20598483128_8fc96a4dc6_c

米8月個人消費は予想を上回る増加も前月分は下方修正、貯蓄率は低下

by • October 3, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off1733

Personal Spending Increase While Saving Rate Decline.

米8月個人消費支出は前月比0.8%増と、市場予想の0.6%増を上回った。前月の0.1%減(0.3%増から下方修正)を超え、年初来で5回目の増加となる。個人所得は同0.2%増と、市場予想の0.3%増に届かず。前月の1.1%増を下回ったが、3ヵ月連続で増加、年初来で5回目のプラスとなった。個人消費支出の伸びを所得が上回ったため、貯蓄率は9.4%と、再びコロナ直前の水準(8.3%)に接近した。7月15日から開始した1人当たり最大300ドルの子育て世帯向け税額控除の前払いが開始するなか、学校再開を受け新学期セールに押し上げられ、個人消費は増加したが、所得が伸び悩んだ分、貯蓄率を押し下げた。詳細は以下の通り。

〇個人消費支出
→子育て世帯向けの税控除前払いを支えに前月の減少から増加に転じた。米8月新車販売台数が20年6月以来の低水準だったため、耐久財は4ヵ月連続で減少。ただ、食品や服飾、光熱費やヘルスケアなどが支え、非耐久財はガソリン価格が高騰し約7年ぶりの水準を付けるなかでも増加に反転。デルタ株感染拡大がみられた一方で、ワクチン普及を追い風に娯楽やヘルスケアが支え、サービスは6ヵ月連続で増加し個人消費支出全体を押し上げた。

・前月比0.8%増、市場予想超え、7月は0.1%減(0.3%増から下方修正)
・前年比11.8%増と6ヵ月連続で増加したなかで最も小幅な伸び、7月は11.8%増
・インフレを除く実質ベースでの個人消費は前月比0.4%増と年初来で5回目の増加、7月は0.5%減
・前年比では7.0%増と6ヵ月連続で増加しなかで最も小幅な伸び、7月は7.3%増

個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 1.2%増と年初来で5回目のプラス、前月は2.1%減
・耐久財 0.4%減と4ヵ月連続で減少し年初来で5回目のマイナス、前月は4.1%減
・非耐久財 2.1%増と年初来で4回目のプラス、前月は1.0%減
・サービス 0.6%増と6ヵ月連続で増加し年初来で7回目のプラス、前月は1.1%増

チャート:個人消費、前月比の項目別内訳

pce21aug_spending_mom
(作成;My Big Apple NY)

〇個人所得
子育て世帯向けの税控除前払い開始や賃金・給与が支えた半面、失業保険給付上乗せ終了がこうした伸びを一部打ち消した。賃金・給与は、6ヵ月連続で増加。その他、住宅価格の高騰を受け賃貸需要が高まり、家賃収入も2ヵ月連続で増加した。なお、米疾病対策センター(CDC)は8月、新型コロナウイルス感染予防策対策として、感染率が高い地域を対象に新たに10月3日まで住宅立ち退き猶予期間を設定。しかし、家主や不動産団体が撤回を求め提訴し、米連邦最高裁判所が8月26日に無効の判断を下した結果、家賃の上昇が進み始めている。

・前月比0.2%増と3ヵ月連続で増加し年初来で5回目のプラス、市場予想の0.2%増を上回る、7月は1.1%増
・前年比では6.1%増と4ヵ月連続で増加、7月は2.8%増
・実質ベースでは前月比0.2%減と年初来で5回目のマイナス、7月は0.7%増
・前年比は1.7%増と5ヵ月ぶりに増加、7月は1.3%減

所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。

・賃金/所得 0.5%増と6ヵ月連続で増加(民間は0.5%増、政府部門は0.2%増)、前月は1.1%増
・経営者収入 1.5%減と2ヵ月連続で減少(農業は7.4%減、非農業は1.1%減)、前月は0.3%増
・家賃収入 0.5%増と2ヵ月連続で増加、前月は0.4%増
・資産収入 横ばい、前月は0.1%増(配当が横ばいとなり増加を4ヵ月連続で止める、金利収入が5ヵ月連続で横ばい)
・社会補助 0.3%増と2ヵ月連続で増加、前月は3.0%増
・社会福祉 0.5%増と2ヵ月連続で増加、前月は3.4%増(メディケア=高所得者向け医療保険は0.6%増と4ヵ月連続で増加、メディケイド=低所得者層向け医療保険は0.9%増と9ヵ月連続で増加、失業保険は3.7%減と5ヵ月連続で減少、退役軍人向けは1.2%増と増加基調を維持、その他は2.0%増)

チャート:個人所得、前月比の項目別内訳

pce21aug_income_mom

(作成:My Big Apple NY)

〇可処分所得
・前月比0.1%増、前月の1.1%増を含め2ヵ月連続で増加
・前年比は4.5%増と年初来で6回目のマイナス、7月は0.8%増
・実質ベースの可処分所得は前月比0.3%減と年初来で4回目のマイナス、7月は0.7%増
・前年比は0.2%増と5ヵ月ぶりに増加、7月は3.2%減

〇貯蓄率
・9.4%、7月の10.1%を下回りコロナ直前にあたる2020年2月の8.3%に接近

チャート:個人消費が前月比で個人所得を大きく上回ったため、貯蓄率はほぼコロナ前の水準に戻す

pce21aug
(作成:My Big Apple NY)

〇個人消費支出(PCE)デフレーター
→油価の上昇やサプライチェーン途絶による影響を受け、高止まりが続く。PCEデフレーターの前年比は1990年1月以来、コアPCEも1991年7月以来の高水準だった。インフレ加速は一時的との見方を示していたFRBだが、9月FOMCでは参加者はインフレ見通しを上方修正するなど、物価高への警戒を強めた。

・PCEデフレーターは前月比0.4%の上昇、市場予想と一致、6月は0.5%の上昇
・前年比は4.3%上昇、1990年1月以来の高い伸び、市場予想と一致、6月は4.0%の上昇
・コアPCEデフレーターは前月比0.3%上昇、市場予想と一致、6月は0.5%の上昇(0.4%から上方修正)
・コアPCEの前年比は3.6%上昇と1991年7月以来の高い伸びを維持、市場予想と6月(3.5%から上方修正)と一致

チャート:物価上昇を受け、実質賃金の伸びを抑制へ

pce21aug_pce
(作成:My Big Apple NY)

――米8月個人消費は前月比0.8%増、インフレを除く実質ベースでの個人消費も同0.4%増と、デルタ株感染拡大を受けながら堅調でした。しかし、7月分の落ち込みもあって、エコノミストは7~9月期の個人消費を下方修正し、前期比年率1.0%程度しか予想していません。当然ながら、GDPの約7割が伸び悩めば実質GDP成長率の予想も引き下げざるを得ず、アトランタ地区連銀のGDPナウでは10月2日時点で前期比年率2.3%増と、従来の3.2%増から下方修正しました。4~6月期の同6.7%増から、ほぼ半減が見込まれています。

足元、消費者のマインドは低迷したままです。米9月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値は3ヵ月ぶりに前月を上回り72.8でしたが、2011年12月以来の低水準近くを維持米9月消費者信頼感指数は109.3と7ヵ月ぶりの低水準でした。

チャート:ミシガン大学消費者信頼感指数と消費者信頼感指数、共に足元は低調な推移

mi-sep21

cb21sep
(作成:My Big Apple NY)

それでも、足元のFRB高官の発言を踏まえると、Fedは年末までにテーパリングを開始する見通し。足元で3.5兆ドルの育児や医療などの支援を盛り込んだ3.5兆ドルの歳出案で民主党内で揉めていますが、少なくともいずれかの時点で決着すれば、成長を支える期待を残します。

(カバー写真:Pasco County Schools/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.