米中間選挙、不法移民問題が争点に浮上

by • August 23, 2010 • NY TipsComments (0)399

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※仕事向け原稿を時間差で更新したものです。通常の書き込みとは全く異なりますので、あしからず。


~合衆国憲法・修正第14条における変更論争が過熱~

アリゾナ州で4月23日に可決された新不法移民取り締まり法案が、全米で熱い注目を浴びている。同法案は合法的移民である証明書類を移民に強いる内容を盛り込んでおり、警察の職務質問で応じられない場合には逮捕を認めるもの。オバマ政権は移民問題が外交事項であると主張した結果、7月29日に施行される前日にアリゾナ州連邦地方裁判所は現時点で差し止めを決定している。それでも、アリゾナ州から始まった不法移民取り締まり強化の波は広がりをみせており、フロリダ州の司法長官は8月11日にもアリゾナ案より厳格化した移民規制強化案を発表。バージニア州でも同様の措置が検討されはじめ、リベラル派が主流とされるニューヨークでも、ヒスパニック系が「バイアス・アタック=差別的攻撃」の犠牲となる事件も発生した。「自由の国」アメリカは、中間選挙を前に保守化の動きを加速させつつある。

アリゾナ州の移民人口、米国9位の89.1万人の現状

 アリゾナ州の不法移民取り締まり法案の可決は、全米に不法移民問題の根深さを気づかせる一撃となった。不法移民摘発を強化する同法案は、警察官による任意の職務質問で合法移民である証明書を提示できない場合は逮捕されるケースを含む。同法案の通過によってアリゾナ州では抗議活動が火を噴き、50人近くにものぼる逮捕者が出る大問題に発展するまでにいたった。

なぜアリゾナ州で同法案が可決されたか、ひも解いてみよう。移民研究センターの調査によると、アリゾナ州での移民人口は2007年時点で全米50州のうち9番目に多い89.1万人。人口全体の14.2%を占める。特に2000-07年に移民した割合が移民人口の30%以上におよび、米国西南部とメキシコに近いこともあって足もとの急増が目立つ州のひとつだ。米国勢調査局の2008年のデータでも、移民の筆頭とされる中南米・南米系の人口は30.1%を占めている。全米での割合が15.4%であることを踏まえると、特出して高い。

中南米・南米系の人口増加の主因は、アリゾナ州での措置で想像できるように不法移民が挙げられる。12日付けのウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、2008年に米国で生まれた新生児の実に12人に1人が不法移民の出自であることが分かった。超党派の調査機関ピュー・ヒスパニック・センターの調査では、不法移民の成人は米国の人口の4%にとどまるにも関わらず、出生者の割合は実に倍の8%に及ぶ。2009年3月の調査では、米国に居住する移民の出自の子供のうち510万人、79%相当が米国生まれとあって米国市民権を保有。不法移民は米国で1100万人と計算され、そのうち75%が中南米・南米出身者で、不法移民の新生児のうち85%が同系だった。

連邦地方裁判所は反対を受け同法案の差し止めを決定し、オバマ米大統領も不法移民とあって外交問題が絡むことから米連邦政府の管轄事項と強調する。ただ中間選挙を控え、保守派からは米国内で出生した新生児に自動的に市民権を与えるという合衆国憲法修正第14条の変更を目指す主張も飛び出しており、全米で大論争がぼっ発する状況。米国民の間で論争は加速度的にヒートアップしている。

↓10年前には見られなかった、地下鉄内のスペイン語広告。

My Big Apple

リベラルが多数派のNYでも、「バイアス・アタック」が発生

ニューヨークでも、不法移民に対する弾圧が先鋭化してきた。比較的、低所得者層が多く住むスタッテン・アイランドでは7月末、メキシコ人移民の18歳の少年がバイアス・アタックの標的となって倒れた。メキシコ移民の彼は、殴る蹴るの暴行を受けた挙句、10ドルを盗まれたという。各メディアによるとニューヨーク市警が逮捕した容疑者は、なんと15歳の少年だった。しかも被害者の知人であることが分かっている。NY市警によると、スタッテン・アイランドで発生した「ヘイト・クライム=人種差別に絡む犯罪」は、今年に入ってこれで11件目だ。

中南米・南米人口の比率が州全体の16.7%(2008年時点、米国勢調査局調べ)であるニューヨークですらバイアス・アタックが暗い影を落とすなか、伝統的にリベラルが多数派を占めるニューヨーカーの間でも、同問題には保守色を帯びる意見が聞かれる。黒人系のあるエンジニアは、アリゾナ州の規制強化に対し「当然の措置」と豪語する。なぜなら「連邦政府が不法移民の流入を断固として防止しないなら、自衛するしかない」ためだ。また、同氏は「寝た子を起こすような論争に発展しているけれど、不法移民問題は無視できない」と指摘しつつ、「全米の注目を集めるには、いい作戦だった」とアリゾナ州のブリュワー州知事にエールを送る。白人系の債券トレーダーも「税金も払わないで、低賃金という労働のパイを奪い取る不法移民なんていらない」と規制強化に賛成を唱える一人だ。

民主党寄りとされるニューヨーカーですら不法移民に批判の矛先を向けるなか、全米でも保守派の勢いが増しつつある。アリゾナ州と同様に不法移民問題に頭を悩ませるフロリダ州(中南米・南米人口21.0%)でも、知事の椅子を狙う共和党・マッコラム司法長官がアリゾナ案をさらに厳格化させた規制法案を発表した。バージニア州(中南米・南米人口6.8%)やユタ州(中南米・南米人口12.0%)でも、同案が検討されている。2007年当時、チャールズ・シューマー米上院議員(民主党・ニューヨーク州選出)とともに人民元切り上げの急先鋒となった保守派で名高いリンゼイ・グラハム米上院議員(共和党・サウスカロライナ州選出)も、移民規制に同調する。同氏は「私は現実的なタイプだが」とことわりつつ、7月後半にフォックス・ニュースで「今後20年間で2000万人以上の不法移民の新生児が米国市民権を保有することを望まない」と発言していた。

民主党が中間選挙でスウィング・ステートで勝利が危ぶまれる事情から、オバマ氏は選挙戦の行方をにらみ、中南米・南米層の支持を磐石とする目的で各州に対し不法移民規制強化案の差し止め要請を濫発するだろう。一方で、米上院は6億ドルの国境警備強化法案を可決させた。不法移民強化策に反対するオバマ氏とはいえ、可決を受け13日に署名を行っている。

財政赤字を防ぐため、同法案の通過とともに財源が割り当てられた。対象は移民の流入の誘い水ともなりうる、ビザ申請費。専門職向けであるH1-Bビザの申請費用はこれまでの320ドルから、約4000ドルへ大幅に引き上げられる。従業員が50人以上で、かつ半数以上がH1Bビザ保持者である企業向けに実施される。駐在員向けのLビザ申請費用も、同額へ引き上げられた。

ギャラップが8月10日に発表した調査によると、オバマ氏の支持率が最も低い項目のひとつは移民対策で何と62%と過半数を占めた。支持率にいたっては、29%と最低を記録。足もと不法移民の総数が約1100万人と米国の人口の3.5%を占めることもあり、オバマ政権の移民政策は難しい舵取りが迫られている。(了)

↓米中間選挙は、かなり苦戦を強いられそう。

My Big Apple

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