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米5月雇用統計・NFPは堅調、平均時給の前年比は2ヵ月連続で鈍化

by • June 3, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2068

U.S. Job Growth Was Still Solid, Average Hourly Earnings Rose Slightly Less Than Expected

<本稿のサマリー>

米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、引き続き堅調な伸びを記録しました。労働参加率が小幅改善したように、貯蓄率の低下やインフレ加速が労働市場への回帰を再び後押ししたとみられます。平均時給は労働参加率の上昇に合わせ、前月比0.3%上昇し市場予想以下に。何より、前年同月比は2ヵ月連続で前月を下回り、賃金インフレがピークアウトした証左をひとつ増やしました。ただし、未だ高止まりしており、6~7月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、50bpの利上げを続ける蓋然性が高いと言えるでしょう。

 

米5月雇用統計のポイントは、以下の通り。

(労働市場にポジティブ)

・NFPは、堅調な伸びを維持
・就業率は上昇
・労働参加率は改善
・長期失業者の割合は、20年9月以来の低水準

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・過去2ヵ月分のNFPが下方修正
・平均時給は、前年同月比で2ヵ月連続で前月以下
・週当たり労働時間は、3ヵ月連続で変わらず
・失業率は前月と変わらず
・不完全就業率は2ヵ月連続で低下

米5月雇用統計の詳細は、以下の通り。

米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比39.0万人増となり、市場予想の32.5万人増を上回った。前月の43.6万人増(42.8万人増から上方修正)に届かなったとはいえ堅調なペースを維持し、17ヵ月連続で増加した。

3月分の3.0万人の下方修正(42.8万人増→39.8万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で2.2万人の下方修正となった。3月~5月の3ヵ月平均は40.8万人増となった。2021年平均の56.2万人増を2ヵ月連続で下回った。

就労者数は20年5月以降、今回で2,117万人の雇用を取り戻した。ただ、同年3~4月の記録的な減少(2,199万人)を打ち消し同年2月の水準を回復するには、あと約119万人必要となる。

チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと約82万人増加する必要あり

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(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比33.3万人増と市場予想の32.5万人増を上回った。前月の40.5万人増(40.6万人増から下方修正)を含め、17ヵ月連続で増加した。民間サービス業は27.4万人増、前月の33.6万人増(34.0万人増から下方修正)を下回った。

チャート:NFPは17ヵ月連続で増加、失業率は3ヵ月連続で20年2月以来の低水準

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、11業種中で前月通り10業種が増加した。今回最も雇用が増加した業種は6ヵ月連続で娯楽・宿泊、2位は専門サービス、3位は前月2位だった教育・健康が入った。一方で、小売のみ減少に転じた。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種

・娯楽/宿泊 8.4万人増、17ヵ月連続で増加>前月は8.3万人増、6ヵ月平均は12.0万人増(そのうち食品サービスは6.8万人増>前月は4.9万人増、6ヵ月平均は8.2万人増)
・専門サービス 7.5万人増、13ヵ月連続で増加>前月は4.9万人増、6ヵ月平均は8.1万人増(そのうち派遣は1.9万人増、13ヵ月連続で増加>前月は0.7万人増、6ヵ月平均は2.2万人増)
・教育/健康 7.4万人増、25ヵ月連続で増加>前月は6.0万人増、6ヵ月平均は6.4万人増(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は4.2万人増、11ヵ月連続で増加<前月は4.4万人増、6ヵ月平均は4.4万人増)

・政府 5.7万人増、7ヵ月連続で増加>前月は3.1万人増、6ヵ月平均は2.5万人増
・輸送/倉庫 4.7万人増と25ヵ月連続で増加>前月は4.6万人増、6ヵ月平均は4.1万人増
・情報 1.6万人増、19ヵ月連続で増加>前月は1.5万人増、6ヵ月平均は1.1万人増

・その他サービス 1.6万人増、17ヵ月連続で増加>前月は1.3万人増、6ヵ月平均は1.9万人増
・卸売 1.4万人増、22ヵ月連続で増加>前月は1.3万人増、6ヵ月平均は1.9万人増
・金融 0.8万人増、11ヵ月連続で増加<前月は3.5万人増、6ヵ月平均は1.7万人増
・公益 0.1万人増=前月は0.1万人増、6ヵ月平均は横ばい

―横ばいの業種

なし

―減少した業種

・小売 6.1万人減、減少に反転<前月は1.2万人増、6ヵ月平均は3.3万人増

財生産業は、前月比6.6万人増だった。前月の6.9万人増(6.6万人増から上方修正)を小幅に下回ったとはいえ、13ヵ月連続で増加した。業種別をみると、製造業が13ヵ月連続で増加した。建設は前月の横ばいから増加に反転した。油価がロシアによるウクライナ侵攻で100ドル台を維持するなか、鉱業・伐採も小幅ながら4ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 3.6万人増>前月は横ばい、6ヵ月平均は2.7万人増
・製造業 1.8万人増、13ヵ月連続で増加<前月は6.1万人増、6ヵ月平均は4.2万人増
・鉱業/伐採 0.5万人増(石油・ガス採掘は100人増)、4ヵ月連続で増加<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

チャート:セクター別、就労者の増減

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:20年2月との比較、民間サービス部門は前月の0.4%減→0.1%減とプラス転換が迫った。11業種中で当時の水準を上回るのは5業種で変わらず。輸送・倉庫(19ヵ月連続)、専門サービス(8ヵ月連続)、情報(6ヵ月連続)、小売(5ヵ月連続)、金融(4ヵ月連続)となる。財部門は前月の0.5%減→0.2%減と、こちらもプラス圏回復に近づいた。建設が3ヵ月連続でプラスとなり、製造業は0.1%減とプラス圏に肉薄。一方で、鉱業・伐採は9.9%減と漸く下げ幅を1桁に回復させたが、引き続き弱い。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.3%上昇の31.95ドル(約4,120円)と、4月に続き市場予想の0.4%に届かず。引き続き、16カ月連続で上昇したなかで2番目に小幅な伸びにとどまった。前年比は5.2%上昇し、市場予想と一致。4月に続き2ヵ月連続で前月を下回り、賃金インフレがピークアウトした可能性を示唆した。

チャート:平均時給は、前月比と前年同月比ともにピークアウトの兆し

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は4ヵ月連続で34.6時間となり、市場予想とも一致した。2006年以来の最長を記録した2021年1月の35時間を14ヵ月連続で下回った。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.1時間と、前月の40.0時間を上回り3月の水準に戻した。コロナ禍で最高となった21年9月に並んだ前月の40.4時間以下が続く。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは前月通り33.5時間と前月の33.6時間を下回り、20年4月以来の低水準に。雇用主が従業員の確保を狙い、就業時間の柔軟性を与えたため短縮したと考えられる。2006年以降で最長を記録した21年5月の33.9時間以下が続く。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が引き続き増加したため、週当たり労働時間が変わらずとも、前月比0.3%増だった。一方で、平均時給は伸びが引き続き伸びた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.6%増だった。

失業率は3ヵ月連続で3.6%と20年2月以来の低水準だが、市場予想でありコロナ直前にあたる2020年2月の3.5%に届かなかった。失業者は0.9万人と小幅に増加したが、新型コロナウイルス感染者が徐々に増加する過程でも離職者数が前月から減少し失業率の上昇を回避した。

チャート:自発的離職者数は前月比3.7%減の76.4万人、失業者に占める自発的離職者数の割合は12.8%と、5ヵ月ぶりの低水準

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(作成:My Big Apple NY)

労働参加率は62.3%と前月の62.2%から改善したが、20年3月(62.7%)以来の高水準となった3月の62.4%を下回った。なお、コロナ感染拡大直前の20年2月は63.4%である。労働力人口は前月比33.0万人増と、増加に転じた。

就業率は60.1%と、前月の60.0%を上回り3月に水準に並んだ。コロナ感染拡大の20年2月の61.2%の回復にまた一歩近づいた

コロナ禍を理由に在宅勤務を行ったとする労働者の割合は7.4%と前月の7.7%を下回った。新型コロナウイルス感染者が下げとまったものの、パンデミック下で最低を更新した。

コロナ禍が理由で過去4週間に職探しをしなかった労働者は45.5万人と、前月の58.6万人から減少しコロナ禍で最低を更新。労働参加率も、つれて上昇に転じた。

チャート:職探しをしなかった労働者はパンデミック下で最低、労働参加率は再び上昇

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(作成:My Big Apple NY)

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.6%増(73.3万人増)の1億3,280万人だった。パートタイムは同1.2%減(32.5万人減)の2,577万人と、3ヵ月ぶりに減少した。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全就業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全就業率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全就業率は、7.1%と前月の7.0%から上昇。2020年1月以来の低水準となった3月の6.9%を上回り続けた。

チャート:不完全就業率は改善にブレーキ、労働参加率の上昇も限定的

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(作成:My Big Apple NY)

2)長期失業者 採点-△
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は9.6週と、過去2ヵ月間の7.5週から延びた。27週以上にわたる失業者の割合は23.2%と前月の25.2%を下回り、1回目の失業保険給付上乗せが終了した2020年9月以来の低水準。一部の長期失業者が労働市場から退出した可能性を示唆する。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、5月に再び低下

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(作成:My Big Apple NY)

3)労働参加率 採点-△
労働参加率は62.3%と前月の62.2%を超えたものの、2020年3月以来(62.7%)の水準回復は未だ遠い。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。

4)賃金 採点-△
今回は2ヵ月連続で前月比0.3%上昇し、過去16カ月連続で上昇しなかで2番目に小幅な伸びにとどまった。前年比は5.2%と、2ヵ月連続で前月を下回った。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.6%と、前月の0.4%から加速し5ヵ月ぶりの高い伸び。ただし前年比は6.5%の上昇と、逆に5ヵ月ぶりの低い伸びだった。

(カバー写真:Amtec Photos/Flickr)

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