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米4月雇用統計:失業率は約50年ぶりの低水準、生産労働者の賃金は加速

by • May 4, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off3491

Unemployment Hits 50-Year Low, With Faster Production Workers Wage Growth.

米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比26.3万人増となり、市場予想の18.5万人増を上回った。前月の18.9万人増(19.6万人増から下方修正)も超え、3ヵ月ぶりの高水準となる。2月分の2.3万人の上方修正(3.3万人増→5.6万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で1.6万人の上方修正となった。2~4月の3ヵ月平均は16.9万人増と、2018年平均の22.3万人増を下回った。

なおトランプ政権が2018年3月23日から鉄鋼・アルミ関税を発動し、同年6月1日からは欧州連合(EU)、カナダ、メキシコも対象に含めた。中国に対しては同年8月23日から事前の340億ドルに160億ドルと合わせた500億ドル相当の追加関税を発動、同年9月24日から2,000億ドルの対中知財関税を実施した。2,000億ドル相当の対中関税措置については、2019年1月から関税率を10%から25%へ引き上げる懸念があったが、同年12月1日の米中首脳会談で90日間の猶予が設けられている。2019年1月30〜31日には米中ハイレベル通商協議で劉鶴副首相がワシントンを訪問、トランプ大統領とも会談し、大豆の500万トンを含め農産品の輸出拡大で合意した。さらに3月1日の米中通商交渉期限を前に、トランプ大統領が期限の延長を発表した。一方で、NAFTA再交渉は同年9月にカナダを含め合意が成立し、欧州とは同年7月の首脳会談にて通商協議入りで合意。日本とも個別で貿易交渉を開始、4月15~16日には茂木経済財政相が訪米し初会合を行なった。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比23.6万人増と前月の17.9 万人増(18.2万人増から下方修正)を上回った。民間サービス業も20.2万人増と、前月の15.8万人増(17.0万人増から下方修正)を大きく上回った。

NFP、3ヵ月ぶりの力強い増加幅を達成。

nfp
(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向では、1位に専門サービスが入り、前月の2位から再びトップを奪取した。2位は前月1位だった教育・ヘルスケア、3位は前月に続き娯楽・宿泊だった。今回、減少したセクターは前月に続き小売、公益、情報の3業種。前月は小売のみだった。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・専門サービス 7.6万人増>前月は2.4万人増、6ヵ月平均は3.8万人増
(そのうち、派遣は1.8万人増>前月は0.6万人減、6ヵ月平均は0.1万人増)
・教育・健康 6.2万人増<前月は6.9万人減、6ヵ月平均は5.2万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は5.3万人増<前月は6.5万人増、6ヵ月平均は4.7万人減)
・娯楽・宿泊 3.4万人増<前月は3.7万人増、6ヵ月平均は4.5万人増
(そのうち食品サービスは2.5万人増<過去12ヵ月平均2.7万人増)

・政府 2.7万人増>前月は1.0万人増、6ヵ月平均は1.0万人増
・その他サービス 1.4万人増<前月は2.0万人増、6ヵ月平均は1.0万人増
・金融 1.2万人増<前月は1.3万人増、6ヵ月平均は0.7万人増

・輸送・倉庫 1.1万人増>前月は0.2 万人減、6ヵ月平均は1.0万人増
・卸売 1.0万人増>前月は横ばい、6ヵ月平均は0.9万人増

・情報 0.1万人減<前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.3万人減
・公益 0.3万人減<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は横ばい
・小売 1.2万人減、3ヵ月連続で減少>前月は1.6万人減、6ヵ月平均は0.1万人減

財生産業は前月比3.4万人増と、前月の2.1万人増(1.2万人増から上方修正)を上回った。悪天候や政府機関の閉鎖が響いた2月を乗り越え、2ヵ月連続での増加となる。建設が支えたほか、製造業も前月の横ばいから改善した。ただし、鉱業は原油先物が戻りを試すなかでも減少へ反転した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 3.3万人増>前月は2.1万人増、6ヵ月平均1.8万人増
・製造業 0.4万人増>前月は横ばい、6ヵ月平均は1.3万人増
・鉱業・伐採 0.3万人減<前月は0.1万人増(石油・ガス採掘は横ばい、増加基調を6ヵ月で止める)、6ヵ月平均は横ばい

平均時給は前月比0.2%上昇の27.77ドル(約3,070円)となり、前月の伸びと変わらず(0.1%から上方修正)に並んだ。前年比は3.2%の上昇と、こちらも3月と変わらず。市場予想の3.3%に届かず、2月につけた2009年4月以来の力強い伸び(3.4%)を下回ったままだ。

週当たりの平均労働時間は34.4時間と、市場予想と前月の34.5時間から短縮した。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間が40.3時間と、前月の40.5時間から短縮したことが大きい。なお、財部門は1月に40.7時間だった。

失業率は3.6%と市場予想と前月の3.8%から低下し、1969年12月以来で最低だった。3月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2019年見通しを下回る。労働参加率は62.8%と、市場予想の62.9%並びに前月の63.0%以下にとどまり、7ヵ月ぶりの水準に逆戻りした。失業率は、労働参加率の低下が一因とみられる。また事業調査であるNFPと異なり就業者が10.3万人減だったことも、影響したようだ。失業者は38.7万人減となった。就業率は60.6%と、1~3月に2008年12月の高水準に並んだ60.7%を下回った。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.1%減の1億3,000万人と、小幅ながら2ヵ月連続で減少した。パートタイムは0.1%減の2,692万人と小幅ながら3ヵ月ぶりに減少した。増減数ではフルタイムが19.1万人減、パートタイムは2.3万人減だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数が前月を上回ったものの、週平均労働時間が短縮したため、前月比で0.1%低下しマイナスに転じた。平均時給が伸びを続けたため、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.1%上昇、15ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は前月通り7.3%と、前月に続き2001年3月以来の低水準に並んだ。ただし、経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は465.4万人と、前月の449.9万人を上回り2ヵ月連続で増加した。

2)長期失業者 採点-×
失業期間の中央値は9.4週と、8ヵ月ぶりの高水準だった前月の9.6週からわずかに短縮するも、2017年12月以来の低水準だった1月の8.9週を超えた。平均失業期間は22.9週と、前月の21.1週を超え、こちらも2008年7月以来で最短を記録した1月の19.3週を上回る。27週以上にわたる失業者の割合も21.1%と前月と変わらず、2008年8月以来の20%割れを遂げた1月の19.3%を上回ったままだ。

3)賃金 採点-△
今回は前月比0.2%の上昇と、前月と変わらず。前年比も3.2%と3月と一致、2009年3月以来の高水準だった2月の3.4%から鈍化したままだ。もっとも、生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.3%上昇の23.31ドル、前年比では3.4%の上昇と約10年ぶりの高い伸びだった2018年12月の3.5%に次ぐ力強さをみせた。全体の平均時給と合わせ、9ヵ月連続で3%を超えた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。

平均時給、前年比は全体と生産労働者・非管理職ともに鈍化。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-×
労働参加率は62.8%と、7ヵ月ぶりの低水準。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比0.3%減の1億6,247万人となり、4ヵ月連続で減少。逆に、非労働人口は0.7%増の9,622万人と3ヵ月連続で増加した。

――4月の雇用統計は、①力強いNFPの伸び、②平均時給が前月の伸びを下回ったとはいえ9ヵ月連続で3%乗せ、③平均時給の前年比は生産労働者・非管理職は再加速――と、好材料が並びました。一方で、①失業率が低下、②労働参加率が低下、③平均労働時間が財部門を中心に短縮、④長期失業者の指標の改善にブレーキ――などを確認しています。特に、労働参加率は25~54歳など男性の間で再び低下していたんですね。(以下、全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字)。

・25~54歳 89.2%<前月は89.5%と2010年6月以来の高水準
・25~54歳(白人) 90.2%<前月は90.8%と2009年11月以来の高水準
・25~34歳 89.1%<前月は89.9%と2012年1月以来の高水準
・25~34歳(白人) 90.3%<前月は91.3%と2012年11月以来の高水準

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(出所:My Big Apple NY)

そうはいっても、男性の労働参加率が低下するなかで、平均賃金が3%超えを維持していることを踏まえれば、労働市場の逼迫に合わせ企業は賃上げに応じていると考えられます。5月FOMCでFedは利上げ、利下げのバイアスがない姿勢を貫きましたが、賃上げが物価押し上げに貢献すれば、政策に変化が現われるのでしょうか。

(カバー写真:Eric Allix Rogers/Flickr)

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