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バイデン大統領の初来日、IPEF立ち上げも最大の注目は台湾をめぐる発言

by • May 23, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2165

Biden Says United States Would Intervene Militarily If China Attempts To Take Taiwan By Force.

バイデン大統領が22日から訪日し、23日には岸田首相や天皇陛下と会談したほか、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の発足を宣言しました。事前報道通り、来日にあたってバイデン氏はブリンケン国務長官とレモンド商務長官を同行させています。韓国を先に訪問したため一部で憶測を招きましたが、インド太平洋(IPEF)のほか経済版2プラス2の発足への意気込みを感じさせます。以下、23日のスケジュールと主なポイントです。

〇バイデン大統領―岸田首相との会談
外務省によれば、極少人数会合:11時00分から約30分間、少人数会合:11時30分から約50分間、拡大会合(ワーキング・ランチ):12時25分から約55分間と三部構成に。
・事前報道の通り、主に①日米同盟の抑止力と対処力を強化、②中国の力による一方的な現状変更の試みに強く反対、③台湾海峡の平和と安定の重要性を共有、④対ロ制裁継続とウクライナ支援、⑤北朝鮮の非核化(日米韓の協力強化)――で意見の一致を確認。
・バイデン氏は、日本の国連安保理常任理事国入りを支持すると発言(ただし、中ロなど常任理事国が反対する可能性大。
・岸田氏が23年G7サミットを広島で開催する意思を伝達、バイデン氏は賛同(宇品島にあるグランドプリンスホテル広島が有力候補、厳島神社から近く原爆ドームも視界に収められ、島の端ということでセキュリティもばっちりだとか。また、23年には外資系ホテルが開業予定。何よりロシアのウクライナ侵攻を受け、核廃絶をアピールできる)
・日米首脳共同声明「自由で開かれた国際秩序の強化」では、中国への抑止力強化に向け協力すると明示。
日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ日米気候パートナーシップの更新。

・日米首脳間での恒例のプレゼント交換、今回は米国側の要請により非公開に。なお、17年11月にトランプ大統領(当時)来日した折、安倍首相(当時)は松山英樹選手のサインが入ったメッセージ刺繍付きゴルフキャップと”龍村美術織物”のテーブルランナーを贈呈した。
・ランチのメニューは以下の通り。広島出身の岸田氏に合わせ、広島や瀬戸内海の名産で花を添えた。広島でのG7サミット開催にあたって、支持を獲得する上で確かな援軍となったに違いない。
>スムールのタブレに乗せたオマール海老のシンフォニー トマトソース 瀬戸内キャビア添え
>広島神石牛フィレ肉のグリル グレイビーソース 広島産野菜をそれぞれのテクスチャーで
>苺のミルフィーユ バニラアイスクリームにサクランボのソース
・八芳園でのディナーは、りんごジュースで乾杯を行った後、魚料理で信州サーモンのムニエルを、肉料理で東京シャモの鉄板焼きが振舞われた。デザートにはバイデン氏が副大統領時代に訪れた宮城県名取市のジェラートで、舌鼓を打ったとされる。

画像:エマニュエル駐日米大使のツイッターから、日米首脳会談の様子

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(出所:ラーム・エマニュエル駐日米国大使/Twitter)

〇 日米首脳記者会見
・岸田氏の冒頭発言はこちらをご参照。
・米国側からの質問は①インフレ、②景気後退、③サル痘、④サムスン電子がテキサス州に建設を発表した半導体工場――などに集中。米国でのIPEFを始めとした関心の低さを示唆。
・岸田氏は、”日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)”の発足を発表(1月の電話会談で合意済み)と共に、初会合を7月に開催すると言及。従来の安全保障に関わる2プラス2(オースティン国防長官―岸防衛相、ブリンケン国務長官と林外相)と違い、経済版2プラス2では国務長官と外相、レモンド商務長官―萩生田経産相で構成される。
・バイデン氏は質疑応答で、中国が武力での統一に踏み切った場合、台湾に軍事的関与を行うかとの質問に「それが我々のコミットメントだ(Yes, that’s the commitment we made)」と発言し、大きな話題に。一連の回答では「台湾についての政策は全く変わっていない」、「現状が一方的に変更されることがないよう取り組み続ける」、「1つの中国政策に同意する」と述べたものの、以下の通り台湾をめぐる発言がバイデン氏の訪日での各紙・ニュースのヘッドラインとなった。

Biden Says U.S. Would Intervene Militarily if China Invaded Taiwan-WSJ

Biden Says U.S. Military Would Defend Taiwan if China Invaded-ニューヨーク・タイムズ紙

Biden takes aggressive posture toward China on Asia trip-ワシントン・ポスト紙

Biden says U.S. military will defend Taiwan if China invades-NBC

Biden vows to defend Taiwan in apparent US policy shift-BBC

Biden, on inaugural Asia visit, says he would be willing to use force to defend Taiwan―ロイター

US and Japan will ‘stand firmly’ against Taiwan takeover, Joe Biden says-サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙

・なお、国務省が5月5日に更新した台湾に関するファクトシートで「台湾の独立を支持しない」、「台湾は中国の一部だ」との文言を削除し物議を醸しだしたことが思い出される。ファクトシートには、レーガン政権時代の1982年に台湾に提示した安全保障関連の「6つの保証」も追加していた。

6つの保証
1.台湾への武器供与の終了期日を定めない。
2.台湾と中国との交渉を仲介しない。
3.中国との対話を行うよう台湾に圧力をかけない。
4.台湾関係法を改正しない。
5.台湾の主権に関する立場を変えない。
6.台湾への武器売却に関して中国と事前協議を行なわない

国務省のネッド・プライス報道官は台湾政策に絡み変更なしと発言済みだが、中国側は、10日頃から猛反発した。バイデン発言後も、中国外務省の汪文斌副報道局長が即座に「強烈な不満と断固たる反対」表明。ホワイトハウス関係者は、バイデン発言後すぐに台湾政策に変更なしとのコメントしたものだ。同発言を受け一部では曖昧外交路線からのシフトとの観測が流れたが、CNNによればバイデン政権関係者にとって同発言は「寝耳に水」で、明言することは想定していなかったという。「私は失言マシーンだ(I’m gaffe machine)」と自称するバイデン氏らしいコメントと言えそうだが、数週間後に実現しそうな米中首脳会談のほか、対中追加関税引き下げの可能性などを含め米中台のバランスを精査していくべきだろう。

〇IPEF発足
・日米の他、豪、ブルネイ、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、NZ、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムなど13ヵ国が参加。全参加国の国内総生産(GDP)は合計で世界の約4割を占める。
・超党派の米上院議員52名がバイデン大統領に宛てた書簡で台湾を発足メンバーに加えるよう要請したものの、台湾を招待せず。ただし、韓国側の3月の報道によれば、バイデン政権は日米韓との半導体のサプライチェーン構築のための”半導体同盟(Chip 4)”に台湾を加える見通しだという。

チャート:半導体生産能力、米を除いても日韓台で約6割

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(作成:My Big Apple NY)

IPEFは①公平で強靭な貿易、②サプライチェーンの強靭性、③インフラ、脱炭素化、クリーンエネルギー、④税、反腐敗―の4つの柱で構成。ただし、関税引き下げを盛り込まず、自由貿易協定(FTA)のような法的拘束量もなく、市場参入を推進させる枠組みではないだけに、参加国をいかに増やすかが課題。また、結束力も試されよう。
・米国内では環太平洋パートナーシップ(TPP)などに反対する声が多く、関税引き下げなどを盛り込んだ貿易協定に発展する機運は低い。
・米当局者によれば、7月に協議を開始させ、IPEFは1年から1年半の間に正式発足させる方針。
・なお、かつてはトランプ前政権が「開かれたインド太平洋(FOIP)」を補完する枠組みとして、インフラ開発の認証を提供する目的でブルードット・ネットワークを立ち上げたが、政権後退と共に21年6月にバイデン政権下で設立された「より良い再建の枠組み(Build Back Better World、B3W)」に吸収された。

――日米首脳会談を始め、両国の緊密な関係を裏打ちした1日と言えるでしょう。ファッション好きな筆者としては、ダークスーツと濃紺のストライプシャツで統一したバイデン氏と岸田氏のスーツ姿に注目。米韓首脳会談の時に見られなかったペアルックは偶然の一致でしょうが、IPEFの今後の課題など忘れて微笑ましく感じたものです・・。

(カバー写真:政府インターネットTV

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