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米2月個人消費やPCE価格指数は鈍化も、5月の利上げ観測再燃

by • April 3, 2023 • Finance, Latest NewsComments Off2742

PCE Inflation Cooled In February, But Fed Could Still Raise Rates One More Time.

米2月個人消費支出とPCE価格指数(コア含む)は、市場予想と前月値を下回る結果となりました。とはいえ、金融不安後退と併せ、FF先物市場は3月31日時点で5月2~3日開催のFOMCをめぐり、据え置き確率が51.6%に対し、0.25%利上げ確率が48.4%と拮抗する状態に。さらに、4月2日時点では利上げ見通しが55.6%と優勢に転じています。

チャート:5月FOMC、0.25%利上げ確率が逆転

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(作成:My Big Apple NY)

年内でみると、利下げ転換予想は7月で変わらず、11月、12月と合わせ年内3回を織り込む状況です。

チャート:FF先物市場、年内は3回連続の利上げ見通しで変わらず

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(作成:My Big Apple NY)

詳細は以下の通り。

米2月個人消費支出は前月比0.2%増と、市場予想の0.3%増を下回った。2021年3月以来で最大だった前月の2.0%増(1.8%増から上方修正)から大幅鈍化したものの、2カ月連続でプラスとなった。

〇個人消費支出

個人消費の結果は以下の通り。名目ベースは増加した半面、インフレを除く実質ベースは減少した。

・前月比0.2%増と2カ月連続で増加、市場予想の0.3%増を下回る、前月は2.0%増
・前年比では7.6%増と21年1月以降の増加トレンドを維持、前月は8.2%増
・実質ベース前月比0.1%減と過去4カ月間で3回目の減少、前月は1.5%増
・前年比では2.5%増と21年3月以降の増加トレンドを維持、前月は2.7%増

耐久財は自動車が前月比4.8%と押し下げ、マイナスに転じた。一方で非耐久財はガソリンが同3.6%増と値上がりもあって大幅に伸びたほか、食品・飲料や医薬品がそれぞれ同0.7%増とけん引。サービスは外食が同1.9%減だった半面、映画館入場料が同23.2%増と急増するなど、非耐久財とサービスが耐久財のマイナス分を打ち消した。

個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 横ばい、前月は3.6%増と3カ月ぶりに増加
・耐久財 1.4%減と過去4カ月間で3回目の減少、前月は7.0%増
・非耐久財 0.9%増と2ヵ月連続で増加、前月は1.7%増
・サービス 0.2%増と24ヵ月連続で増加、前月は1.2%増

チャート:個人消費、前月比の項目別内訳

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(作成;My Big Apple NY)

チャート:個人消費、前月比ベースでの名目と実質の違い

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(作成:My Big Apple NY)

〇個人所得

米2月個人所得は前月比0.3%増と、市場予想の0.2%増を上回った。前月の0.6%増に届かなかったものの、13カ月連続で増加した。

個人所得の結果は以下の通り。

・前月比0.3%増と13カ月連続で増加、市場予想の0.2%増を上回る、前月は0.6%増
・前年比では6.2%増と11ヵ月連続で増加、前月は6.4%増
・実質ベースは前月比0.1%増、前月は横ばいと6カ月連続での増加トレンドにブレーキが掛かる
・前年比では1.1%増と3カ月連続で増加、前月は1.0%増

個人所得のうち、名目ベースで賃金・給与は24ヵ月連続で増加したものの伸びは鈍化した。一方で、家賃収入が引き続き力強い伸びとなり全体を支えた。なお、米疾病対策センター(CDC)は21年8月、新型コロナウイルス感染予防策対策として、感染率が高い地域を対象に新たに21年10月3日まで住宅立ち退き猶予期間を設定。しかし、家主や不動産団体が撤回を求め提訴し、米連邦最高裁判所が21年8月26日に無効の判断を下したため、販売用物件の減少も重なって家賃の上昇が進行した。足元、新規契約分の家賃は前月比で下落が指摘されているが、家賃は基本1~2年契約のため、下落が反映されるまでラグを伴う傾向がある。

所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。

・賃金/所得 0.3%増と24ヵ月連続で増加(民間は0.3%増、政府部門は0.4%増)、前月は0.9%増
・経営者収入 0.1%減と2カ月連続で減少(農業は3.3%減、非農業は横ばい)、前月は0.1%減
・家賃収入 1.4%増と13ヵ月連続で増加、前月は1.2%増
・資産収入 0.2%増と13ヵ月連続で増加(金利収入が0.3%増、配当が0.2%増)、前月は0.5%増
・社会補助 0.5%増、前月は横ばい
・社会福祉 0.5%増、前月は横ばい(メディケア=高所得者向け医療保険は0.9%増、メディケイド=低所得者層向け医療保険は横ばい、失業保険は0.5%増、退役軍人向けは0.5%増と増加基調を維持、その他は0.9%増)

チャート:個人所得、前月比の項目別内訳

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(作成:My Big Apple NY)

〇可処分所得
・前月比0.5%増と13ヵ月連続で増加、前月は2.0%増
・前年比は8.4%増と10ヵ月連続で増加、前月は8.5%増
・実質ベースの可処分所得は0.2%増と8カ月連続で増加、前月は1.5%増
・前年比は3.3%増と15ヵ月ぶりに増加、前月は3.0%増

〇貯蓄率
4.6%、前月の4.4%を上回り22年1月以来の高水準。2019年平均の8.8%以下が続くが、1959年のデータ取得以降で3番目の低い伸びとなった2022年6月につけた2.7%から改善基調を継続、過去最低は2005年7月の2.1%。

チャート:個人消費の伸びが鈍化し、貯蓄率を小幅押し上げ

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(作成:My Big Apple NY)

〇個人消費支出(PCE)価格指数

Fedの積極的な利上げにも関わらず、前月比・前年比はそろって市場予想以下となったほか、前月も下回った。

・PCE価格指数は前月比0.3%上昇、市場予想の0.5%を下回る、前月は0.6%
・前年比は5.0%上昇、市場予想の5.1%を下回る、前月は5.3%(5.4%から下方修正)
・コアPCEデフレーターは前月比0.3%上昇、市場予想の0.4%を下回る、前月は0.5%(0.6%から下方修正)
・コアPCEの前年比は4.6%上昇、市場予想の4.7%を下回る、前月は4.7%

チャート:2月はCPIと合わせ、鈍化トレンドを継続

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(作成:My Big Apple NY)

――2月の個人消費が鈍化し、1月の力強い伸びが平年を上回る気温や季節調整による影響など、特殊要因によって押し上げられた実態を確認しました。今後、金融不安を受けて個人消費の伸びが鈍化するかが意識されます。

個人消費を占う上で注目された米3月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値は62.0と、速報値の63.4から下方修正され、4カ月ぶりに前月を下回りました。3カ月ぶりの低水準となります。現況指数も66.3(速報値は66.4)、期待指数も59.2(速報値は61.5)と、そろって下方修正されただけでなく、現況指数は3カ月ぶり、期待指数は4カ月ぶりの低水準でした。

1年先インフレ期待は3.6%と速報値の3.8%から下方修正され、2021年4月以来の水準に減速しました。5年先インフレ期待は前月と変わらず2.9%でした。

チャート:米1月ミシガン大消費者信頼感、短期のインフレ期待が著しく改善しセンチメントを押し上げ

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(作成:My Big Apple NY)

ミシガン大学の消費者調査担当ディレクターのジョアン・シュー氏は結果を受け、シリコンバレー銀行の経営破綻などの金融不安の影響について「消費者のマインドはその前から下向いており、限定的」と指摘しました。確かに、センチメントは4カ月ぶりに前月を下回りつつ、前年同月を4%上回っていたものです。とはいえ「全体的に消費者が景気後退を予期する傾向が強まっていることを示す複数の兆候が明らかになった」とコメント。しかも、消費者心理は全体的に低下しており、特に「低所得者、低学歴、若年層の消費者、及び株式保有高が上位の消費者で最も落ち込みが激しくなった」だけに、金融不安はセンチメントを押し下げたことに変わりなさそうです。

個人消費が今後鈍化するならば需要低下につながり、インフレを押し下げ、年内の利下げ転換を招く余地があると言えるでしょう。

(カバー写真:Kurtis Garbutt/Flickr)

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