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9月対米証券投資:米国債保有高の主要国リスト圏外はこの国

by • November 28, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2221

This Country Loses The Major Foreign Treasury Holder Status  In September.

9月対米証券投資は、75億ドルの買い越しとなった。前月の771億ドル(修正値)を含め、3ヵ月連続での資金流入となる。民間が210億ドル買い越し3ヵ月連続で流入した一方で、海外中銀を含む公的機関は136億ドル売り越し、過去5ヵ月間で4回目の流出に転じた。海外投資家の米国債投資は116億ドルの売り越しと、2015年6月以来で最大だった前月の631億ドルの買い越しから転換した。民間が41億ドル買い越し3ヵ月連続の流入した一方で、海外の公的機関が157億ドル売り越し、過去6ヵ月間で5回目の流出となった。

期間中、トランプ政権は通商301条を根拠に500億ドルの対中追加関税を発表、7月6日に第1弾として340億ドル、8月23日に第2弾として160億ドル踏み切った。中国も同等の措置を講じるなか、9月には2,000億ドルへ拡大する方針を表明。中国も600億ドルの追加的報復措置を取る構えをみせ、米中間で通商上の緊張が高まった。その間、NAFTA再交渉で米国がメキシコと合意するなど、欧州に続き貿易摩擦が後退する場面も。一方で、米指標が良好で米10年債利回りが10月にかけ約7年ぶりの水準へ上昇する過程で、米国とトルコの米国人牧師をめぐる対立が激化し、エマージング通貨安の展開を迎えた。

国別での米国債保有高トップ5動向は、8~9月と同じ顔触れだった。順位は、9月と入れ替わりなし。ブラジルは引き続きアイルランドを抜いて3位となる。なおアイルランドは租税回避地として知られ、米国のIT企業や製薬企業などが拠点を置き、海外留保利益を米国債として保有してきた経緯がある。しかし、レパトリ減税が税制改革法案に盛り込まれ、米国証券保有高が減少するか注目だ。

1位 中国 1兆1,514億ドル(2017年6月以来の低水準)、137億ドルの売り越し、4ヵ月連続で流出
2位 日本 1兆280億ドル(2011年10月以来の低水準)、19億ドルの売り越し、2ヵ月連続で流出
3位 ブラジル 3,170億ドル(前月は過去最高)、8億ドルの売り越し、前月から流出に反転
4位 アイルランド 2,904億ドル(2016年12月以来の低水準)、254億ドルの売り越し、3ヵ月ぶりに流出
5位 英国 2,763億ドル、37億ドルの買い越し、2ヵ月連続で流入

トップ5の米国債保有高の推移。

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(作成:My Big Apple NY)

――中国は米国債を4ヵ月連続で売り越しつつ、15ヵ月連続で保有高トップの座を堅持しました。米国債保有高2位の日本は2ヵ月連続で流出し、2011年10月以来の低水準を保ちます。税制改革法案成立で駐米企業の短期債証券の売却とレパトリが予想されるなか、アイルランドは今回254億ドルの売り越しと、流出額で1位に。結果、米国債保有高は約2年ぶりの水準まで減少しています。こうなると、7~9月期に米国へのレパトリ額がさらに拡大する公算で、経常収支の結果が待たれますね。その半面、米7~9月期実質GDP成長率の設備投資を表す機器投資などが鈍化しているのは、気掛かりです。

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(作成:My Big Apple NY)

気になる米国債保有高の主要国リスト(300億ドル以上)ですが、9月は前月から1ヵ国へって31ヵ国に逆戻りしました。これまで5月にロシア、6月にトルコが外れ、5月に主要国入りしたチリも以降は圏外。8月にイスラエルが入って32ヵ国に増えたものの、9月は危険水域にあったフィリピンが遂に脱落しています。

こちらでご紹介したように、世界の外貨準備高における構成比率でドルは2018年4~6月期には62.3%と5年ぶりで最低でした。米国債保有高の主要国リスト対象国の減少が、さらなるドル比率の低下を促すリスクを残します。サウジアラビアやイスラエルなど親米国が直近で米国債を積み増していますが、果たしてどうなるでしょうか?

(カバー写真:Bernard Spragg. NZ/Flickr)

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