Cloud Atlas, Crowded With Too Much Karma.
クラウド・アトラス、時間軸にして約600年という江戸時代の2倍以上という時間をまたにかけた意欲作です。輪廻転生とカルマが複雑に絡み合い、人間が生きる意味を突き詰めるストーリー。物語原作者のデビッド・ミッチェルにして「映画化不可能(unfilmable)」と言わしめただけに、観るものをのっけから混乱に落っことしてくれました。
1億ドルもの巨額なドイツ系インディペンデント映画というスケールの大きさに増して、172分と3時間近い放映時間・・。鑑賞中はお尻が痛くなった方もいらっしゃったことでしょうね。以下、ネタバレです。
ストーリーをざっと追ってみますと。
1)1849年
公証人の青年アダム・ユーイング(ジム・スタージェス)は、サンフランシスコからハワイへ航海し大農園主(ヒュー・グラント)に会いに行く。ハワイ到着後、プランテーション視察中に鞭打ち刑に処される黒人奴隷と目が合うアダム。ハワイからの帰途、こっそり船に乗り込んだ黒人奴隷に説得され匿うことを了承した彼は、航海中に乗組員の一人である医者・グース(トム・ハンクス)に盛られた毒で瀕死の状態に陥った。絶体絶命のアダムを救うのは、他でもない黒人奴隷となる。
2)1936年
イギリスのケンブリッジ。才能はあってもお金のない同性愛者の作曲家ロバート・フロビシュナー(ベン・ウィショー)は、恋人ルーファス・シクスミス(ジェームス・ダーシー)に自身のキャリアの花を咲かせるため、高名な作曲家ヴィヴィアン・エイヤー(ジム・ブロードベント)の楽譜書き取り係を請け負ったことを明かした。ヴィヴィアンの屋敷に住み込み共同作業を続け、やがて出来上がる大作の前に、作曲家はロバートが同性愛者である事実を盾にに彼の名前をクレジットしないと言い張る。口論の末ロバートは作曲家を殺害。追い詰められたロバートは、安ホテルでの自殺を図ろうとする。「クラウド・アトラス六重奏」は、こうして作曲者の手から離れていく。
ロバートと恋人との幸せな時間を切り取ったこちら、本編の代名詞ともいえるシーンです。
3)1973年
「クラウド・アトラス六重奏」をレコード店で手にした女性ジャーナリストのルイサ・レイ(ハル・ベリー)は、ロイド・フックス(ヒュー・グラント)が経営する大企業の原子力発電所が実は時限爆弾という事実をルーファス・シクスミスから受け取る。本社でアイザック・サックス(トム・ハンクス)に出会いながら、やがてルーファスの死亡を知り自身も殺し屋に遭遇。しかしロイドの手下とみられた元軍人のジョー・ネピア(キース・デビッド)の支援を受け窮地を脱し、告発本の出版を決意する。ジョーは、ジャーナリストだったルイサの父と戦友だった。
4)2012年
ルイサの本を英国の出版社の社長ティモシー・キャベンディッシュ(ジム・ブロードベント)は、暴力的な作家ダーモット・ホギンズ(トム・ハンクス)の不当な要求で大金を作らねばらなくなり、やむなく資産家の兄デンホルム・キャベンディッシュ(ヒュー・グラント)に助けを求める。二つ返事で了承したデンホルムが指定した先は、逃亡不可能な老人ホーム。途中で初恋の女性(スーザン・サランドン)の家で淡い思い出に浸った後に直面する絶望に、ダーモットは兄に不当な仕打ちを尋ねると「お前は妻を寝盗ったツケを払うべきだ」と通告されてしまう。
5)2144年
韓国のネオソウル。ファーストフード店で働くソンミ451(ペ・ドゥナ)は、カプセル・ホテルのような場所に住みロボットのごとく同じ髪型・同じような服装をまとい奴隷のように顧客サービスを行う毎日。オーナーの性的暴行に加え顧客の破廉恥なイタズラを受けた同僚が、店内で即座に填められた首輪で殺されてしまうのを目撃したソンミ451の目の前に、突然ユニオン・レジスタンスという革命組織の一員であるチャン・ヘチュ(ジム・スタージェス)が現れる。レストランから救出され、ヘチュから驚愕の事実を知らされる。クローン人間として世に送り出された自分達は、一定の期間で「再利用」と称し食品にされてしまうのだ・・。現体制に変革をもたらそうとするユニオン・レジスタンスの闘いをみて、ソンミは体制に殺害される前に人類へのメッセージを録画する。
4)2321年、そして2346年へ
世界滅亡の危機後の世界に生まれたザックリーは、ソンミ451を型取った偶像とともにハワイに住む羊飼い。人食い人種と化したコナ族に父を殺害、弟を誘拐された過去を背負う。そのせいか、心の中に悪の化身オールド・ジョージー(ヒューゴ・ウィービング)が棲まうようになった。ある日プレシエント族の美しい女性メロニムがやって来て、ザックリー達が住む村で生活を始めた。始めこそ躊躇したザックリーは、娘の病気を治癒したメロニムを認めるようになる。そんなザックリーにメロニムは、彼が恐れる山へ連れて行って欲しいと頼む。そこで、ソンミ451のメッセージを目にするのだった・・・。下山後に、コナ族に襲撃された村で同族の首領(ヒュー・グラント)を殺害するも、娘を連れて逃亡中に別のコナ族に囲まれるザックリー。メロニムの助けを受け一命を取り留めた2人は、2346年も共に生活し次世代にソンミのメッセージを伝えていく・・。
(ひとまず、ここまで読んでいただいて、誠にありがとうございます。)
話を元に戻して・・。
一つ一つが映画として成立しそうな壮大なストーリーに加え、キャストも数珠つなぎのごとく時代ごとに特殊メイクの下で登場するので、誰がどの役を演じているか見破るのも楽しいはず。トリビアとして、ソンミ451の451、実はルイサのアパート部屋番号という隠れた遊びがあるのを見つけるのも、一興です。とはいっても・・・キャラクターの掘り起こしがないので、観客の気持ちが入っていけない。時代の移り変わりもついていきづらい。特に2012年から2144年へのジャンプは余りにも関連性が薄い・・。
カルマの物語といいながらジム・スタージェス、ハル・ベリー、ペ・ドゥナが演じる役どころは常に「善人」、あるいは「正しきを行うために挑戦する」人物である傾向が高い一方、ヒュー・グラントとヒューゴ・ウィービングの役柄が全て「悪人」、あるいは「闇をもつ」存在であることも気掛かり。性悪はどんなに生まれ変わっても性悪だなんて、救われないじゃないですか。
未来のネオソウルを舞台にした逃走シーンは迫力あふれ、さすが映画「マトリックス」の監督作品と頷きたくなります。とはいえ、ヘチュ役のジム・スタージェス、メフィー評議員演じるヒューゴ・ウィービング、記録官を務めたジェームス・ダーシー、アビス将軍のキース・デビッドに施したアジア人男性メイクのお粗末さは、目を覆いたくなります。そろいもそろって腫れぼったい顔にオタマジャクシみたいな目を引っ付けただけで、判子を押したように同じ顔に見えるんですもの。アジア系アメリカ人のためのメディア活動ネットワーク(Media Action Network for Asian Americans、MANAA)がクレームをつけるのも、分かります。
ヒューゴ扮するメフィー評議員が特に非道い・・。トラックに轢かれたカエルみたいです。
野心的、かつ意欲的な作品であり、製作には常人の想像を超える困難が立ちはだかったことでしょう。ただカルマを無造作に詰め込んだあまり、観る者に混乱と困惑を与える結果となってしまった気がします。
本編とは別に・・・映画の隠し味に、こんなものがあります。
ルイサ・レイは、米国の劇作家ソーントン・ワイルダーがピュリツッァー賞に輝いた「サン・ルイ・レイの橋(The Bridge of San Luis Rey)」にちなんでいるそうな。確かに、ルイサは殺し屋に狙われ橋から車ごと落っこちてしまいますよね。
ルイサのアパートの部屋番号とソンミにかかる「451」は、SF小説好きの皆さまにはご存知、「華氏451度」がルーツ。レイ・ブラッドベリー作品で、フランスが誇るフランソワ・トリュフォー監督の手によって映画化もされました。
本編中、世紀の名曲とされる「クラウド・アトラス六重奏」――監督のトム・ティクヴァをはじめ、ジョニー・クリメックとラインホルト・ハイルが共同で作曲したといいます。ところで・・・オリジナルがあることをご存知ですか?実は、もともと日本人の手によって誕生した作品ですよ~。オノ・ヨーコの最初の夫、一柳慧の「雲の表情」こそが、本家本元「クラウド・アトラス」なんです。彼の作品が海を越えて、イギリス人作家のデビッド・ミッチェルにインスピレーションを与えたとなれば、映画を観る目も変わる??オリジナル曲の一部は、ユーチューブで聴くことが可能ですので、要チェックです!
フューチャリスティックな音作りで、聴く者は空の彼方へ舞い上がる~。神戸出身なんですよ☆
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