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米9月雇用統計・NFPは失速も、11月FOMCテーパリングの道残す

by • October 8, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off2015

Job Growth Slows Sharply Again, But Fed Likely To Announce Taper In November.

<本稿のサマリー>

米9月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、2ヵ月連続で大幅に鈍化しました。ただし、過去2ヵ月分の上方修正を合わせれば市場予想に近い数字になるため、それほど悪い数字のようには見えません。パウエルFRB議長は9月FOMC後の記者会見で「よい」雇用統計ならばテーパリングが開始できると発言しており、11月2~3日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で開始する可能性は高いと言えるでしょう。一方で、失業率の一段の改善は、労働参加率の低下が一因でした。米失業保険給付上乗せが9月6日に撤廃しても、長期失業者を始め労働市場から退出した可能性を示唆します。労働参加率が低下するなかで平均時給も加速し、財の労働時間が延びるなど、人手不足の状況はさらに深刻化している様子が伺えます。

今回の結果を受け、米株の主要3指数はNY時間13時時点で米株相場は概して横ばい。米債市場は売りで反応(米債利回りは上昇)し米10年債利回りは約4ヵ月ぶりに1.6%台に乗せました。一方で、ドルは売り優勢となっています。今回のポイントは、以下の通り。

(労働市場にポジティブ)

・NFPの過去2ヵ月分は16.9 万人の上方修正
・平均時給は前月比と前年比ともに力強く上昇
・週当たり労働時間は前月超え、財部門が2019年3月以来の長さに
・失業率は4.8%、20年3月以来の低水準
・就業率は58.7%、20年3月以来の水準を回復
・不完全就業率は8.5%、コロナ感染拡大直前の20年2月以来の低水準
・長期失業者の割合は34.5%と20年10月以降で最低、失業期間の中央値なども軒並み改善
・フルタイムの雇用が増加(パートタイムは減少)

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・NFPは2ヵ月連続で大幅減速、年初来で最も小幅な伸び
・雇用の先行指標である派遣が2ヵ月連続で減少
・労働参加率は4ヵ月ぶりに低下、20年6月以降のレンジ61.4~61.7%を突破できず
・コロナが理由で職探しできなかった人々が増加

米9月雇用統計の詳細は、以下の通り。

米9月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比19.4万人増となり、市場予想の50万人増を大きく下回った。前月の36.6万人増(23.5万人増から上方修正)にも届かず、年初来から9ヵ月連続で増加するなかで最も小幅にとどまった。8月2日に成人人口における1回以上のワクチン接種率が70%を突破するものの、デルタ株の感染拡大が重石となったようだ。

7月分の3.8万人の下方修正(105.3万人増→109.1万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で16.9万人の上方修正となった。7~9月の3ヵ月平均は55.0万人増と、コロナ禍前の2019年平均である16.8万人増を大幅に上回った水準を維持した。

20年5月以降、今回で1,739万人の雇用を取り戻した。ただ、同年3~4月の記録的な減少(2,236万人)を打ち消し同年2月の水準を回復するには、あと497万人必要となる。

チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと497万人増加する必要あり

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(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比31.7万人増と市場予想の46万人増を下回った。前月の33.2万人増(24.3万人増から上方修正)を含め、小幅ながら9ヵ月連続で増加した。民間サービス業は26.5万人増、前月の29.5万人増(20.3万人増から上方修正)を下回った。

チャート:NFPは9ヵ月連続で増加し、失業率も20年3月以来の水準に低下

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、政府を含め11業種中で7種が増加した。今回最も雇用が増加した業種は娯楽・宿泊で、続いて前月1位の専門サービス、3位に年末商戦前の臨時雇用に支えられ小売が入った。一方で、4業種は減少。政府が7ヵ月ぶりに減少した。専門サービス内のサブカテゴリーであり雇用の先行指標とされる派遣、公益は2ヵ月連続で減少。教育・健康は8ヵ月ぶりに減少した。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種

・娯楽/宿泊 7.4万人増、8ヵ月連続で増加>前月は3.8万人増、6ヵ月平均は28.1万人増(そのうち食品サービスは2.9万人増>前月は2.5万人減と8ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は15.1万人増)
・専門サービス 6.0万人増、5ヵ月連続で増加<前月は8.5万人増、6ヵ月平均は4.6万人増(そのうち派遣は0.5万人減、2ヵ月連続で減少<前月は0.4万人減、6ヵ月平均は1.2万人減)
・小売 5.6万人増、3ヵ月ぶりに増加>前月は0.4万人減、6ヵ月平均は2.9万人増)

・輸送/倉庫 4.7万人増、5ヵ月連続で増加<前月は5.5万人増、6ヵ月平均は2.4万人増
・情報 3.2万人増、10ヵ月連続で増加<前月は2.9万人増、6ヵ月平均は2.1万人増
・卸売 1.7万人増>前月は0.3万人減と13ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は1.3万人増
・金融 0.2万人増、3ヵ月連続で増加<前月は1.1万人増、6ヵ月平均は1.1万人増

―減少した業種

・公益 0.1万人減、2ヵ月連続で減少=前月は0.1万人減、6ヵ月平均は横ばい
・教育/健康 0.7万人減、8ヵ月ぶりに減少<前月は5.1万人増、6ヵ月平均は4.5万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は1.2万人増、8ヵ月連続で増加<前月は0.2万人増、6ヵ月平均は2.0万人増)
・その他サービス 1.6万人減、9ヵ月ぶりに減少<前月は3.4万人増、6ヵ月平均は3.1万人増
・政府 12.3万人減、7ヵ月ぶりに減少<前月は3.4万人増、6ヵ月平均は7.4万人増

財生産業は、前月比5.2万人増となった。前月の3.7万人増(修正値)を上回り5ヵ月連続で増加した。業種別をみると、製造業が5ヵ月連続で増加したほか、油価が10月8日に2014年以来の80ドルを回復する過程で、鉱業・伐採は8ヵ月連続で増加した。建設は住宅市場の在庫ひっ迫と価格高騰を受けながら、増加に転じた。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・製造業 2.6万人増、5ヵ月連続で増加<前月は3.6万人増、6ヵ月平均は2.5万人増
・建設 2.2万人増>前月は横ばい、6ヵ月平均は横ばい
・鉱業/伐採 0.4万人増(石油・ガス採掘は1,100人増)、8ヵ月連続で増加<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

チャート:9月のセクター別増減

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:20年2月との比較では、引き続き輸送・倉庫のみ当時の水準を上回る

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.6%上昇の30.85ドル(約3,400円)と、市場予想の0.4%を上回った。前月の0.4%(0.6%から下方修正)を含め6ヵ月連続で上昇した。前年比は4.6%上昇し市場予想と一致しつつ、前月の4.0%(4.3%から下方修正)を超え、7ヵ月ぶりの高い伸びとなり賃上げ圧力を確認した。

チャート:平均時給は力強く伸び、賃上げ圧力を示唆

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は34.8時間と、市場予想の34.7時間を上回った。前月の34.6時間(34.7時間から下方修正)を超えたが、2006年以来の最長を記録した1月の35時間を8ヵ月連続で下回った。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.4時間と、前月の40.0時間を超え2019年3月以来の高水準に並んだ。逆に、全体の労働者の約7割を占める民間サービスは3ヵ月連続で33.6時間となり、年初来での最低を維持。2006年以降で最長を記録した1月の33.9時間以下が続く。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が前月を大幅に下回る伸びだったが、平均労働時間が延びたため、前月比0.5%増と7ヵ月連続で増加した。平均時給が6ヵ月連続で上昇しただけでなく前月を上回った結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月1.2%増だった。

失業率は4.8%と、市場予想の5.1%並びに前月の5.2%を下回り2020年3月以来の低水準となった。失業者が71.0万人減少しただけでなく、就労者数が52.6万人増加していた。同時に、6月の失業率を押し上げた自発的離職者数は3ヵ月連続で減少していた。労働統計局によれば、引き続き一時解雇された労働者が「雇用されているが休職中」として扱われるなど正確に反映されていない場合があり、これを考慮すると失業率は4.9%だったという。

チャート:9月の自発的離職者数は3ヵ月連続で減少も、失業者が減少したため割合は10.3%へ上昇

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(出所:My Big Apple NY)

労働参加率は61.6%と、6~8月の61.7%から低下した。ワクチンが普及する状況でも、労働参加率は20年6月以降、61.4~61.7%の狭いレンジにとどまり、コロナ感染拡大直前の20年2月の63.4%以下で推移し続けている。

就業率は58.7%と、前月の58.5%を上回った。20年3月以来の高水準だが、コロナ前の61.1%を下回ったままだ。

コロナ禍を理由に在宅勤務を行ったとする労働者の割合は13.2%と、パンデミック禍で最低となった7月に並んだ。

チャート:在宅勤務を行う労働者の割合

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(作成:My Big Apple NY)

コロナ禍が理由で過去4週間に職探しをしなかった労働者は9月に163万人と、コロナ禍以降で最低となった7月からした。

チャート:職探しをしなかった非労働人口は2ヵ月連続で小幅増加し、労働参加率は低下

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(作成:My Big Apple NY)

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.5%増(59.1万人増)の1億2,803万人だった。一方で、パートタイムは同0.1%減(36.0万人減)の2,575万人と、前月から減少に転じた。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全就業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全就業率 採点-〇
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む完全就業率は8.5%と、前月の8.8%を下回り20年2月以来の水準に低下した。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は、前月比9.9%減の446.8万人と3ヵ月連続で減少した。

チャート:不完全就業率と労働参加率はゆるやかに改善続く

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(作成:My Big Apple NY)

2)長期失業者 採点-〇
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均値は28.4週と、前月の29.6週から短縮し7ヵ月ぶりの低水準失業期間の中央値も13.3週と前月の14.7週から短縮し、2020年10月以来の低水準。6月に2012年1月以来の高水準(19.8週)に並んだ後、9月6日の失業保険給付上乗せ撤廃に合わせ急速に改善た。27週以上にわたる失業者の割合は34.5%と、前月の37.4%を下回り、2020年10月以来で最低となった。失業保険給付上乗せが9月6日に撤廃されるなか、労働参加率が低下したように長期失業者は労働市場から退出した可能性を示唆した。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、7月から急低下

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(作成:My Big Apple NY)

3)労働参加率 採点-×
労働参加率は6~8月の61.7%を経て、61.6%へ低下。1973年1月以来の低水準だった20年4月の60.2%を上回った水準を保つが、20年6月以降、61.4~61.7%のレンジを維持。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。

4)賃金 採点-〇
今回は前月比0.6%と6ヵ月連続で上昇し、前年比は4.6%と7ヵ月ぶりの高い伸びだった。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.5%上昇の26.01ドル、前年比は5.5%の上昇と年初来で最も高い伸びとなっただけでなく、2ヵ月連続で前年比は管理職を含めた全体を上回った。

(カバー写真:Dave Collier/Flickr)

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