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米9月貿易赤字は5ヵ月ぶりの低水準、石油収支は初の黒字

by • November 10, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2147

Trade Deficit Decreases To 5-Month Low, With First Surplus In Petroleum.

米9月貿易収支は524.50億ドルの赤字となり、市場予想の524億ドルとほぼ変わらなかった。前月の550.36億ドル(548.96億ドルから修正)から4.7%減少し、5ヵ月ぶりの低水準。原油関連を除く貿易赤字も527.02億ドルと、前月の547.68億ドル(修正値)を下回った。石油での貿易収支では2.52億ドルの黒字を計上、現行の定義となった1978年以来で初の黒字を記録した。

5月に米中通商協議が物別れに終わり、トランプ政権は約2,000億ドル相当の中国製品に対する追加関税の税率を10%から25%へ引き上げ、同13日には第4弾の追加関税として残り約3,000億ドル相当の中国製品に対し25%の追加関税を発動する方針を表明。さらに同20日にはファーウェイなど安全保障上の脅威となる企業に対し禁輸措置を講じた。6月末の米中首脳会談では、第4弾の追加tra関税措置の無期延期で合意するなど、雪解けの様相を呈したが、7月30日に上海で開催された米中通商協議を経て、トランプ大統領は8月1日に第4弾を9月1日に実施すると発言。8月23日には、中国が約700億ドルの米国製品に5~10%の追加関税を9月1日から発動すると表明した。同日、トランプ政権は約2,500億ドル相当(第1~3弾)の税率を25%→30%、第4弾の税率を10%→15%へ引き上げる方針を発表し、米中貿易摩擦が苛烈さを増した。ただし、10月10~11日開催の米中閣僚貿易協議で第1段階の合意が達成され、米中首脳会談で署名する可能性が高まり、足元で決裂への懸念は後退しつつある。

内訳をみると、輸出が0.9%減の2,078.25億ドルと3ヵ月ぶりに減少した。輸入は1.7%減の2,584.40億ドルと、過去4ヵ月間で3回目の減少となる。

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの貿易赤字は826.36億ドルと、前月の857.66億ドル(修正値)を上回った。

輸入の減少幅が輸出を上回り、実質ベースのモノの貿易赤字は5ヵ月ぶりの低水準。
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(作成:My Big Apple NY)

当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比1.3%減と前月の0.2%増から転じ3ヵ月ぶりに減少した。サービスを含めた6大項目別では、前月の4項目から2項目へ減少した。消費財と資本財が増加に転じた。逆に、自動車が3ヵ月ぶりに減少したほか、食品・飲料と産業財、サービスが減少に転じた。モノの輸出項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)

・消費財 2.9%増、増加に反転>前月は4.8%減
→金額ベースで医薬品が前月比9.3%増、ダイヤモンド宝飾品が13.7%増、芸術・骨董品・切手が11.3%増となった。

・資本財 1.9%増、減少に反転<前月は1.9%増
→民間航空機が25.1%増、民間航空機向けエンジンが13.5%増、測定・試験機器が3.9%増となった。

(減少項目)

・食品/飲料 12.3%減<前月は3.8%増
→9月に第4弾の追加関税のうち約1,600億ドル相当が発動するなか、大豆が35.3%減、そのほかコーンが24.9%減、野菜が10.9%減となった。

・自動車 7.0%減、3ヵ月ぶりに減少<前月は2.7%増
→乗用車が6.9%減、トラック・バスが12.7%減、その他部品が4.0%減となった。

・産業財 0.6%減、減少に反転<前月は3.5%増
→燃料が18.6%減、有機化学品が5.6%減、プラスチック素材が3.6%減となった。

・サービス 0.1%減、過去4ヵ月間で3回目の減少<前月は横ばい
→旅行が0.3%減だったほか、知的財産権使用料も0.1%減となった半面、その他ビジネス・サービスは0.2%増だった。

輸入の内訳をみると、モノは2.1%減と過去4ヵ月間で3回目の減少となった。原油価格が50ドル台を中心に推移するなか、シェール関連の生産増加で石油収支が黒字に転じたように、量ベースでのエネルギー関連輸入が8.5%減と2ヵ月連続で減少。前年比では14.8%減と、少なくとも6ヵ月連続で減少した。金額ベースでも、下落に転じた。エネルギー製品を除いたモノの輸入は前月比で1.9%減と、過去4ヵ月間で3回目の減少となった。5大項目別では4項目で減少し、前月の3項目を上回った。今回、消費財や資本財が減少に転じた。自動車と産業財は、全て2ヵ月連続の減少となる。一方で、食品・飲料は増加した。項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)

・食品/飲料 1.3%増、前月から増加に反転<前月は1.2%減
→金額ベースで増加幅が最大だったのは果物・冷凍ジュースが前月比13.1%増、乳製品・卵が20.3%増、食用油・油種が7.7%増となった。

(減少項目)

・消費財 4.4%減、前月から減少に反転<前月は3.4%増
→9月に新型iPhoneが販売されたが携帯電話・家庭用品が8.3%減となったほか、玩具を含むゲーム・スポーツ用品なども15.2%減に。服飾・繊維も25.6%減となった。いずれも、第4弾の追加関税が発動されるなか12月15日から賦課対象の商品が含まれる

・自動車 3.4%減、2ヵ月連続で減少<2.4%減
→トラック・バスが8.9%減、その他関連部品が3.3%減、乗用車が2.2%減だった。

・資本財 1.9%減、減少に反転<前月は3.4%増
→半導体が11.8%減、産業機器が4.1%減と、それぞれ前月の増加から転じた。その他、電気装置が3.9%減となる。

・産業材 1.5%減、2ヵ月連続で減少>前月は3.3%減
→非貨幣用金が30.7%減、石油製品が11.1%減、燃料が10.4%減となった。

国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比0.4%減の316.22億ドルと2ヵ月連続で減少し、3ヵ月ぶりの低水準となった。日本への赤字は19.1%減の50.50億ドルと、日米貿易交渉が8月末のG7首脳会談で合意に結び付くなかで縮小。欧州全体への赤字額は、WTOがエアバスの補助金に対する報復関税を承認する1ヵ月前、7.1%減の176.27億ドルとなった。ジョンソン英首相就任で関係強化が目される英国への貿易黒字は17.5%増の8.27億ドルの黒字となり、黒字は2ヵ月連続で、7ヵ月ぶりの規模となる。

主な産油国への貿易収支は、対カナダで赤字を拡大させつつ対メキシコとでは縮小した。石油輸出国機構(OPEC)に対しては、2ヵ月連続で黒字となる。カナダは前月比79.1%増の25.39億ドルと増加に反転。メキシコに対する赤字額は0.8%減の88.81億ドルだった。一方で、OPECへの貿易収支は10.98億ドルの黒字と、2ヵ月ぶりの黒字を計上しただけでなく、6ヵ月ぶりの規模となった。なお、原油輸入量はカナダが前月比2.2%減、メキシコは26.3%減、OPECは1.0%減だった。金額ベースではカナダが3.8%下落、メキシコが25.8%下落、OPECが2.8%下落した。

国別動向の年初来・貿易赤字は、1位は中国2位はメキシコで変わらず、3位は4ヵ月連続で日本となる(ただし、単月ではドイツに代わって3位に浮上)。2018年9月~19年1月まで3位だったドイツは、4位を維持した。貿易額でトップは少なくとも6ヵ月連続でメキシコとなり、2018年の中国から首位を奪った状況が続く。また、米商務省が7月2日に韓国、台湾の鋼材品をベトナムで最終加工する迂回輸出を抑制する狙いで最大456%の追加関税措置を発動するなか、対ベトナムの赤字は引き続き2桁増となる。各国ごとの年初来の貿易収支動向は、以下の通り。

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(作成:My Big Apple NY)

――米中閣僚貿易協議で第1段階の合意に至り、月内あるいは年末までに米中首脳会談で署名する運びとなりました。チリでのAPEC開催がキャンセルとなり11月半ばの署名は困難ながら、中国商務省が7日に両者が段階的な追加関税措置の撤廃する方針で合意とも表明トランプ政権内部では反対論が浮上しているとはいえ、12月15日発動予定だった第4弾の追加関税措置が見送られる公算が大きくなるとともに、貿易戦争が一旦収束する目途が立ちつつあります。また、対EUではWTOの決定を受け、米国は10月18日からエアバスの報復関税を発動したものの、ドイツに痛手となること必至の自動車関税は回避される見通し。貿易摩擦のさらなる悪化は、2020年の大統領選を控え落ち着きつつあり、貿易活動の回復に期待が掛かります。

(カバー写真:budak/Flickr)

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