米6月雇用統計、ベッセント財務長官の楽観的な予想に反し軟調な結果に

by • July 3, 2026 • Finance, Latest NewsComments Off on 米6月雇用統計、ベッセント財務長官の楽観的な予想に反し軟調な結果に160

June Jobs Report Disappoints, Defying Treasury Secretary Bessent’s Optimistic Forecast.

米6月雇用統計は、前月の速報値と反対に非農業部門就労者数(NFP)が市場予想の半分程度の伸びにとどまりました。しかも、過去2カ月分も下方修正。労働参加率の下振れにつれ失業率は低下しましたが、職探しをする失業者が減少しただけで、労働市場のひっ迫を示すとは言い難い状況です。平均時給は前年比で伸びが再加速したとはいえ、生産労働者・非管理職は引き続き低迷しており、労働市場が鈍化しつつある様子を浮き彫りとしました。ベッセント財務長官やハセットNEC委員長は、事前に米6月雇用統計について楽観的な予想を展開していましたが、とても力強い結果とは言えません。

結果、FF先物市場での9月利上げ確率は前日の67.7%から55.5%へ低下しました。引き続き年内利上げを織り込みますが、12月に後ずれしつつあります。

画像:FF先物市場、9月利上げ織り込み度が低下

(出所:Street Insights)

米6月雇用統計の結果を受けて、ドル円は一段安。一時160.62円と6月18日以来の安値をつけました。

チャート:ドル円、21時からのドル円の5分足、緑線は米10年債利回り

(出所:Street Insights)

今回の雇用統計のポイントは以下の通りで、全体的にネガティブ/ニュートラルが優勢です。

(労働市場にポジティブ)
・民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)、前年比で上向き
・失業率は低下
・完全解雇者の労働力人口の割合は低下
・家計調査の就業者数は5カ月ぶりに増加
・不完全雇用率は低下

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)
・NFPは市場予想以下の伸び
・過去2カ月分は下方修正
・平均時給の伸び、前年同月比でまちまち
・週当たり平均労働時間は前月と変わらず
・労働参加率は低下
・就業率は低下
・長期失業者の割合は高止まり
・フルタイムは年初来で4回目の減少
・パートタイムは3カ月ぶりに減少

以下は、今回の雇用統計の詳細。

〇非農業部門就労者数

米6月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比5.7万人増となり、市場予想の11.0万人増を下回った。前月は17.2万人増→12.9万人増に下方修正された。

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比4.9万人増と市場予想の11.0万人増を下回った。前月の9.7万人増(12.0万人増から上方修正)にも届かず。民間サービス業は同3.9万人増と、前月の9.0万人増(9.2万人増より下方修正)以下となり、民間就労者数と合わせ過去4カ月間で増加したなかで最小の伸びに終わった。

チャート:NFPと失業率

(出所:Street Insights)

チャート:民間就労者数、3カ月連続で伸び鈍化

(出所:Street Insights)

過去2カ月分は7.4万人の下方修正
・4月 17.9万人増→14.8万人増、3.1万人の下方修正
・5月 17.2万人増→12.9万人増、4.3万人の下方修正

チャート:NFPと修正幅(グレー枠は2023年以降の修正幅)

(出所:Street Insights)

サービス部門のセクター別動向は11業種中で6業種で増加、速報値ベースでの前月の7業種を下回った。今回最も雇用が増加した教育・健康、次いで専門サービス、その他サービスが並んだ。一方で、5月に雇用をけん引した娯楽・宿泊が5カ月ぶりに減少したほか、情報、小売、公益の4業種が減少した。

(サービスの主な内訳)

(出所:Street Insights)

5月の速報値でNFPを押し上げた娯楽・宿泊は同6.5万人減、W杯の特需はく落を映し出した。なお、前月は同7.0万人増→4.0万人増へ下方修正された。

チャート:娯楽・宿泊は夏休みに入ったというのに、W杯の特需はく落を受け5カ月ぶりに減少

前月に続き、今回も政府が同0.8万人増と小幅ながら下支えした。なお、前月は速報値の同5.1万人増→3.2万人増に下方修正された。

チャート:政府は地方政府が支え、2カ月連続で増加

(出所:Street Insights)

財生産業は前月比1.0万人増と、4カ月連続で増加。業種別をみると、引き続き建設がのびを主導したほか、製造業が3カ月ぶりに増加に反転。ただし、鉱業・掘削が4カ月ぶりに減少した。

(出所:Street Insights)

チャート:業種別、雇用の増減

(出所:Street Insights)

〇平均時給

平均時給は前月比0.3%上昇の37.53ドル(約6,060円)、市場予想並びに前月一致した。2021年2月以降の上昇トレンドを維持。前年同月比は3.5%で市場予想通り、2021年5月以来の低い伸びに並んだ前月の3.4%を上回った。生産労働者・非管理職も同3.4%と、逆に2021年5月以来の低い伸びにとどまり明暗が分かれた。

チャート:平均時給の前年比

(出所:Street Insights)

〇週当たり労働時間

週当たりの平均労働時間は、3カ月連続で34.3時間だった。財部門(製造業、鉱業、建設)が3カ月連続で40.1時間となった。コロナ禍で最長となった2022年2月の40.3時間以下を保ったままだ。ただし、全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.2時間と、上方修正された前月の33.3時間を下回った。2006年以降で最長を記録した2021年5月の33.9時間以下のトレンドを保つ。

チャート:週当たり平均労働時間

(出所:Street Insights)

〇総労働投入時間、民間の総賃金

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は週当たり労働時間が変わらず、民間の就労者数が前月比で鈍化した結果、前月比横ばいと増加を2カ月で止めた。

民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)は、前月比0.4%上昇と3カ月連続でプラス。前年同月比は4.4%増と、前月の同4.2%を上回った。3カ月平均は4.2%増と、前月を超えた。

チャート:民間部門の総賃金、前年比で4%台を維持

(出所:Street Insights)

〇失業率、労働参加率、就業率、不完全就業率、長期失業者

失業率は3カ月連続で4.3%を経て、今回は4.2%に低下した四捨五入前では4.172%。ただし、好調な労働市場を表すとは言い難い。労働参加率は61.5%と前月の61.8%を下回り、2021年3月以来の低水準となった動きを反映したためだ。職探し中の失業者が労働市場から退出した可能性がある。また、失業者数が同21.3万人減だった一方で、就業者数が同50.7万人減とそれを上回る落ち込みを示していた。

チャート:失業率の四捨五入前の推移

(出所:Street Insights)

自発的離職者数は前月比1.1万人減の90.5万人だった。自発的離職者数に占める失業者の割合は、前月の12.5%→11.0%へ低下した。

チャート:自発的離職者数の推移

(出所:Street Insights)

失業率が低下するなか、失職者数(一時的な解雇ではなく再編やM&Aなど会社都合での解雇者、派遣など契約が終了した労働者)は、前月比9.5万人減の251.1万人と、3カ月ぶりに減少した。ただし、他も減少が優勢ななかで失職者数の割合は前月の35.5%→35.6%へ上昇し、6カ月連続で1位を維持。失職者のうち、完全解雇者(会社都合や非自発的な事情で雇用が終了し、求職活動を開始した失業者)が労働人口に占める割合は1.04%へ低下し、2021年10月以来の高水準だった2月の1.19%以下を保った。

新規参入者は前月比4.6万人減の77.2万人だった結果、失業者に占める割合は前月の11.2%→10.9%へ低下した。労働市場への再参入者は同2.8万人増の223.7万人と、増加に反転。再参入者が失業者に占める割合は前月の30.2%→31.7%へ上昇した。

レイオフ(一時解雇)は前月比1.0万人減の76.8万人。ただし、小幅だったため失業者に占めるレイオフの割合は前月の10.6%→10.9%へ上昇した。

チャート:失業者の割合は失職者トップを維持

(出所:Street Insights)

チャート:失職者数は3カ月ぶりに減少

(出所:Street Insights)

チャート:労働人口に占める完全解雇者の割合、2021年10月以来の高水準だった2月以下が続く

(出所:Street Insights)

チャート:レイオフは2カ月連続で減少

(出所:Street Insights)

労働参加率は前述したように61.5%と、前月の61.8%を下回り2021年5月以来の低水準だった。20年2月(63.4%)以来の高水準を回復した23年11月の62.8%以下が続く。

就業率は59.0%と、前月の59.2%を下回り2021年10月以来の低水準だった。

チャート:労働参加率、就業率ともに2021年以来の低水準

(出所:Street Insights)

経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全雇用率は7.9%、前月の8.1%を下回った一方で、パートタイムの雇用は増加した。

チャート:不完全雇用率、4カ月ぶりに8%割れ

(出所:Street Insights)

失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は2021年12月の水準に並んだ前週の11.6週から11.0週へ小幅に短縮した27週以上にわたる失業者の割合も前月の27.5%→27.3%へ低下。とはいえ、2021年12月以来の高水準近くを保つ。これらの数字を踏まえれば、労働参加率の低下は長期の失業者が職探しを断念し、労働市場から退出している可能性を示す。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、21年12月以来の高水準

(出所:Street Insights)

〇病気が理由で働けないとする人々

「病気が理由で働けない」とする人々は、前月比11.8万人増の108.4万人。コロナ前平均の2015‐19年の平均値の93万人を上回った。

チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値から遠のく

(出所:Street Insights)

〇家計調査の就労者内訳

今回、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、家計調査の就業者数は前月比50.7万人減と、NFPの5.7万人増に反し大幅に減少した。NFPが年初来で5回増加した反面、家計調査の就業者数は5回減少し、乖離が目立つ。

チャート:NFPと家計調査の就業者数の推移

(出所:Street Insights)

家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、フルタイムが前月比751.4万人減と年初来の6カ月間で5回目の減少となった。パートタイム同5.3万人減と、3カ月ぶりに減少。複数の職を持つ者のみ、同12.6万人増の855.4万人と増加しており、NFPの増加と整合的だ(NFPは給与ベースで、1人でも2つ仕事を掛け持ちしていれば、2人分の雇用が増加したとカウントされる)。

チャート:フルタイムは減少続き、パートタイムは3カ月ぶりに減少

(出所:Street Insights)

チャート:複数の職を持つ者は増加

(出所:Street Insights)

なお、NFPで下方修正が続く理由は、回答率の低迷が一因と考えられる。また、回答率の低迷に伴い、業績が堅調で、回答する余裕のある企業の偏りが出るリスクも見込まれ、WSJ紙もその点を問題視していた。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、コロナ禍を経て他指標と同様に回答率は芳しくない。

今年とコロナ禍直前の結果を比較すると、以下の通り。

・CES(事業所調査、NFPや平均時給など)→25年3月に42.6%、20年2月は59%
・CPS(家計調査、失業率や労働参加率など)→25年4月に68.1%、20年2月は82.3%
・雇用動態調査(JOLTS、求人件数など)→25年3月に35.2%と、20年2月は56.4%

CPSは対面と電話での聞き取り調査により実施され、他と比較して高いとはいえ、それぞれ低迷したままだ。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは2025年1月から6万世帯→5.5万世帯へ削減した。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。なお、連邦政府職員削減の影響か、直近では更新が滞っている。

チャート:雇用関連の調査回答率は低迷

(出所:Street Insights)

(カバー写真:The White House/Flickr)

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