の水準へ沈んだ1−3月期の1.0%を上回りつつ、FOMCのインフレ目標値「2%」から距離を開けたままだ。

JPモルガンのダニエル・シルバー米エコノミストは、結果を受け「在庫投資や純輸出が押し上げており、特に在庫投資の上方修正は1−3月期の伸び縮小につながるため必ずしもグッド・ニュースではない」と振り返る。GDPの要である個人消費が下方修正されたほか、「可処分所得の伸びが速報値の前期比年率3.6%増から3.2%増へ引き下げられたため、貯蓄率も従来の5.4%から5.1%へ鈍化した」という。在庫投資の増加幅縮小の可能性が高まった上、比較的高い水準にあるとはいえ消費ののりしろが狭まる公算で、「当方の米1−3月期GDPの予想値2.0%増に下振れリスクが浮上した」とまとめた。

——米10−12月期GDP改定値が予想外に強かったとはいえ、肝心要の個人消費や企業の設備投資は下方修正されており、将来の成長に疑問が残る内容です。米株が買いで反応した一因は、リセッションのリスク後退よりゴールディロックスの継続を見込んだかのよう(追記:引け値では下落)。ひとまず、3月利上げはおろか6月利上げも困難となってきました。以前お伝えしたようにGDPの発表スケジュールが微妙で、市場のボラティリティが高い時にあえて危険を冒す必要はなさそうです。

(カバー写真 : Mirko Tobias Schäfer/Flickr)

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