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映画「フライト」、個人的な副題は「Fight Or Flight」

by • January 27, 2013 • GossipComments (0)3101

Fight or “Flight”.

第85回アカデミー賞にて、脚本賞と主演男優賞の2部門でノミネートされた「フライト(Flight)」。映画史に残る「バック・トゥ・ザ・フューチャー(Back To The Future)」3部作、「フォレスト・ガンプ(Forrest Gump)」などで日本でもお馴染みのロバート・ゼメキス監督作品のこちら、同氏にとっては「キャスト・アウェイ(Cast Away)」以来12年ぶりの実写映画になります。あえてピンぼけとはいえ女性の豊満な乳房が冒頭シーンを飾るように完全大人向けですから、32年ぶりのR指定でもあったり。

あらすじはといいますと。

全員死亡となりうる最悪の墜落事故からからくも旅客機を救ったパイロットのウィップ・ウィテカー(Whip Whitaker)は、国民的英雄となりえた。しかし腕の確かなベテラン・パイロットの彼には、アルコールとドラッグの中毒者であり家族から見放された一面が隠されていた・・。

パイロットとして剛毅果断に対処したものの、今度は自身に破滅の危機が迫る。
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デンゼル・ワシントン演じる主人公の名前が「ウィップ=Whip」だなんて、よくできていると思ったら、父親は第2次世界大戦でパイロットという設定だったんですね。どおりで「Whip=羽根」と名づけたはずです。ウィップを支える航空会社の仲間がチャーリー・アンダーソンというのは、もう狙ったとしかいえません。チャールズ・アフルレッド・アンダーソン氏は実際の人物で黒人として初めて、1933年に東から西へ米国大陸を飛行機で横断した人物なんですよ。また第2次世界大戦では、当時画期的だった黒人のパイロットを数多く送り込んだ経歴でも知られ、「チーフ」と敬われていたんです。ただし、映画のチャーリーは白人ですが。

この映画のポスターだけをみた当時、てっきり2009年1月15日に発生したUSエアウェイズ水上不時着事故を題材としたヒーローものだと想定してました。ところがどっこい、こちらは2000年のアラスカ航空261便墜落事故をモチーフにしていたんですね。どおりで映画で使われた機体、ストーリーでは「JN88」でしたが「MD88」を模していたはずです。アラスカ航空261便は、「MD83」だったんですよ。

映画情報サイトのIMDBが10点満点中7.4点、Rotten Tomatoesが100点満点中77点と、高評価の今作品。批評家の間でも主演のデンゼル・ワシントンをはじめ大絶賛の嵐ですが、パイロットを中心とした航空会社の関係者いわく、この映画を「観る気になれない」そうです。いかんせん、主人公がアルコール・ドラッグ中毒者というのがありえないそうで。金融業界の方々をはじめランダムにドラッグ検査が実施されるというアメリカというお国柄、人の命を預かる航空業界で行われていないはずもはく、彼のような常習者なら直ちに免許剥奪になること必至なんです。航空機を逆さまに飛行させるという荒業についても、批判的でしたっけ。個人的には、映画なんだから勘弁してあげて下さいって言いたくなりますけど。

デンゼル・ワシントンにとっては、間違いなく自身の代表作のひとつとなるでしょう。これまでデンゼルは、いわゆる「割りに合わない」俳優という不名誉が続いてたんです。2011年に映画興行収入に対し最も割高な俳優ランキングで5位で出演料1ドル当たりの興行収入は4.25ドル、2012年でも8位で出演料1ドル当たりの興行収入は6.30ドルでした。今回の「フライト」は2位の滑り出しで、製作費3100万ドルのところ2012年11月4日の封切で2490万ドルと8割を回収。前作の「セーフ・ハウス(Safe House)」が半分程度だったことを踏まえると、興行的にも上出来だったんです。

脇を固める俳優は、いぶし銀がそろいました~。主人公の友人チャーリーを演じるブルース・グリーンウッドは、映画「13デイズ(13 days)」でジョン・F・ケネディ役を務め、映画「デジャ・ヴュ(Deja Vu)」でも、デンゼルと共演してましたね。映画に張られた緊張という糸をさらに引き締める、パイロットの弁護士を勤めるドン・チードルも「青いドレスの女(Devil In A Blue Dress)」でデンゼルと対面済み。

ハリウッドが誇るベテラン俳優が勢ぞろい!
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映画で唯一、ジョークを発し笑いを与えるコミック・リリーフ的なジョン・グッドマンも、デンゼルとは「悪魔を憐れむ歌(Fallen)」で顔を合わせていました。主要キャストでは、恋人役でイギリス人女優のケリー・ライリーのみデンゼルと初共演。彼女は英国版トニー賞であるローレンス・オリヴィエ賞の主演女優賞に2003年、26歳と最年少でノミネートされた実力の持ち主なんです。

ケリー(右)、演技力といい美貌といい、今後注目の女優さんです。
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【以下、ネタバレに注意です。】

主人公を演じたデンゼル・ワシントン、主演男優賞で3度目のアカデミー・ノミネートの栄誉に浴したはずです。アルコールおよびドラッグ中毒者という役どころを微に入り細に入り体現しておりました。一夜を共にした搭乗クルーの女性が目覚まし時計に反応して身支度をする一方で、目を覚ましてまもなく昨日飲んだビールの残りを口にしても気怠るさと眠気が抜けない余りに、コークのラインを作って吸引する。瞬間、ブンッと虫の羽音のごとき効果音とともに瞬時にして覚醒するのです。挙句の果てに、搭乗前に嵐のなかウォッカをあおる・・・腫れぼったい顔とほんのり赤い目尻を隠すためサングラスをかけている姿から、尋常ではない様子が伝わってきます。

離陸してすぐ巻き込まれた暴風雨では、エンジン全開の速度で雲を抜け出し危機を脱します。乗客の拍手喝采を受け、自らマイクを取って状況をアナウンス。もう一方の片手は器用にウォッカの小瓶を何本か開け、オレンジ・ジュースのボトルに注ぎ込む・・。オート操縦で副操縦士に後を任せたウィップが眠りをむさぼるなか、悲劇が起こります。事態の異常に目を覚ますウィップ、垂直に急降下するなか混乱を隠せない副操縦士をよそに冷静に舵取りし、搭乗クルーの手を借りながら機体を正反対に翻えすなどあらゆる手を尽くし、ついに草原に着陸させることに成功――。この間、ウィップが関係をもった搭乗クルーは機体が反転した折にベルトが緩んでシートから落ちた子供を救出した結果、命を落としていました。

子供を救出したクルーのカタリナ(左)の存在が、ストーリーのカギを握ります。
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ここから、ウィップの苦難と懊悩が始まります。

病院で目を開けた瞬間から国家輸送安全委員会(NTSB)が事情聴取に入り、傍では記録係が控える。墜落から乗員乗客を救ったというエゴと自負が沸き起こる半面、搭乗クルーを含む6名が死んだという事実が重くのしかかる。マスメディアから逃げるため父親が残したジョージア州にもつ農場へ身を寄せるも、ウィップの胸には罪悪感のほかアルコール摂取とドラッグ使用で殺人罪として終身刑に服する恐怖もふつふつと込み上げる。病院で知り合った元ドラッグ中毒女性を助けることで希望を見出そうとするも、自分はアルコールを通じた現実逃避から抜け出せない・・。1ガロン・サイズのウォッカがぶ飲みした翌朝に1ガロンの飲料ボトルを手にする姿をみると、その痛ましさが見て取れます。

飛行という意味のFlightには、「逃避」という意味も含まれます。ウィップはまさにアルコール中毒、ドラッグ中毒という事実を否定し、逃避するためもがき続けます。元ドラッグ中毒者で恋に落ちた女性から集団カウンセリングに連れて行かれるも、決して自身の問題に対し「Fight=闘う」ことを選択できない。「Fight or Flight(闘うか逃避するか)」の狭間で、ウィップは常に逃げ道を求めるのです。

事故後の機体を前にして、ウィップの心の闇は深くなるばかり。
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NTSBの公聴会まで続く彼の逃避行。最後まで中毒者と言う事実から逃げ続けられるのか、自分に嘘をつき続けるのか。あるいは全員死亡という最悪の事態を免れたとはいっても犠牲にした人の命を踏み台に、何事もなかったように英雄として生き続けるのか。ウィップが最終的にたどりつく決断に納得できるかは、あなたの胸ひとつ次第です。

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