Labor Force Participation Rate And Unemployment Rate For N0n-White Rose In February.
米2月雇用統計・NFPはこちらで紹介しましたように市場予想を上回りました。引き続き、NFPの増加を牽引したのは娯楽・宿泊に含まれる外食サービスで全体の23%と、引き続き高いシェアを有しています。なお、食品サービスがNFPに占める割合は2022年1月~23年1月の平均で7.7%でした。
チャート:NFPの増加幅に占める食品サービスの割合
そのほか失業率は1969年5月以来の低水準から上昇、労働参加率の改善が背景となって押し上げられました。一方で賃金は上昇したものの、退職金支払いが一因と考えられます。
では、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通りです。
〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給
生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比0.5%上昇し、2021年1月からの上昇トレンドで最も小幅な伸びにとどまった前月の0.3%(0.2%から上方修正)を上回った。前年同月比は5.3%と、前月の5.2%(5.1%から上方修正)を超え、2021年6月以来の5%割れから後退した。
業種別を前月比でみると、同部門の平均時給の伸び0.5%以上だったのは13業種中で6業種だった。前月は速報値で0.2%上昇し、9業種がこの水準を上回っていた。今回の1位は金融(1.1%上昇)、2位は輸送・倉庫(1.0%上昇)、3位は情報(0.6%上昇)、それぞれ2月の雇用が減少した業種が並んだ。4位は娯楽・宿泊と小売、専門サービス(0.5%上昇)だった。一方で、鉱業・伐採(0.7%下落)、製造業(0.7%下落)はマイナスとなった。製造業は雇用も減少したが、賃金もマイナスに落ち込んだ。労働参加率の上昇と合わせ平均時給の伸びも再加速したが、それでも賃上げ圧力は2022年と比較し落ち着いている。
チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額
チャート:平均時給は、労働参加率の改善に合わせて伸びが鈍化
〇労働参加率
労働参加率は62.5%と、2020年3月(62.6%)以来の水準となった。全米の働き盛りの男性(25~54歳)をみると、前月に続き25~34歳の間で顕著に改善した。一方で、25~54歳の白人は低下しており、白人の35歳以上、特に50代で労働参加率が低下したことを示唆した。以下は全米男性が季節調整済みで、白人は季節調整前となる。
・25~54歳 88.9%と20年3月以来(89.1%)の高水準、前月は88.5%、20年2月は89.2%
・25~54歳(白人) 89.4%と3カ月ぶりの水準へ低下、前月は89.8%、22年3月は90.0%と20年3月(90.3%)以来の高水準、20年2月は90.6%
・25~34歳 89.4%と22年4月以来の高水準(なお、22年4月は89.5%と19年11月以来の高水準)、前月は88.7%
・25~34歳(白人) 90.2%と4カ月ぶりの水準を回復(なお、22年10月は90.4%と22年3月の90.5%に次ぐ高水準)、前月は89.7%、20年2月は90.7%
チャート:働き盛りの男性、25~34歳は3カ月連続で上昇
働き盛りの女性(25~54歳)は、25~54歳と25~34歳そろって上昇した。
・25~54歳 77.2%と2000年4月以来の高水準、前月は76.4%
・25~34歳 78.0%と4カ月ぶりの78%乗せ、前月は77.9%、22年8月は78.6%と20年1月に並び過去最高
65歳以上の高齢者の労働参加率、男性は低下したが女性は上昇した。
・男性 23.3%と7カ月ぶりの低水準、前月は23.4%、22年10月は24.3%と2月と並び20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 15.7%と5カ月ぶりの低水準だった15.5%から回復、22年10月は16.1%と2020年3月と同水準
〇縁辺労働者
縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率の上昇に合わせ前月比4.0%減の510.3万人と、過去5カ月間で4回目の減少となった。男性が前月比7.6%減の251.4万人と全米と同じく過去5カ月間で4回目の減少となったほか、女性は同0.1%減の258.9万人と5カ月連続で減少した。
チャート:職を望む非労働力人口、2月は男女そろって減少
〇病気が理由で働けなかった人々
雇用増加を支えたのは、「病気が理由で働けない」とする人々が減少したことが一因と考えられよう。2月は前月比10.7万人減(3カ月連続で減少)の117万人で、過去3カ月間の労働参加率の改善と整合的だ。
チャート:病気が理由で働けなかった人々は、3カ月連続で減少
〇男女別の労働参加率と失業率
男女別の労働参加率は、そろって上昇。男性は68.0%となり、前月の67.9%を上回った。なお、男性は22年12月までは4カ月連続で68.1%と20年3月(68.5%)以来の高水準を保っていた。女性は57.2%と、20年3月の水準(57.1%)超えた。
チャート:男女別、労働参加率、直近は女性が改善を主導
男女の失業率は、まちまち。労働参加率が低下した男性は前月に続き3.6%だった。一方で、女性は労働参加率の上昇につれ、1952年9月以来の低水準に並んだ前月の3.3%から3.5%へ上昇した。
〇人種・男女別の就業者、20年2月比
人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、引き続き黒人男性を始めヒスパニック系男性、ヒスパニック系女性がプラスだったほか、黒人女性が2カ月連続でプラス圏を保った。。黒人男性は前月の8.2%増→9.8%増と回復期で最大の伸びとなった。黒人女性(前月の0.3%→0.8%増)、ヒスパニック系男性は前月の4.8%増→5.5%増ヒスパニック系女性(前月の3.3%増→4.1%増)も、それぞれ伸びを拡大した。
一方で、マイナス圏をたどる白人男性と女性はそれぞれ下げ幅を拡縮小。白人男性は前月の1.0%減→0.6%減、白人女性も前月の3.1%減→2.5%減だった。
チャート:男女・人種別の就業者数、20年2月との比較
〇人種別の労働参加率、失業率
人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。
人種別の労働参加率は、白人を除き著しく上昇。特に黒人が2008年12月以来の高水準だったほか、アジア系も20年2月の水準を超える上昇となった。ヒスパニック系も20年3月以来の水準を回復。白人のみ横ばいだった。
・白人 62.1%と前月と変わらず、22年3月は62.3%と2020年3月(62.6%)以来の水準を回復、20年2月は63.2%
・黒人 63.4%と2008年12月以来の高水準、前月は62.9%
・ヒスパニック系 66.8%と20年3月以来(66.9%)の高水準、20年2月は68.0%
・アジア系 65.1%と22年8月(65.3%)以来の高水準、20年2月の64.5%超え
・全米 62.5%と2020年3月(62.7%)以来の水準を回復、20年2月は63.3%
チャート:人種別の労働参加率、非白人が改善を主導
人種・男性別では以下の通り。黒人のみ新型コロナウイルス感染拡大直前の水準を超え、2010年5月以来の高水準をつけた。一方でヒスパニック系は上昇も、白人は低下した。
・白人 69.9%と6カ月ぶりの低水準、前月は70.0%、20年3月は71.0%
・黒人 69.3%と2010年8月以来(69.4%)の高水準、20年2月は58.2%
・ヒスパニック系 79.2%と6カ月ぶりの水準を回復、前月は78.8%、20年3月は79.9%
チャート:人種・男性別では黒人が回復傾向、白人は低下
人種・女性別では以下の通り。全て上昇し、特に黒人とヒスパニック系は20年2月以来の高水準だった。
・白人 57.4%と20年3月以来(57.6%)の高水準、20年2月は58.2%
・黒人 63.0%と20年2月以来(63.9%)の高水準、前月は62.6%
・ヒスパニック系 61.5%と20年2月以来(62.2%)の高水準、前月は61.1%
チャート:人種・女性別は黒人が改善を主導、次いでヒスパニック系、白人となる
人種別の失業率は、全ての人種で上昇した。特にヒスパニック系は5.3%と前月から0.8%ポイントも急伸し、21年10月以来の水準へ上昇した。アジア系も0.6%上昇、黒人も0.3%ポイント上昇。一方で、白人は労働参加率の低下にも関わらず0.1%ポイント上昇した。
・白人 3.2%、前月は3.1%、22年12月は3.0%と20年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 5.7%、前月は5.4%と過去最低は19年8月の5.3%に次ぐ低水準
・ヒスパニック系 5.3%と21年10月以来の高水準、なお22年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 3.4%、22年12月は2.4%と19年6月以来の低水準に並ぶ
・全米 3.6%、前月は3.4%と1969年5月以来の低水準
チャート:人種別の失業率は全て上昇、特にヒスパニック系など非白人で目立つ
人種・男女別では以下の通りで、黒人男性のみ低下しその他は全て上昇した。特に黒人女性が前月比0.5%ポイント上昇の5.3%、ヒスパニック系は男性が前月比0.4%ポイント上昇の5.7%と上振れした。
チャート:ヒスパニック系の男女の上昇が顕著に
白人と黒人の失業率格差は拡大。黒人の失業率の上昇幅を白人を上回ったため、失業率格差は2019年10月以来の低水準に並んだ前月の2.3ポイントから2.5ポイントへ広がった。トランプ前政権で記録した19年8月の1.9ポイントから後退した。
チャート:白人と黒人の失業率格差、2019年10月以来の水準まで縮小した前月から小幅拡大
〇学歴別の労働参加率、失業率
学歴別の労働参加率は、中卒以下のみ過去最高を更新しつつ他は低下した。
・中卒以下 48.3%と2008年3月(48.2%)を超え、過去最高を更新
・高卒 56.0%と3カ月ぶりの水準へ低下、前月は56.4%、22年1月は57.2%と20年2月(58.3%)以来の水準を回復
・大卒以上 72.3%と21年12月以来の低水準、22年5月は73.3%と20年1月以来の高水準
・全米 62.5%と20年3月(62.7%)以来の高水準、20年2月は63.3%
学歴別の失業率は、まちまち。労働参加率の上昇に合わせ中卒は0.7%ポイントも上振れした。一方で、高卒は労働参加率につれ失業率は低下、大卒は前月と変わらず。大学院卒は労働参加率が小幅上昇した動きにつれ、失業率も上昇した。
・中卒以下 5.8%と5カ月ぶりの高水準、22年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 3.6%、19年9月の低水準に並ぶ
・大卒 2.0%と前月と変わらず、22年9月は1.8%と07年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒以上 1.8%と6カ月ぶりの高水準、21年12月は1.3%と2000年4月以来の低水準
・全米 3.6%、前月は3.4%と1969年5月以来で最低<前月は3.5%
チャート:失業率は中卒と大学院卒で上昇、高卒は低下、大卒は前月と変わらず
--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。
①生産労働者・非管理部門の平均時給の上昇ペースは再加速、ただし金融や輸送・倉庫、情報など雇用が減少した業種の退職金上乗せが押し上げた可能性あり。
②働き盛りとされる25~54歳の労働参加率は白人以外、特に25~34歳を中心に改善。男女別でみると労働参加率は引き続き女性が上昇を主導。
チャート:年齢別をさらに細かく分けると、以下の通り。16~19歳(37.5%、6カ月ぶりの高水準)と20~24歳(72.0%、20年2月以来の高水準)が労働参加率の上昇が目立つ半面、55歳以上は38.4%と21年11月の低水準に並ぶ
③病気で働けなかった人々はコロナ禍以降の平均を下回るなか、労働参加率は62.5%と20年3月以来の水準を回復。低水準にある貯蓄率が示すように、労働市場への復帰を決意した潜在労働者が増加か。
④人種別では、非白人の間で労働参加率の上昇につれ失業率も上向いた。
⑤学歴別では、中卒のみ労働参加率の上昇につれ失業率も弱まった。一方で大卒以上は労働参加率が低下するなか、大卒の失業率は横ばいも大学院卒は上昇するなと、足元の雇用改善が低賃金職であることを示唆。
労働市場のひっ迫は続いているようにみえますが、足元の雇用改善は20年2月の水準を回復していない娯楽・宿泊、特にそこに含まれる食品サービスがけん引する状況です。米2月チャレンジャー人員削減予定数が示すように、ホワイトカラーを始め高賃金職でリストラが相次ぎ、シリコンバレー銀行が破綻したように、一部の高学歴の受け皿となっていたスタートアップ企業の資金繰りが米利上げを背景に困難となり、これまでのように採用拡大・雇用維持は厳しくなるでしょう。これから春を迎えますが、労働市場には冷たい風が吹き付けつつあるようです。
(カバー写真:Public Affairs/Flickr)
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