ISM Manufacturing Sentiment Rebounds, While Construction Spending Weak.
米11 月ISM製造業景況指数、米11月マークイット製造業PMI確報値、米10月建設支出をおさらいしていきます。
米11月ISM製造業景況指数はと59.3と、市場予想の57.5を上回った。6ヵ月ぶりの低水準だった前月の57.7から改善。ただ、8月につけた2004年5月以来の高水準である61.3以下を保つ。トランプ政権が鉄鋼・アルミ関税を3月に発動し6月からはEU、カナダ、メキシコに拡大、さらに通商法301条を根拠とした対中関税措が7月6日発動。その裏でEUとは米欧首脳会談で7月に関税撤廃交渉開始で合意し、8月にはメキシコとのNAFTA再交渉で合意した。ただし中国に対しては厳格な姿勢を保ち、9月24日に自動車関税や対中知財関税として追加で2,000億ドル相当を発動、12月1日の米中首脳会談で追加関税措置は90日間猶予となったが、予断を許さない状況が続く。
内訳をみると、追加関税の影響が現れつつあり新規受注と新規輸出受注の低下が著しい。詳細は、以下の通り。
・生産 60.6>前月は59.9と3ヵ月ぶりの低水準、6ヵ月平均は61.4
・新規受注 62.1>前月は57.4と2017年4月以来の低水準、6ヵ月平均は61.7
・雇用 58.4>前月は56.8、6ヵ月平均は57.5
・在庫 52.9>前月は50.7、6ヵ月平均は52.7
・新規輸出受注 52.2=52.2と2016年11月以来の低水準、6ヵ月平均は54.5
・入荷遅延 62.5<前月は63.8、6ヵ月平均は63.7
・受注残 56.4>前月は55.8、6ヵ月平均は56.7
・仕入れ価格 60.7、2017年6月以来の低水準<前月は71.6、6ヵ月平均は70.2
ISMのティモシー・フィオーレ会長は、結果を受け18業種別でビジネス拡大を報告したのは13業種とし、前月と変わらずと報告した。新規輸出受注は「前月と同じく2016年11月以来で最低」だったが、「6業種中4業種が拡大を報告し、前月から1業種減少した」という。一方で、「仕入れ価格も大きく低下した」と指摘。新規受注の改善などを受け「企業の需要は強い」と結んだ。景況感は引き続き明るいものの、回答者は足元の流れを維持し仕入れ価格の上昇や輸出動向、サプライチェーンへの影響などをにらみ、追加関税措置への懸念を寄せたという。
▽米11月IHSマークイット製造業PMI・確報値、税制改正後の上昇を相殺
米11月IHSマークイット製造業PMI確報値は55.3と、市場予想と速報値の55.4に届かなかった。前月の55.7も下回り、2月と7月の水準に並び年初来で最低となる。内訳をみると、新規受注が6ヵ月ぶりの水準へ上昇し、雇用も年初来で2番目の高水準だった。仕入れ価格も、高水準を保つ。その半面、生産や見通し指数が伸び悩んだ。
クリス・ウィリアムソン首席ビジネス・エコノミストは、今回の結果を受け「低下したとはいえ、新規受注は6ヵ月ぶりの高水準で、製造業は需要に見合うよう稼働率を引き上げている」と評価した。ただし、米10~12月期の実質GDP成長率につき「2.5%増」と予想、4~6月期、7~9月期の3%超のペースからの鈍化を見込む。2019年についても、「生産が前年を上回ると見込む企業は全体の36%に対し前年以下の回答は3%」と明かしつつ、「成長は頭打ちを迎え、楽観見通しも後退している」との見方も寄せた。
ISM製造業景況指数が小幅鈍化した一方、マークイット製造業PMIは小幅改善。
▽米10月建設支出、民間が弱く2ヵ月連続で減少
米10月建設支出は前月比0.1%減の年率1兆3,088億ドルとなり、市場予想の0.4%増を下回った。前月の0.1%減(0%増から下方修正)を含め、2ヵ月連続減少している。建設支出の前年比は4.9%増と増加トレンドを維持しつつ、5ヵ月ぶりの低い伸びにとどまった。
内訳をみると、住宅が0.5%減と前月の0%から転じた。逆に、非住宅は0.1%増と前月の前月の減少から改善した。
民間は前月比0.4%減と、前月の0.4%増を打ち消した。住宅が0.5%減と減少に転じたほか、非住宅も0.3%減と3ヵ月ぶりに減少している。公共は0.8%増と、前月の1.5%減から改善、過去4ヵ月間で3回目の増加となった。住宅が2.0%増と前月の8.4%減から回復したほか、非住宅も0.7%増と増加に転じた。
建設支出、2018年に入って伸び悩み傾向。
――製造業のセンチメントはISMとマークイットでまちまちながら、拡大基調を確認しました。特にISMもマークイットも、雇用が前月を上回った点は米11月雇用統計を控え心強い。その半面、仮に平均時給が前年比で3%超えを続けるようでは、追加関税措置への影響やBREXIT交渉の行方など不確実性の高まりを受けてタカ派姿勢を巻き戻してきたFedに、金融政策運営での課題を残すことになるでしょう。
建設支出は民間で弱く、住宅市場の減速や構築物投資を通じた設備投資の鈍化を反映したとみられます。住宅市場は価格の高騰や金利上昇はもとより、税制改革法案成立に伴う住宅ローンの利払い控除対象の借入額の上限が100万ドルから75万ドルに引き下げられた影響で、高級住宅を中心に購入意欲を削いだ面も拭えず。在庫増加に伴う価格調整が進まない限り、成長を力強く下支えする可能性は低いと言わざるを得ません。
(カバー写真:chumlee10/Flickr)
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