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米12月雇用統計・NFPは年内最小の伸び、失業率は4%割れ

by • January 7, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2015

Job Growth Hits Lowest In The Year, But Unemployment Keeps Declining.

<本稿のサマリー>

米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、年初来で最も小幅な伸びにとどまりました。デルタ株感染拡大が収束したのもつかの間、オミクロン株が取って代わった上、年末商戦の臨時雇用も落ち着いたため鈍化したとみられます。

失業率は改善基調をたどり、2020年2月以来の低水準となりました。しかも、労働参加率が2ヵ月連続でコロナ禍において最高を更新し、質的にも改善の足取りを確かめています。さらに米失業保険給付上乗せが9月6日に終了した後、長期失業者の指標の回復ペースが鈍かったものの、足元はゆるやかに改善中。平均時給は、労働参加率が改善しつつも高止まりを維持しました。パウエルFRB議長率いるFedが早期利上げに意欲的な姿勢をみせるように、賃上げ圧力が根強いことが分かります。

今回の結果を受け、米東部時間の午前11時50分時点で、米株の主要3指数は売り継続、米10年債利回りも上昇しました。Fedの早期利上げ路線は変わらずとの見方によるものです。ただし、ドルは対円、ユーロなどで小幅安を迎えています。

今回の米12月雇用統計のポイントは、以下の通り。

(労働市場にポジティブ)

・フルタイムの雇用が増加(パートタイムは減少)
・過去2ヵ月分では合計で14.1万人の上方修正
・平均時給は前月比と前年比で高止まり
・失業率は3.9%、20年2月以来の低水準
・就業率は59.5%、20年3月以来の水準を回復
・労働参加率は61.9%、2020年3月以来の水準へ改善
・不完全就業率は7.3%、コロナ感染拡大直前の20年2月以来の低水準
・長期失業者の割合は31.7%と20年9月以降で最低

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・NFPの増加幅は年初来で最小
・業種別で小売が2ヵ月連続で減少、政府は5ヵ月連続で減少
・雇用の先行指標である派遣が3ヵ月ぶりに減少
・週当たり労働時間は伸び悩み

米12月雇用統計の詳細は、以下の通り。

米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比19.9万人増となり、市場予想の40万人増を大きく下回った。前月の24.9万人増(21.0万人増から上方修正)を下回り、12ヵ月連続で増加したなかで最も小幅な伸びにとどまった。

10月分の10.2万人の上方修正(54.6万人増→64.8万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で14.1万人の上方修正となった。10~12月の3ヵ月平均は36.5万人増となった。2021年平均は53.7万人増と、コロナ禍前の2019年平均である16.8万人増を大幅に上回った水準を維持した。

2021年通期で、就労者数は約645万人増加した。また20年5月以降、今回で1,879万人の雇用を取り戻した。ただ、同年3~4月の記録的な減少(2,236万人)を打ち消し同年2月の水準を回復するには、あと約357万人必要となる。

チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと約391万人増加する必要あり
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(作成:My Big Apple NY)

チャート:2020年と2021年の就労者数
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(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比21.1万人増と市場予想の36.5万人増を下回った。前月の27.0万人増(23.5万人増から上方修正)を含め、12ヵ月連続で増加した。民間サービス業は15.7万人増、前月の19.8万人増(17.5万人増から上方修正)を下回った

チャート:NFPは12ヵ月連続で増加も、年初来で最小の伸び、失業率は20年2月以来の低水準

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、11業種中で前月に速報値と同じく7種が増加した。今回最も雇用が増加した業種は娯楽・宿泊で前月の3位からトップに浮上、続いて前月1位の専門サービス、3位は前月2位の輸送・倉庫が入った。一方で、政府が5ヵ月連続で減少したほか、小売は2ヵ月連続で減少した。公益は2ヵ月連続で横ばい、情報は10ヵ月ぶりに横ばいとなった。

教育・健康のうちヘルスケアにおける伸び鈍化に加え、政府の就労者数が5ヵ月連続で減少した背景として、バイデン政権のワクチン接種義務化が一因と考えられる。11月にワシントンD.C.ベースのメディアが実施した世論調査では、連邦政府職員の53%が義務化に反対と回答していた。連邦政府委託業者の米郵便公社が1月4日のワクチン接種義務化期限の延長を要請するなど、一部の職員の間で接種が進んでいない様子が伺える。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種

・娯楽/宿泊 5.3万人増、11ヵ月連続で増加<前月は4.1万人増、6ヵ月平均は14.9万人増(そのうち食品サービスは4.3万人増>前月は3.4万人増、6ヵ月平均は5.6万人増)
・専門サービス 4.3万人増、8ヵ月連続で増加<前月は7.2万人増、6ヵ月平均は9.8万人増(そのうち派遣は0.2万人減、8ヵ月ぶりに減少<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は1.2万人増)
・輸送/倉庫 1.9万人増、8ヵ月連続で増加<前月は4.2万人増、6ヵ月平均は5.1万人増

・卸売 1.4万人増、4ヵ月連続で増加>前月は1.1万人増、6ヵ月平均は1.0万人増
・その他サービス 1.3万人増、3ヵ月連続で増加=前月は1.3万人増、6ヵ月平均は2.4万人増
・教育/健康 1.0万人増、12ヵ月連続で増加<前月は1.4万人増、6ヵ月平均は4.5万人増(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は0.6万人増、11ヵ月連続で増加<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は2.7万人増)
・金融 1.3万人増、9ヵ月連続で増加<前月は2.6万人増、6ヵ月平均は1.7万人増

―横ばいの業種

・情報 横ばい<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
・公益 横ばい=前月も横ばい、6ヵ月平均は横ばい

―減少した業種

・小売 0.2万人減、2ヵ月連続で減少>前月は1.2万人減、6ヵ月平均は1.5万人増
・政府 1.2万人減、5ヵ月連続で減少>前月は2.1万人減、6ヵ月平均は1.8万人増

財生産業は、前月比5.4万人増となった。前月の7.2万人増(修正値)を下回りつつ、8ヵ月連続で増加した。業種別をみると、製造業が8ヵ月連続で増加したほか、建設も住宅市場の在庫ひっ迫と価格高騰を受け、小幅ながら4ヵ月連続で増加した。油価がオミクロン株の影響で70ドル割れを迎えた後に切り返すなか、鉱業・伐採は11ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・製造業 2.6万人増、8ヵ月連続で増加<前月は3.5万人増、6ヵ月平均は4.1万人増
・建設 2.2万人増<前月は3.5万人増、6ヵ月平均は2.5万人増
・鉱業/伐採 0.6万人増(石油・ガス採掘は700人増)、11ヵ月連続で増加>前月は0.2万人増、6ヵ月平均は0.4万人増

チャート:12月のセクター別、就労者の増減

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:20年2月との比較、民間サービス部門は2.1%減となった。サービス部門で当時の水準を上回るのは2業種で、輸送・倉庫は当時の水準を5ヵ月連続で、金融も3ヵ月連続で上回った。一方で、専門・サービスも0.2%減まで下げ幅を縮小している。財部門は1.6%減まで下げ幅を狭めた。全てマイナス圏だが、建設は1.2%減、製造業も1.7%減とプラス圏を視野に入れている。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.6%上昇の31.31ドル(約3,630円)と、市場予想と前月の0.4%を上回り9ヵ月連続で上昇した。前年比は4.7%上昇し前月の5.1%(4.8%から上方修正)を下回ったが、市場予想の4.2%を上回った。

チャート:平均時給は力強く伸び、根強い賃上げ圧力を示唆

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は前月と変わらず34.7時間となり、市場予想の34.8時間を下回った。2006年以来の最長を記録した1月の35時間を11ヵ月連続で下回った。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.1時間と前月の40.0時間を超えつつ、2019年3月以来の高水準に並んだ9月の40.4時間以下が続く。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは3ヵ月連続で33.7時間となり、2006年以降で最長を記録した1月の33.9時間以下が続く。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が前月を下回る伸びだったが、平均労働時間が横ばいだったため、前月比0.2%増と10ヵ月連続で増加した。平均時給が9ヵ月連続で上昇した結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.8%増だった。

失業率は3.9%と、市場予想の4.1%と前月の4.2%を下回りコロナ直前にあたる2020年2月の3.5%を視野に入れた。失業者が48.3万人減少しただけでなく、就労者数が65.1万人増加していた。さらに、自発的離職者数は3ヵ月ぶりに減少したことも寄与。労働統計局によれば、引き続き一時解雇された労働者が「雇用されているが休職中」として扱われるなど正確に反映されていない場合があり、これを考慮すると失業率は4.0%だったという。

労働参加率は61.9%と、前月の61.8%を上回り20年3月(62.7%)以来の高水準となった。ただし、コロナ感染拡大直前の20年2月の63.4%以下で推移し続けている。

就業率は59.5%と、前月の59.3%を上回った。20年3月(59.9%)以来の高水準だが、コロナ感染拡大直前の61.1%を下回ったままだ。

コロナ禍を理由に在宅勤務を行ったとする労働者の割合は11.1%と前月の11.3%を下回り、コロナ禍で最低を更新した。

コロナ禍が理由で過去4週間に職探しをしなかった労働者は11月に112.1万人と、コロナ禍以降で最低となった。結果、小幅ながら労働参加率を押し上げた。

チャート:職探しをしなかった労働者は3ヵ月連続で減少、労働参加率は2ヵ月連続で改善

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(作成:My Big Apple NY)

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.6%増(80.3万人増)の1億3,019万人だった。一方で、パートタイムは同1.1%減(27.5万人減)の2,568万人と、3ヵ月ぶりに減少した。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全就業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全就業率 採点-〇
済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全就業率は7.3%と、前月の7.8%を下回り20年2月(7.2%)以来の水準に低下した。

チャート:不完全就業率は急速に改善、就業率も右肩上がり。

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(作成:My Big Apple NY)

2)長期失業者 採点-〇
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均値は28.6週と、前月の29.1週から短縮失業期間の中央値も12.9週と前月の13.4週以下、ただし2020年5月以来の低水準だった前月の12.0週を上回ったままだ。27週以上にわたる失業者の割合は31.7%と、2020年9月以来の低水準となった。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、共和党知事州で失業保険給付上乗せの前倒し終了が取り沙汰された7月以降に急低下、その後もゆるやかなペースで低下

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(作成:My Big Apple NY)

3)労働参加率 採点-〇
労働参加率は61.9%と前月の61.8%を超え、2020年3月以来(62.7%)の水準を回復した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。

4)賃金 採点-〇
今回は前月比0.6%と9ヵ月連続で上昇し、前年比は4.7%と11月の5.1%(4.8%から上方修正)を下回りつつ高い伸びを維持し、それぞれ市場予想も上回った。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.7%上昇の26.61ドル、前年比は5.8%の上昇となった。前年比は2ヵ月連続での6.0%を下回りつつ、管理職を含めた全体を5ヵ月連続で上回った。

(カバー写真:perzon seo/Flickr)

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