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米7−9月期GDP速報値は予想上回るも、10−12月期から前借り?

by • October 30, 2014 • Finance, Latest NewsComments Off2603

 Q3 GDP Growth Beats Estimates, Grabbing From Q4?

米7−9月期国内総生産(GDP)確報値は前期比年率の3.5%増と、市場予想の3.0%増より強い結果となった。大寒波の打撃から3年ぶりのマイナス成長へ沈んだ1-3月期の2.1%減、4−6月期の4.6%増を経て、しっかりとした経済拡大の礎を築きつつある。1-9月期の成長率は2.0%増となり、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)の2014年末予想の達成に一歩近づいた。

内訳をみると、政府支出は4.6%増となり、前期の1.7%増を超え2009年序盤の高水準を達成。10月FOMC声明文で「財政政策の引き締めが経済成長を抑制している」との文言を削除したことと整合的である。特に連邦政府が10.0%増と前期の0.9%減から大幅増となり、防衛が16.0%増と前期の0.9%増を上回り足元で最も強い伸びとなった。

防衛支出が拡大、GDPに寄与。
defense.spending
(出所:Nation of change)

他にGDPを押し上げた項目は純輸出で、貿易赤字の縮小により寄与度は1.32%と3期ぶりにプラスに転じた。

一方で、GDPの7割を占める消費は1.8%増と市場予想の1.9%増に届かず。4−6月期の2.5%増も下回った。耐久財が7.2%増と、自動車に押し上げられ前期の14.1%増に続き消費をけん引している。サービスは1.1%増と、足元最低だった前期の0.9%増を小幅に上回った。非耐久財は1.1%増と、前期の2.2%増以下ながら2期連続で増加している。

民間投資は4−6月期の19.1%増から、今回は1.0%増へ伸びを鈍化。特に企業の設備投資を表す機器投資が7.2%増と、前期の11.2%増を下回った。固定民間投資も4.7%増と、前期の9.5%増には及ばず。非住宅も前期の9.7%増から5.5%増、構造物投資も前期の12.6%増から3.8%増へそれぞれ伸びをせばめた。

住宅投資は足元、住宅指標で減速がみられるように1.8%増にとどまった。前期の8.8%増から大きく伸びを鈍化させている。在庫投資も628億ドル増と、前期の848億ドルを下回った。知的財産は4.2%増と、前期の5.5%増を含め5期連続で増加。貿易赤字の縮小を背景に純輸出のマイナス寄与度は速報値の0.43%から0.34%へ縮小した。

GDPデフレーターは1.3%の上昇。市場予想の1.4%はもちろん、2012年7-9月期以来の2%乗せを果たした前期の2.1%から減速した。10月FOMC声明文で原油価格の下押しを指摘しつつディスインフレに絡む文言を挿入していた。コアPCEデフレーターは市場予想と一致し、1.4%。2012年1-3月期以来初めて米連邦公開市場委員会(FOMC)のインフレ目標値「2%」に並んだ前期の2.0%を大きく下回っている。

JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、結果を受け「米10−12月期GDPを従来の3.0%増から2.5%増」へ下方修正した。7−9月期GDPに寄与した防衛支出をはじめ、予想以上に堅調だった在庫投資や純輸出の寄与などは、「来期に反動が出る傾向が高い」と説明している。

民間支出は2.3%増と4−6月期の2.7%増を小幅に下回る程度だったが、フェローリ氏は「GDPの45%を占めるサービスが1.1%増に過ぎなかった」と指摘。ただし「10−12月期はガソリン価格の下落が消費を月ベースで0.25%押し上げると試算でき、2.9%増へ加速する」とも予想した。

——以上、米7−9月期GDP速報値はJPモルガンのフェローリ氏の指摘どおり、明らかに下駄を履いていました。ただし10−12月期は全米ガソリン価格が約4年ぶりに3.0ドル割れへ迫っており、ホリデー商戦の起爆剤となる可能性が高いことも事実。10月FOMC声明文で成長に自信をにじませ、出口戦略を意識しタカ派寄りへシフトしたはずです。

(カバー写真:Ct.gov)

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