draghi

ECB、1.1兆ユーロの大規模QEを発表

by • January 22, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off10470

Draghi Delivers : ECB Unveils €1.1 Trillion Stimulus Plan.

欧州中央銀行(ECB)定例理事会では、市場予想通り政策金利にあたるリファイナンス金利を0.05%で据え置いた。上限金利の限界貸出金利も0.30%、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.2%で維持している。

記者会見では、市場が待望視していた国債買い入れを含む量的緩和(QE)の実施を宣言。理事会メンバーの「大多数」が支持しており、「あまりに多く票決を取る必要がなかったほど」だったという。QEの骨子は、以下の通り。

・月600億ユーロ、1.1兆ユーロ規模に(2014年9月は最低2年間、カバードボンドと資産担保証券の買い入れを決定)
・今年3月から開始、2016年9月まで
・2016年9月をメドとする一方、インフレ参照値”2%近辺”への持続的な回復が進むまで継続すると発言しオープンエンド型に

・買い入れ対象は投資格級の国債を含む
・ギリシャやキプロスなども買い入れ対象、ただし条件付きに
・その他の買い入れ対象は投資的格級のユーロ圏エージェンシー債、EU機関債など
・流通市場で買い入れ実施
・買い入れ対象の年限は2年から30年(OMTは最大で3年物)

・発行体の債務残高に対し、33%が買入の上限
・銘柄への上限は25%
・買入の20%がリスク共有の対象、残り80%は各国中銀が引き受け
・リスク共有の対象となる20%のうち、ECBが8%を担当
・リスク共有の対象となる20%のうち、12%が欧州機関が担当

ドラギ総裁は、市場予想の月500億ドルを大幅に超えるQEを決定した理由についてインフレと成長の弱含みを挙げた。インフレは「予想を下回り続けており」、「低インフレの状況が長引かないよう高まるリスクを打開する必要があった」と説明。また「経済のたるみ(スラック)は甚大でマネーと信用動向は抑制されたままだ」と懸念を示した。(*ユーロ圏19カ国の国債格付け、発行残高などの詳細はWSJ紙をご参照下さい。)

その他、ドラギ総裁は2014年6月に発表した”貸出に的を絞った長期流動性供給(TLTRO)”に適用される固定金利を10bp引き下げ0.05%へ引き下げを発表した。リファイナンス金利に並ぶ水準となる。

BNPパリバのケン・ウォトレット欧州・中東欧中東アフリカ共同ヘッドは結果を受けて「1月7日の会合で協議された最大5000億ユーロを大きく上回っており、第一印象としてはポジティブ」とコメントした。気掛かりな点としては、リスク共有を挙げつつ「大規模なQEでオープンエンド型プログラムであれば支払う必要のある代償」との見解を表明。投資的格級の債券購入を決断したように「モラル・ハザードの問題を乗り越える手段のひとつであり、かつ各国に財政規律を求めるよう圧力を掛けたとも言える」と論じた。買入対象の債券が投資適格級から格下げされた場合については、「取得済みの債券に影響はないだろう」と見込んだ。

——以上、事前に報じられた通り1.1兆ユーロ規模ものバズーカ型QEが発表されたため、欧州株を中心に上昇しました。独DAXは、前日に続き最高値で引け。ユーロドルは素直に売りで反応し、NY正午過ぎには約11年ぶりに1.14ドルを割り込みました。

欧州株は、軒並み1%超の上昇を達成。
cnbc-europe
(出所:CNBC)

PIMCOが20日に発表した資産配分をめぐるレポートでは世界株をオーバーウェイトとし、特に欧州株と日本株のアウトパフォームを予想していましたよね。今回のバズーカQEで、さらに上昇への足がかりをつけたと言えるでしょう。

CNBCに出演したジャニー・モントゴメリー・スコットのマーク・ランシーニ主席エコノミストも、ECBの決定が株式のようなリスク資産の「追い風になる」と予想。欧州株が比較的割安なため、米株を上回るパフォーマンスを遂げる見通しと述べていました。Fedの金融政策に対しては「ドル高が進もうとも、利上げ開始時期に影響は及ばない」と断言しています。米国の輸出は国内総生産(GDP)の15%を占め、そのうち15%が欧州向けであり「ドル高の影響は軽微」と説明していました。ただしドル高は多国籍企業に打撃となり、金利低下圧力を受けるとも付け加えています。

スイスのダボスで開催中の世界経済フォーラム(WEF)に出席していたジェームズ・ゴーマン最高経営責任者(CEO)は「世界が待ち望んでいた結果」と評価していました。ECB版「衝撃と畏怖(shock and awe)」とも呼ぶべき、大規模QEをめぐり時間が経過するごとに様々な思惑が渦巻くことでしょう。

(カバー写真:CNBC)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.