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米8月鉱工業生産、自動車以外の製造業が幅広く改善

by • September 18, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off1610

Industrial Production Increases Strongly As Manufacturing Rebounds.

米8月鉱工業生産と、米9月NAHB住宅市場指数をおさらいしていきます。

米8月鉱工業生産指数は前月比0.6%上昇し、市場予想の0.2%を上回った。前月の0.1%の低下(0.2%の低下から下方修正)以下となり過去4ヵ月間で3回目のプラスとなる。製造業は0.5%上昇し、市場予想の0.2%を上回った。上半期は設備投資の鈍化を確認し、FOMCでも懸念要因として取り上げられていたが、改善の兆しが現れた格好だ。鉱工業生産指数の前年比では0.4%上昇、原油底打ちを経てプラス基調に転じた2016年12月以降で2番目に低い伸びとなった。

稼働率は77.9%と、市場予想の77.6%を上回った。2017年10月以来の低水準だった前月の77.5%から改善している。法人税減税やレパトリなどの効果が税制改革実施後2年目を迎え剥落する上、米中間の貿易摩擦が激化するなか、過去平均の80%台を回復できないままだ。

鉱工業生産の前年比はプラス基調を維持しつつ2016年12月以降で2番目に低い伸び、製造業は2ヵ月連続でマイナス。稼働率は小幅改善。

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(出所:My Big Apple NY)

トランプ政権は、9月1日から追加関税措置の第4弾を発動。9月13日には携帯電話やPC関連、衣類などを12月15日からへ先送りを決定し、9月11日には第1~3弾の10月1日からの税率引き上げ措置も同15日に延期としたが、製造業の影響が注目される。内訳をみると、製造業(全体の75.1%)が上昇に転じた。機械のほか一次金属、組立金属、木材、航空関連など幅広く上昇。第4弾の追加関税措置に含まれるコンピュータ・電子部品も、プラスを維持した半面、自動車は4ヵ月ぶりに低下した。非耐久財は、プラスチック・ゴム、化学品などが牽引。公益(全体の10.4%)は2ヵ月連続で上昇し、鉱業(全体の14.2%)は前月からプラスに転じた。

■製造業 0.5%の上昇>前月は0.4%の低下、6ヵ月平均は横ばい

▽耐久財 0.5%の上昇>前月は0.2%の低下、6ヵ月平均は横ばい

・機械 1.6%の上昇、3ヵ月ぶりに上昇>前月は1.7%の低下、6ヵ月平均は0.1%の低下
・一次金属 1.3%の上昇、2ヵ月連続で上昇>前月は0.3%の上昇、6ヵ月平均は0.2%の低下
・組立金属 0.9%の上昇>前月は0.9%の低下、6ヵ月平均は0.2%の低下

・木材 0.7%の上昇、3ヵ月ぶりに上昇>前月は0.1%の低下、6ヵ月平均は0.1%の低下
・航空機/輸送機 0.7%の上昇、3ヵ月連続で上昇>前月は0.6%の上昇、6ヵ月平均は横ばい
・家具関連 0.5%の上昇>前月は横ばい、6ヵ月平均は0.1%の上昇
・コンピュータ/電子部品 0.2%の上昇、4ヵ月連続で上昇<前月は0.5%の上昇、6ヵ月平均 0.4%の上昇

・電気製品 0.4%の低下<前月は0.8%の上昇、6ヵ月平均は0.3%の上昇
・自動車関連 1.0%の低下、4ヵ月ぶりに低下<前月は0.5%の上昇、6ヵ月平均は0.3%の上昇

▽非耐久財 0.5%の上昇>前月は0.6%の低下、6ヵ月平均は0.1%の低下

・プラスチック/ゴム 2.6%の上昇>前月は2.7%の低下、6ヵ月平均は0.1%の低下
・化学品 1.1%の上昇>前月は0.1%の低下、6ヵ月平均は0.2%の低下
・繊維 0.1%の上昇>前月は2.3%の低下、6ヵ月平均は0.3%の低下

・食品/飲料/タバコ 0.1%の低下、2ヵ月連続で低下>前月は0.6%の低下、6ヵ月平均は0.1%の上昇
・石油製品 0.3%の低下<前月は0.6%の上昇、6ヵ月平均は0.2%の上昇
・服飾 1.2%の低下、2ヵ月連続で低下<前月は0.7%の低下、6ヵ月平均は0.2%の上昇

■公益 0.6%の上昇、2ヵ月連続で上昇<前月は3.1%の上昇、6ヵ月平均は0.1%の上昇

・電力 0.6%の上昇、2ヵ月連続で上昇<前月は4.2%の上昇、6ヵ月平均は0.4%の上昇
・天然ガス 0.5%の上昇、2ヵ月連続で上昇<前月は1.0%の上昇、6ヵ月平均は1.3%の低下

■鉱業 1.4%の上昇>前月は1.5%の低下、6ヵ月平均は0.4%の上昇

――久々に企業部門から明るいニュースを届き、米8月鉱工業生産指数は自動車を除き幅広く製造業活動で改善が見られました。9月ベージュブックで、米中間の貿易戦争が苛烈さを増すなかで設備投資の見送りが数多く言及されたものの、短期的見通しへの楽観度が維持された内容と整合的です。世界各国が利下げに動いた影響か製造業PMIも分岐点を回復する兆しが見えているだけに、景気判断の節目を割り込んだISM製造業景況指数も改善する可能性が出てきました。

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(作成:My Big Apple NY)

▽米9月NAHB住宅市場指数、金利低下を支えに年初来で最高に並ぶ

米9月NAHB住宅市場指数は68となり、市場予想の66並びに前月の67(66から上方修正)を上回った。米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げと金利低下により、建設業界のセンチメントに楽観度が増し、2018年10月以来の高水準。トランプ政権が9月1日から追加関税第4弾を発動(スマートフォンや衣類など555品目は12月15日)したものの、10月に米中通商協議が予定されることもあり、建設業者への影響は現時点で限定的となっている。内訳をみると、一戸建て現況指数は75と前月の73を超え、2018年5月以来の水準へ上昇した。見込み客指数は前月通り50の分岐点を維持。逆に一戸建て見通し指数は、前月に続き70と2月以来の低水準だった。

NAHB住宅市場指数、金利低下も建設労働者と用地の不足を背景に伸び悩み。

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(作成:My Big Apple NYが作成)

発表元である全米ホームビルダー協会(NAHB)は、結果を受け「金利低下と堅調な住宅需要により建設業者の楽観度が強まった」と振り返った。ただ「中国との貿易摩擦が仕入れ価格を押し上げ、製造業に依存する地域での需要を押し下げている」とし、NAHBが公表する地域別住宅建設指数が2018年後半から弱まりつつあると指摘した。

――対中追加関税措置が発動された2018年7月から1年以上が経過し、建設コストは前年比で4ヵ月連続にて下落しました。

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(作成:My Big Apple NY)

ただし、トランプ政権の移民政策厳格化を受けて人手不足解消への道のりは遠い。都市部を中心に建設用地も限られ、NAHB住宅市場指数の一段の上昇余地は大きくないでしょう。足元、金利も上昇していますし・・・。

(カバー写真:Chicago Transit Authority/Flickr)

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