Unemployed 27 weeks Or Longer As A Percent Of Total Unemployed Jumps During Pandemic.
米2月雇用統計、非農業部門就労者数(NFP)はパートタイムや流動性の高い飲食業が牽引して大幅増となったと、こちらでお伝えしました。
その一方で、27週以上の長期失業者の割合は2012年6月以来の高水準にあります。
チャート:長期失業率、コロナ禍で急伸
コロナ禍が長期失業者を押し上げた、と考えるのが自然ですよね。
コロナ禍で職探しをしなかった人々は、2月に前月比11.9%減の416万人でしたが、コロナ感染者が減少しつつあるというにも関わらず、過去最多を更新し始めた20年10~11月を超え、高止まりする状況に変わりありません。一体なぜなのでしょうか?
思い出して頂きたいのが、追加経済対策期の影響です。誤解を恐れずに申し上げるならば、改善ペースが鈍い労働参加率と合わせ、追加経済対策成立への思惑を受け、長期失業者を含め働けるはずの人々が労働市場に戻っていない可能性が考えられます。
チャート:コロナ禍で職探しをしなかった労働者、労働参加率の推移
筆者は追加経済対策を否定しているわけではありません。コロナ禍を受け、高齢者や乳児を抱える世帯では、コロナ感染を控え労働市場にカムバックできない事情もあるでしょう。
その一方で、失業手当が非常に手厚いという事実から、企業が採用にあたり賃金を引き上げる必要に迫られているとベージュブックで報告されていました。
では、失業保険はコロナ禍での支援策を受けどのようになっているかといいますと・・・。
まず、上院案での失業保険の上乗せは300ドルとし、当初の400ドルから引き下げられました。支払い期間は、現時点で10月4日までとなっています。
失業保険支払いの制度はといいますと、コロナ禍において①通常の26週間(NY州の場合、州によって異なる)、②受給満了者に対し延長(PEUC、20年3月成立のCARES法では13週の延長、20年12月成立の支援策では24週へ延長し3月14日~4月11日に終了、バイデン政権での支援策では9月末頃までとなる見通し)、③延長給付プログラム(13週、最大で20週、州によって異なる)――の3本柱で構成されています。従って、通常の失業保険である①の期限が切れたとしても、②を申請すれば、少なくとも9月末頃まで受給が可能となる見通しです(追加経済支援策の内容次第)。
2月の娯楽・宿泊の平均時給は15.03ドル(約1,600円)ですから、月収は約2,400ドルと想定されます。もちろん、これにチップなどが含まれそれ以上の給与となりますが、少なくとも①と②は支援策での上乗せ300ドル分を含め受け取れますから、NY州では週に500ドル+300ドル、1ヵ月で約3,200ドルとなります。余談ながら、バイデン政権での追加経済対策では、20年の失業保険のうち1万200ドルは非課税です。
20年5月時点から、失業者でいた場合に所得がコロナ以前に雇用された水準を上回る割合が約4割と報道されていましたが、失業保険はコロナ禍という未曽有の事態だけに、手厚いのですよ。一方で、手厚い失業保険で想定される主な問題は、以下の通り。
・失業保険上乗せと延長によって雇用の回復が伸び悩み、企業が賃金を上乗せし、結果的にインフレを押し上げへ
・人件費の増加を受け、コロナ禍で進みつつある省人化が加速
・資源価格の上昇と合わせ、企業の利益率が低下→さらに雇用の足かせに
追加経済対策は一時的に成長を加速する違いありません。ただし、同時に労働市場に歪をもたらすリスクに留意すべきでしょう。
(カバー写真:Jernej Furman/Flickr)
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