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米10月雇用統計:労働参加率は黒人、高学歴で低下し改善に遅れ

by • November 7, 2021 • Latest News, NY TipsComments Off2275

Labor Participation Rate Shows Mixed Picture By Race And Gender.

米10月雇用統計は、非農業部門就労者数(NFP)が前月比53.1万人増と3ヵ月ぶりに50万人を超える増加を遂げるなど、好結果となりました。一方で、失業率は4.6%と労働参加率が伸び悩むなかで改善が進み、平均時給は前年同月比4.9%と引き続き賃上げ圧力を確認しています。ただし、市場は労働市場の回復を受け財政支援の必要性が後退したと判断したようで、米国債発行額が減少する見通しが強まり、米金利は低下しました。

ここでは、業種別の就労者数の変化や平均時給を始め、人種や学歴別など詳細を拾っていきます。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の前月比で0.4%上昇の26.26ドル前年比は5.8%の上昇と経済活動が再開し始めたばかりの2020年5月以来の上昇率を遂げた。

業種別を前月比でみると、同部門の平均時給の伸び以上だったのは13業種中で9業種と、前月の5業種を上回った。1位は上情報(1.1%上昇)、2位は娯楽・宿泊(1.0%上昇)、3位は専門サービス(0.7%上昇)となる。一方で、今回前月比で下落した業種は鉱業・伐採のみ(0.1%下落)で、9月の2業種(その他サービス:0.1%の下落、情報:0.3%の下落)から減少した。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

労働参加率が前月に続き61.6%にとどまるなか、働き盛りの男性(25~54歳)はまちまち。25~54歳の全米男性は前月と変わらなかったが、白人男性のみでは低下した。これは、45~54歳の間で前月の81.2%→80.9%へ低下したことが大きい。25~34歳は全米、白人男性そろって小幅改善した。以下、季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 88.1%=前月は88.1%、20年2月は89.1%
・25~54歳(白人) 89.2%<前月は89.3%と7~8月に続き20年3月以来の高水準、20年2月は90.6%
・25~34歳 88.2%、20年3月以来の高水準>前月は88.1%、20年2月は89.0%
・25~34歳(白人) 89.3%>前月は89.2%、20年2月は90.7%

チャート:働き盛りの男性、労働参加率は25~34歳の白人を除き低下

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(作成:My Big Apple NY)

働き盛りの女性の労働参加率は、改善した。

・25~54歳 75.4%、20年3月以来の高水準>前月は75.3%、20年2月は76.8%
・25~34歳 76.3%>前月は75.9%、4ヵ月ぶりの低水準、20年2月は78.2%

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男女でまちまちとなった。男性は23.8%と20年11月以来の高水準となった前月の24.0%から低下した。女性は逆に15.3%と、7ヵ月ぶりの水準を回復した。

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で0.2%増の597.8万人(男性は247.8万人、女性は350.0万人)。前月から増加した背景は、男性が微減した一方で、女性が0.3%増加していたためで、女性は4ヵ月連続で男性を上回った

チャート:就職を望む非労働力人口、ゆるやかに減少トレンドが一服

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(作成:My Big Apple NY)

〇男女の失業率、労働参加率
男女の失業率は男性が改善した一方で、女性は低下。逆に、労働参加は男性が低下し女性が上昇。男性が67.6%と20年3月以来の高水準に並んだ前月の67.7%から低下した半面、女性は7ヵ月ぶりの低水準だった前月の55.9%から56.0%へ上昇した。就業者数を20年2月比でみても、女性は非白人を軸に男性より下げ幅を依然として大きい。前述した働く意欲のある非労働力人口で女性が多い理由は、男性より就業しづらいことが一因と考えられる。

チャート:男女・人種別の就業者数、20年2月との比較

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年を比較すると、ご覧の通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。

チャート:人種別、25歳以上の大卒以上の割合

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(作成:My Big Apple NY))

人種別の労働参加率は、まちまち。デルタ株の新規感染者が8月末にピークアウトし、9月6日に失業保険給付上乗せも終了するなか、白人とヒスパニック系は前月と変わらず黒人は低下アジア系のみ大幅改善し2019年10月以来の高水準となった。

・白人 61.5%=前月は61.5%、20年2月は63.2%
・黒人 61.1%、5ヵ月ぶりの低水準<前月は61.3%、20年2月は63.1%
・ヒスパニック系 65.7%、20年3月以来の水準に並ぶ=前月は65.7%、20年2月は68.0%
・アジア系 65.2%、19年10月以来の高水準>前月は64.3%
・全米 61.6%=前月は61.6%、20年2月は63.3%

チャート:人種別の労働参加率、白人と黒人は低下

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(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率も、まちまち。労働参加率が前月比横ばいだった白人とヒスパニック系は低下、特にヒスパニック系は20年2月以来の水準まで改善が進んだ。しかし、失業率の低下は労働参加率の伸び悩みが背景にある。労働参加率が大幅に改善したアジア系と、労働参加率が低下した黒人は前月と変わらなかった

・白人 4.0%、20年3月以来の低水準<前月は4.2%、20年2月は3.0%
・黒人 7.9%、20年3月以来の低水準に並ぶ=前月は7.9%、20年2月は6.0%
・ヒスパニック系 5.9%、20年2月以来の低水準<前月は6.3%、20年2月は4.4%
・アジア系 4.2%、20年3月以来の低水準に並ぶ<前月は4.2%、20年2月は2.4%
・全米 4.6%、20年3月以来の低水準<前月は4.8%、20年2月は3.5%

チャート:10月はヒスパニック系が20年2月以来の低水準を遂げる

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(作成:My Big Apple NY))

白人と黒人の失業率格差は白人が低下した一方で黒人が横ばいだったため、3.9ポイントと8ヵ月ぶりの低水準だった前月の3.7ポイントからやや拡大した。引き続き、トランプ前政権で記録した19年8月の1.8ポイント超えの水準を保つ。

チャート:黒人と白人の失業率格差、トランプ前政権期と比較して上昇続く

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(作成:My Big Apple NY)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、中卒を除きて低下した。特に大卒は8ヵ月ぶりの低水準となった。

・中卒以下 46.5%、3ヵ月ぶりの水準を回復>前月は45.3%、20年2月は47.7%
・高卒 55.0%、7ヵ月ぶりの低水準<前月は55.1%、20年2月は58.3%
・大卒以上 71.9%、8ヵ月ぶりの低水準<前月は72.1%、20年2月は73.2%
・全米 61.6%<前月は61.7%と20年3月以来の高水準を維持、20年2月は63.3%

学歴別の失業率は、全て低下した。中卒は労働参加率が改善したにも関わらず、失業率が低下する好結果となった。一方で、大卒と大学院卒の失業率はそれぞれ労働参加率の低下を背景に、そろってコロナ感染拡大直前の20年2月以来の水準を回復した。

・中卒以下 7.4%、20年3月以来の低水準<前月は7.9%、20年2月は5.8%
・高卒 5.4%、20年3月以来の低水準<前月は5.8%、20年2月は3.5%
・大卒 2.4%、20年2月以来の低水準<前月は2.5%、20年2月は1.9%
・大学院卒以上 1.8%、20年2月以来の低水準<前月は2.5%、20年2月は1.7%
・全米 4.8%、20年3月以来の低水準<前月は5.2%、20年2月は3.5%

チャート:学歴別の失業率、大学院卒は2ヵ月連続で20年2月以来の低水準も労働参加率の低下が一因

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(作成:My Big Apple NY)

--米10月雇用統計は労働市場の改善を確認しつつ、高学歴を中心に伸び悩む労働参加率という課題を残します。特に今回は、大卒が8ヵ月ぶりの水準に低下していました。求人数が8月に1,000万人を超え過去最高を記録し、有効求人倍率も改善が進む割りに、潜在労働力が市場に戻っていない実態を浮き彫りとしています。労働省はベビーブーマー世代の引退を労働参加率低迷の主因に挙げますが、今回は25~34歳の若い層で改善すると共に、65歳以上の女性も上昇。むしろ、45~54歳が20年3月以来の高水準だった前月の81.2%から80.9%へ低下しており、パウエルFRB議長が雇用の最大化の定義に労働参加率をどう捉えるかについて明言を避け、物価高を背景に利上げへの柔軟性を保ったのは、致し方なかったのでしょう。

人種別で労働参加率がまちまちだった背景として、ワクチン接種動向が一因と考えられます。バイデン政権がコロナ対策としてワクチン接種義務化や陰性証明の導入を提示するなか、10月はコロナ感染者数がピークアウトした事情もあって、ワクチン接種率が人種別で最も高いアジア系(1回以上は71%)の労働参加率は19年10月以来の高水準でした。その陰で、ワクチン接種率の最も低い黒人(同48%)は、7ヵ月ぶり水準まで低下していました。

チャート:人種別のワクチン接種動向

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(作成:My Big Apple NY)

ワクチン接種義務化の余波は、労働市場に一定のインパクトを与えていたとしても、不思議ではありません。

(カバー写真:Carlton Theatre Group/Flickr)

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