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米11月雇用統計:労働市場の改善に取り残される黒人と中卒

by • December 5, 2021 • Latest News, NY TipsComments Off2596

Black And People With Less Than A High School Diploma Left Behind In Overall Labor Market Recovery.

米11月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比21.0万人増となり、こちらでご紹介したように年初来で最も小幅な伸びにとどまりました。一方で、失業率は4.2%、労働参加率は61.8%とそれぞれ2020年3月以来の水準へ改善。平均時給は労働参加率の改善を一因に、市場予想以下にとどまりました。米国債は利回り低下で反応しましたが、これは米国債発行高の減少観測に加え、長期債の利回り低下は利上げによる景気減速を先取りしたようにも見えます。年末商戦は高水準を維持しつつ、前年割れとなったのは、需要の先食いのほか貯蓄率の低下が考えられます。何より、インフラ計画の成長押し上げ効果は限定的とされるだけに、2021年のような高成長は想定できません。

それはともかくとして、ここでは業種別の就労者数の変化や平均時給を始め人種や学歴別など詳細を拾っていきます。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の前月比で0.5%上昇の26.40ドル前年比は5.9%の上昇と経済活動が再開し始めたばかりの2020年5月以来の上昇率を遂げた。

業種別を前月比でみると、同部門の平均時給の伸び以上だったのは13業種中で4業種にとどまり、前月の9業種を下回った。しかも、今回は1位の業種が全体を底上げするかたちとなった。1位は年末商戦を受け従業員確保が命綱となる輸送・倉庫で2.1%上昇。2位はその他サービス(0.6%上昇)、3位は教育・健康と金融(0.5%上昇)が並んだ。一方で、今回前月比で下落した業種は1業種と、前月と変わらず。デルタ株感染拡大中に賃上げが最も著しかった娯楽・宿泊のみ0.2%下落した。同業種の賃上げ後退は、人手不足解消に伴い賃金が急速に正常化に向かう可能性を示唆するか、注目される。なお、前月下落した工業・伐採は上昇に転じた。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

労働参加率が61.8%2020年3月以来の水準を回復するなか、働き盛りの男性(25~54歳)も改善が優勢となった。25~34歳の全米男性のみ低下したが、他は全て改善し2020年3月以来の水準を回復している。以下、季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 88.2%、2020年3月(89.0%)以来の高水準>前月は88.1%、20年2月は89.1%
・25~54歳(白人) 89.4%、20年3月(90.3%)以来の高水準>前月は89.2%、20年2月は90.6%
・25~34歳 88.0%<前月は88.2%と20年3月(88.7%)以来の高水準、20年2月は89.0%
・25~34歳(白人) 89.4%、20年3月(90.4%)以来の高水準>前月は89.3%、20年2月は90.7%

チャート:働き盛りの男性、労働参加率は25~34歳の白人を除き低下

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(作成:My Big Apple NY)

働き盛りの女性の労働参加率も改善したが、特に25~34歳は20年2月以来の水準へ上昇した。

・25~54歳 75.6%、20年3月(76.2%)以来の高水準>前月は75.4%、20年2月は76.8%
・25~34歳 77.2%、20年2月(78.2%)以来の高水準>前月は76.3%

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男女でまちまちとなった。男性は23.8%と前月と変わらず、20年11月以来の高水準となった9月の24.0%を下回ったままだった。一方で、女性は15.6%と、2020年10月以来の水準を回復した。

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で2.0%減の585.9万人(男性は252.3万人、女性は333.6万人)。3ヵ月ぶりに減少した背景は、男性が増加した一方で、女性が4.7%減少していたため。ただ、女性は5ヵ月連続で男性を上回った。

チャート:職を望む非労働力人口は10月に減少も、男女共にコロナ前の水準超えを維持

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(作成:My Big Apple NY)

〇男女の失業率、労働参加率
男女の失業率は、そろって20年2月以来の水準へ改善した。男性は4.2%と20年3月の4.4%を下抜け、20年2月(3.5%)以来の水準となった。女性も4.3%と20年3月の4.4%を下回り、20年2月(3.4%)以来の低水準だった。

男女別の労働参加は、そろって改善し20年3月以来の水準を回復した。男性が67.8%と20年3月(68.5%)以来の高水準となったほか、女性は前月の56.0%から56.2%へ上昇し、8月に続き20年3月(57.1%)以来の高水準を回復した。

男女で失業率や労働参加率が改善したとはいえ、就業者数を20年2月比では、女性の回復ペースが男性より鈍い状況に変わりはない。ただ今回、男女ともにヒスパニック系で改善が著しく、ヒスパニック系女性は10月に比べ11月は白人より下げ幅を縮小ヒスパニック系男性に至っては、今回初めて20年2月比で増加に転じた。

チャート:男女・人種別の就業者数、20年2月との比較

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年を比較すると、ご覧の通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。

チャート:人種別、25歳以上の大卒以上の割合

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(作成:My Big Apple NY))

人種別の労働参加率は、まちまち。デルタ株の新規感染者が8月末にピークアウトし、9月6日に失業保険給付上乗せも終了するなか、白人とヒスパニック系は改善した一方で、黒人とアジア系は低下した。ただ、アジア系は既にコロナ前の水準を回復しており、問題は黒人の労働参加率の低下と言える。特に黒人女性は10月の58.7%→58.4%と8ヵ月ぶりの低水準となり、失業率の著しい低下につながった(後述)。

・白人 61.6%、3ヵ月ぶりの水準を回復>前月は61.5%、20年2月は63.2%
・黒人 60.8%、4ヵ月ぶりの低水準<前月は61.1%、20年2月は63.1%
・ヒスパニック系 66.3%、20年3月(67%)以来の高水準>前月は65.7%、20年2月は68.0%
・アジア系 65.1%<前月は65.2%と19年10月以来の高水準
・全米 61.6%=前月は61.6%、20年2月は63.3%

チャート:人種別の労働参加率、白人と黒人は低下

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(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率は、全て20年2月以来の水準に低下。ただし、白人とヒスパニック系は労働参加率が上昇するなかで失業率が低下し労働市場の改善を表すが、黒人は労働参加率に合わせて低下したに過ぎない。。

・白人 3.7%、20年2月以来の低水準<前月は4.0%、20年2月は3.0%
・黒人 6.7%、20年2月以来の低水準<=前月は7.9%、20年2月は6.0%
・ヒスパニック系 5.2%、20年2月以来の低水準<前月は5.9%、20年2月は4.4%
・アジア系 3.8%、20年2月以来の低水準<前月は4.2%、20年2月は2.4%
・全米 4.2%、20年2月以来の低水準<前月は4.6%、20年2月は3.5%

チャート:人種別の失業率、労働参加率の下振れを受け黒人女性の低下が10月の7.5%→11月に5.0%と顕著

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(作成:My Big Apple NY)

白人と黒人の失業率格差は白人と黒人そろって低下したため、3.0ポイントと20年4月以来の水準へ縮小した。ただし引き続き、トランプ前政権で記録した19年8月の1.8ポイント超えの水準を保つ。

チャート:黒人と白人の失業率格差、トランプ前政権期と比較して上昇続く

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(作成:My Big Apple NY)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、中卒を除き全て改善した。

・中卒以下 45.1%、5ヵ月ぶりの低水準<前月は46.5%、20年2月は47.7%
・高卒 55.7%、20年8月以来の高水準>前月は55.0%、20年2月は58.3%
・大卒以上 72.1%>前月は71.9%、20年2月は73.2%
・全米 61.8%、20年3月以来の高水準>前月は61.6%、20年2月は63.3%

チャート:学歴別の労働参加率、中卒以外は上向きもコロナ前の水準に至らず

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(作成:My Big Apple NY)

学歴別の失業率は、全て低下した。特に大卒は20年2月以来、大学院卒に至っては19年4月以来の水準へ改善し、労働参加率の上昇と合わせ正常化しつつある。一方で、中卒も20年1月以来の水準へ改善したが、これは労働参加率が大幅に低下したことが大きく健全な低下と言い難い

・中卒以下 5.7%、20年1月以来の低水準<前月は7.4%、20年2月は5.8%
・高卒 5.2%、20年3月(4.3%)以来の低水準<前月は5.8%、20年2月は3.5%
・大卒 2.3%、20年2月以来の低水準<前月は2.4%、20年2月は1.9%
・大学院卒以上 1.5%、19年4月以来の低水準<前月は1.8%、20年2月は1.7%
・全米 4.2%、20年2月以来の低水準<前月は4.6%、20年2月は3.5%

--米11月雇用統計の詳細を見ると、①労働参加率は黒人以外で改善進む(アジア系は低下もコロナ前の水準を回復済み)、②ヒスパニック系は男女とも労働参加率と失業率合わせて改善、③高学歴は労働参加率を伴って失業率が改善、④労働参加率は高学歴でもコロナ以前の水準回復せず、⑤男女別では女性が労働参加率の改善を牽引するも、引き続き男性より改善ペース鈍い――などの実態が浮かび上がりました。

①と②は、非白人で労働市場の改善で明暗が分かれたかたちとなり、中間選挙に影響を及ぼしかねません。黒人の間での労働参加率の低下がワクチン接種義務化が影響しているならば、義務化を進めるバイデン政権には逆風となりかねませんが、ヒスパニック系の支持層で補う期待もあります。

一方で、オミクロン株の影響が労働市場にどのような影響を与えるかは未知数です。労働参加率が20年3月以来の水準を回復し、平均時給も予想以下にとどまったものの、オミクロン株を警戒し労働市場から退出する人々が増加する場合も。そうなれば人手不足が再燃し、賃上げ圧力を高めかねません。

(カバー写真:Johnny Silvercloud/Flickr)

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