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OPECの生産枠据え置きで、QE4観測が再燃する4つの理由

by • November 28, 2014 • Finance, Latest NewsComments Off4496

4 Reasons OPEC Might Trigger QE4.

石油輸出国機構(OPEC)は27日、ウィーンで開催した総会で石油生産枠を日量3000万バレルで据え置きました。原油価格が約4年ぶりの水準へ落ち込み需要を約100万バレル上回るなか、イランやベネズエラなど価格安定を目指し減産を要請したものの、サウジアラビアなど財政余力のある各国が回避。各メディアでは、「OPECが市場に価格決定を委ね役割を放棄した」歴史的な総会とするヘッドラインを飾っていました。

OPECでの決定は原油価格を一段安へ導き、28日のWTI原油先物は66.15ドル(7.54ドル安・10.2%安)と2009年9月以来の安値で終了。北海ブレント先物は70.45ドル(2.43ドル安、3.4%安)と、2010年7月以来の安値で引けました。

もうひとつ、気になるヘッドラインが。「OPEC Has Ushered In QE4(OPECがQE4の到来を告げる)」——原油安となればガソリン価格の下落を招き、ホリデー商戦前に消費者にとっては減税効果を与えるはずなのに、なぜ量的緩和第4弾(QE4)の先駆けと言われるのでしょうか。理由は、以下の4つが挙げられます。

1)設備投資の減速
バロンズ誌が原油安局面で再三にわたって指摘したように、エネルギー関連は設備投資の27%を占めるといいます。ところが現状、原油安を背景にシェールオイル生産者のうち「30%は利益が出ていない状況」。掘削に伴う維持費を支払う余裕はなく、設備投資が縮小していくリスクをはらみます。逆にいえばアメリカがOPECのお株を奪い産油国の地位を奪った意趣返しとして、OPECは肉を切らせて骨を断つ作戦に打って出たかたちです。

シェールオイル関連はサンクスギビング・デー明け、ご覧のような暴落を演じました。
stocks
(出所:Marketwatch

なお、バークレイズはOPECの生産枠据え置きを受け「今回の決定はこの負担を他の産油国、特にタイトオイルを大量に産出する米国にも負わせることになる」と指摘。足元の原油安でもアメリカが供給を抑制させるか懐疑的である上、2015年1月以降はアンゴラの石油輸出が5年ぶり、ナイジェリアも2年5ヵ月ぶり高水準となる見込みから「短期的にはブレント原油価格が70ドル以下に、WTI原油はさらに低い水準まで下がる」と予想していました。

2)ハイ・イールド債への影響
シェールガス革命の影響もあり、高利回り債市場のうちエネルギー企業の社債が17%と2008年の8%から上昇していました。原油安に伴いハイ・イールド債の価格下落および資金流出を通じ、金融市場に混乱を与えかねません。

3)銀行セクターに、融資焦げ付きリスク
米ウェルズ・ファーゴや英バークレイズは、石油・天然ガス企業サビーン・オイル・アンド・ガスとフォレスト・オイルの合併に8億5000万ドル相当のつなぎ融資を行っていました。UBSとゴールドマン・サックスも、プライベート・エクィティ(PE)アポロ・グローバル・マネージメント傘下のファンドによるエクスプレス・エナジー・サービシズ買収に資金提供していたといいます。しかし、足元で英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙によると買収は持ち越しとなったもよう。シェール革命を背景に銀行は同セクターへ積極的に融資していた可能性も潜んでおり、原油安は金融セクターを直撃する懸念が高まっています。

4)ロシア景気減速、ユーロ圏にさらなるダメージも
ロシア7−9月期国内総生産(GDP)は前年比0.7%増と、3四半期連続で鈍化。ウクライナ緊迫化をめぐる米欧の経済制裁に加え原油安も加わり、ロシア中央銀行(CBR)は2015年にゼロ成長となるリスクを点灯させています。成長リスクおよび財政難をにらみルーブル安には歯止めがかからず、CBRはルーブルの流動性を外貨スワップで制限する措置の維持を表明しました。OPECの生産枠据え置き決定を受け、28日に国債保証コストは2011年10月以来の水準へ上昇。マークイットによると、ロシアの5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、前日の299bpから314bpをつけていました。

原油版サブプライム危機が金融市場で猛威を振るいアメリカをはじめ世界成長を圧迫すれば、出口政策を見つめる米連邦公開市場委員会(FOMC)をUターンさせ、QE4を決断させかねない——少なくとも、弱気派の間ではこうした観測を元にQE4再燃論が高まりつつあります。

(カバー写真:Business Insider)

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