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米6月雇用統計・NFP、貿易戦争懸念をよそに2ヵ月連続で20万人超え

by • July 6, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2605

U.S. Enjoys Healthy Jobs Growth Despite Trade War Risks.

米6月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比21.3万人増となり、市場予想の19.5万人増を上回った。前月の24.4万人増(22.3万人増から上方修正)に届かなかったとはいえ、2ヵ月連続で20万人超えを遂げている。トランプ政権が3月23日から鉄鋼・アルミ関税を発動し、6月1日からは欧州連合(EU)、カナダ、メキシコも対象に含めたが、好調な伸びを維持した。過去2ヵ月分は4月分が1.6万人の上方修正(15.9万人増→17.5万人増)だったため、合計3.7万人の上方修正となった。4~6月の3ヵ月平均は21.1万人増で、2017年の平均値16.9万人増を上回ったままだ。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比20.2万人増と市場予想の19.0万人増を上回った。前月の23.9万人増(21.8万人増から下方修正)に続き、こちらも2ヵ月連続で20万人乗せを果たす。民間サービス業は14.9万人増と、前月の18.8万人増(17.1万人増から上方修正)を下回った。

サービス部門のセクター別動向では、5月に続き教育・健康がトップとなり、2位は専門サービスで5月の3位から上昇、3位は娯楽・宿泊が前月の4位から返り咲いた。なお5月に3位に入った小売は、大幅減に転じた。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・教育・健康 5.4万人増>前月は4.0万人増、6ヵ月平均は4.1万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は3.5万人増=前月は3.5万人増、6ヵ月平均は3.5万人増)
・専門サービス 5.0万人増>前月は4.3万人増、6ヵ月平均は4.9万人増
(そのうち、派遣は0.9万人増>前月は0.5万人減、6ヵ月平均は0.7万人増)
・娯楽・宿泊 2.5万人増<前月は2.8万人増、6ヵ月平均は1.8万人増
(そのうち食品サービスは1.6万人増<過去12ヵ月平均は1.8万人増)

・その他サービス 1.6万人増>前月は1.3万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・輸送・倉庫 1.5万人増<前月は1.8万人増、6ヵ月平均は1.5万人増
・政府 1.1万人増>前月は0.5万人増、6ヵ月平均は0.2万人増

・金融 0.8万人増<前月は1.7万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
・卸売 0.3万人増<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.3万人増
・情報 ±0万人=前月は±0万人、6ヵ月平均は0.1万人減

・公益 ±0万人>前月は0.1万人減、6ヵ月平均は±0万人
・小売 2.2万人減<前月は2.5万人増、6ヵ月平均は1.2万人増

財生産業は前月比5.3万人増と、前月の5.1万人増(4.7万人増から上方修正)を上回り、4ヵ月ぶりの高水準。11ヵ月連続で増加した。製造業は11ヵ月連続で増加し、財部門を牽引。原油価格が2014年11月以来の75ドル超えを迎える過程で、鉱業は8ヵ月連続で増加したものの詳細を紐解くと石油・ガス採掘は減少に反転。建設が3ヵ月連続で増加したものの、建設資材コストの上昇が影響したためか伸びが鈍化した。

(財生産業の内訳)

・製造業 3.6万人増>前月は1.9万人増、6ヵ月平均は2.6万人増
・建設 1.3万人増<前月は2.9万人増、6ヵ月平均は2.5万人増
・鉱業・伐採 0.4万人増(石油・ガス採掘は200人の減少に反転)>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.7万人増

NFP、2ヵ月連続で20万人超え。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.2%上昇の26.98ドル(約2,970円)となり、市場予想と前月の0.3%を下回った。前年比では2ヵ月連続で2.7%上昇、市場予想の2.8%に届かなかった。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と市場予想と並び、4ヵ月連続で変わらず。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.5時間と、前月の40.6時間を下回った。4月は2006年7月以降で最高となる40.7時間を記録していたが、2ヵ月連続で短縮した格好だ。

失業率は4.0%と、2000年4月以来の水準となった市場予想と前月の3.8%から上昇に転じた。3月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2018年見通しも上回る。労働参加率は62.9%と、4ヵ月ぶりの低水準だった前月の62.7%から上昇した。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。

失業者数は前月比49.9万人増加した。就労者数の増加幅である10.2万人を超え、且つ労働参加率の上昇も重なり、失業率は2000年4月以来の低水準から上昇に転じている。就業率は60.4%と、2~3月と5月に続き2009年1月以降で2番目の高水準を示した。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で微減の1億2,866万人と、3ヵ月ぶりに減少した。パートタイムは1.2%増の2,703万人と、3ヵ月ぶりに増加。増減数ではフルタイムが8.9万人減、パートタイムは14.5万人増だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数が増加したほか平均労働時間も維持されたため、前月比で0.2%上昇し5ヵ月連続でプラスを保った。平均時給が上昇を保った結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)も前月比で0.3%上昇、こちらも5ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.8%と、2001年5月以来の低水準だった前月の7.6%を上回った。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は474.3万人と、前月の494.8万人から減少したが、縁辺労働者が増加した。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は4.9%と、金融危機前の水準となる前月の4.6%を上回った。

2)長期失業者 採点-△
失業期間の中央値は8.9週と、前月の9.2週を下回り2008年5月以来の低水準だった。平均失業期間は21.3週と、2009年3月以来で最短を記録。しかし27週以上にわたる失業者の割合は23.0%と、2008年8月以来の20%割れを遂げた前月の19.4%から上昇に反転。労働市場に復帰した人々の失業期間が追加された可能性がある。

3)賃金 採点-△
今回は前月比0.2%の上昇と年初来で最も強い伸びとなった前月の0.3%に届かず。前年比も前月に続き2.7%上昇した程度。生産労働者・非管理職の平均時給も前月比0.2%上昇の22.62ドルと全従業員の伸びに並んだ。前年比は2.7%上昇し、こちらも全従業員の水準に並んだが。前月に達成した2009年以来の高水準となる2.8%以下にとどまる。なお、民間における生産・非管理職の割合は82.4%を占める。

平均時給、前年比で漸く生産・非管理職の労働者が2009年7月以来の高水準。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-○
労働参加率は62.9%と前月の6.27%から上昇、2014年3月以降で2番目の高水準だった2月の63.0%に接近した。とはいえ、金融危機以前の水準である66%台は未だ遠い。軍人を除く労働人口は0.4%増の1億6,214万人と、2ヵ月連続で増加。非労働人口は0.4%減の9,550万人と4ヵ月ぶりに減少した。

――さて今回、失業率が上昇した一方で労働参加率が改善しました。気になる働き盛り世代の労働参加率は、どれほど上昇したのでしょうか?

lpj

はい、6月は労働参加率が5月の81.8%→82.0%、失業率もつれて3.1%→3.3%とそれぞれ0.2%ずつ上昇し、全体(労働参加率:5月の62.7%→62.9%、失業率:5月の3.8%→4.0%)と整合的です。こうした事実と合わせ、総合的に判断すると米6月雇用統計のポイントは3つ。

1)労働人口に増加余地あり
→働き盛り世代の労働市場復帰は喜ばしいものの、エコノミストが指摘するような労働市場逼迫の深刻化に反する内容で、労働人口には増加余地があることを示します。

2)平均時給の上振れリスクは低い
→今回、平均時給はまさに労働参加率の改善に合わせ、鈍化しましたよね。労働市場が想定ほどひっ迫していないのならば、急速な賃金インフレのリスクは限定的と言えるでしょう。

3)Fedはビハインド・カーブではない
→賃金インフレが加速しないのであれば、利上げを急ぐ必要はなく、景気減速局面ではFOMC議事要旨で示唆したように2019年内の利上げ打ち止めという選択肢を行使できる。パウエルFRB議長は貿易戦争のリスク台頭を前にホッと胸をなでおろした?

(カバー写真:Michael Vadon/Flickr)

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