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インド、年初から2回目の緊急利下げ—MPC設立が一因?

by • March 4, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2414

RBI Unexpectedly Lowered Its Policy Rate, Again.

インド準備銀行(中銀、RBI)は4日、1月15日に続き緊急会合で25bpの利下げに踏み切り政策金利を7.5%に設定しました。1月の緊急利下げに続き、年内で2回目の措置となります。

ラジャン総裁は、4月7日の金融政策会合を待たずに利下げに踏み切った理由として声明にて「経済の一部セクターは依然として弱い状態を保つ上、世界は金融緩和トレンドにあり、金融政策は先取りしていくべき」と説明。原油安をはじめとする商品価格の下落、世界的な景気鈍化を背景に物価が下振れを続けるなか「ディスインフレは予想以上に加速している」と主張し、迅速な行動が必要だったとの認識を示しました。総裁の指摘どおりインド1月消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.11%の上昇と2016年1月までの目標値”6%”を割り込んでおり、緊急利下げこそ予想外だったものの、追加利下げを見込んだマーケット関係者のシナリオと整合的です。

RBIは、成長にも懐疑的な目を向けています。ラジャン総裁は「経済サイクルを示す指標をはじめ生産、信用、輸入、稼働率は引き続き低水準で、好調な成長率とは整合的ではない」と指摘。インド統計計画履行省が2月9日に発表した2014年度国内総生産(GDP)見通し7.4%、2014年10−12月期GDP改定値7.5%に懐疑的な目を向けています。中国の2014年成長率は、7.4%でした。

今回の政策決定には、2月28日に財務省が発表した2015年度(2016年3月末終了)予算案が脳裏によぎったことでしょう。RBIがまもなく金融政策委員会を設立させるにあたり、モディ政権との間で議論がヒートアップしているに違いありませんから。

全国一律の物品サービス税(GST)の導入を2016年4月で維持した半面、歳入見通しは楽観寄りに傾いています。成長拡大を視野に、道路・鉄道インフラ投資を110億ドル引き上げる方針も盛り込みました。財政赤字の国内総生産(GDP)比は2015年度に3.9%と、シン前政権の3.6%を上回っています。さらに財政赤字をGDP比3%に縮小させる目標時期も1年先送りさせ2017年度としており、ジャイトリ—財務相が主張するほど財政健全化を推進しているようには見えません。

ブルームバーグによると、ラジャン総裁は金融政策枠組み合意に言及。政府と公式インフレ目標(4%±2%)で合意し、かつ目標からかい離した場合にRBIが説明責任を果たすことを盛り込んだ枠組みは「財政政策と金融政策が補完的に作用する暗黙の了解を明確化した」と論じています。その割に、予算案は成長路線を打ち出しており財政赤字の縮小には疑問が残る。なぜ、ラジャン総裁はわざわざこんな発言を漏らしたのでしょうか。

BNPパリバのアジア担当エコノミストであるリチャード・アイリ—氏は、ラジャン総裁が「疑わしきは罰せずとの原則をはっきりと打ち出した」と分析。また「会合前のサプライズ利下げに踏み切ることでモディ政権の成長路線を支持する姿勢を強調し、ラジャン総裁自身が望むメンバーをMPCに送り込む意図があるのだろう」と解釈していました。インド株式指数SENSEXが一時30000pの大台を突破し過去最高値を更新してから利益確定の売りに押され0.73%安で引けたのも、こうした思惑を汲み取ったとも考えられます。

RBIの決定を受け、アイリ—氏はモルガン・スタンレーは2015年度(2015年4月−2016年3月)以内に追加で25bp利下げを行うとの予想を維持。モルガン・スタンレーは4月7日の金融政策決定会合で25bpの追加利下げ、バークレイズは4−6月期に25bpの利下げを描いています。4月7日にRBIが再び行動に出るかは、ひとまずMPCの顔ぶれが決まるかどうかにもかかってくるでしょう。

(カバー写真:Dhiraj Singh/Bloomberg)

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