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米2月雇用統計・NFPは絶好調でも米株安の理由

by • March 6, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off3598

Job Creation Jumps Despite Tough Winter, Yet Stock Market Opens Lower.

米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比29.5万人増と、市場予想の23.5万人増を軽く超えていった。前月の23.9万人増(25.7万人増)を大きく上回り、大寒波と積雪を乗り越え2014年12月以来の32.9万人増に次ぐ水準。3ヵ月平均は28.8万人増と1997年11月以来の高水準だった前月の33.0万人増から減少しつつ、6ヵ月平均は29.3万人増と前月までの27.9万人増を上回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が28.8万人増となり市場予想の22.5万人増より強含みを示した。ホリデー商戦明けで23.7万人増(26.7万人増から下方修正)へ鈍化した1月から、再び加速している。特にサービス業が前月の17.3万人増を超え、25.9万人増とけん引した。

(サービスの主な内訳)
・娯楽/宿泊 6.6万人増>前月は3.9万人増、増加トレンドを維持しつつ直近で最高
そのうち食品サービスは5.9万人増、過去12ヵ月間の平均値3.5万人増を上回る
・貿易/輸送 6.2万人増>前月は4.4万人増、ホリデー商戦後も増加トレンド維持
そのうち小売は3.2万人増>前月は2.8万人増、2ヵ月連続で増加
・教育/健康 5.4万人増>前月は4.6万人増、増加トレンドを維持
・ビジネス・サービス 5.1万人増>前月は1.0万人増、増加トレンドを維持
そのうち派遣は0.8万人減>前月は1.4万人減、2ヵ月連続で減少
・金融 1.0万人増<前月は2.2万人増、11ヵ月連続で増加
・情報 0.7万人増>前月は0.5万人増、4ヵ月連続で増加
・政府 0.7万人増>前月0.2万人増、地方政府が支え増加トレンドを維持

財政産業は2.9万人増となり、前月の6.4万人増を下回った。14ヵ月連続で増加しつつ、大寒波と積雪の影響で4ヵ月ぶりの低水準となる。

(財政産業の内訳)
・建設 2.9万人増<前月は4.9万人増、悪天候により4ヵ月ぶり低水準も14ヵ月連続で増加
・製造業 0.8万人増<前月は2.1万人増、直近で最も低い伸びながら増加トレンドを継続
・石油関連 1100人減>前月は1900人減(速報値)

2月も30万人近い増加を達成し、モメンタム継続を示唆。

nfp
(出所:BLS)

時間当たり平均労働賃金は、前月比0.1%増の24.78ドル(約3000円)。2008年11月以来で最高を記録した前月の0.5%を下回り、市場予想の0.2%にも届いていない。1月の急伸は、最低賃金引き上げの影響が色濃く現れたとみられる。前年比は2.0%の上昇となり、5ヵ月ぶり高水準だった1月および予想値の2.2%以下にとどまった。生産労働者・非管理職の場合は、前月比±0%の20.80ドル(約2500円)で、前年比は1.56%と1月の1.96%から鈍化。全従業員の週当たり賃金は、前月比0.1%増の857.39ドル(約10万2900円)と前月の0.5%増から減速。前年比では2.6%と、1月の2.8%(速報値ベース)を下回る。生産労働者・非管理職の週当たり賃金の場合は、前月比±0%の703.04ドル(約8万4400円)。前年比では、1月の2.9%から2月に2.5%へ伸びをせばめた。

最低賃金が引き上げられた州、ご覧のようになっています。
map
(出所:HR.BLR)

週当たりの平均労働時間は5ヵ月連続で34.6時間となり、市場予想とも一致。2008年5月以来の高水準を保つ。製造業の平均労働時間は41.0時間となり、前月と変わらず。もっとも、2014年6月に続き2007年以来の高水準に並んだ2014年11月の41.1時間以下にとどまる。

失業率は5.5%となり、2008年7月以来の6%割れを維持。市場予想の5.6%および前月の5.7%を下回った。リーマン・ショック以前にあたる2008年5月以来の低水準を示現している。2014年12月時点の米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2015年末予想のレンジ上限に並んだ。マーケットが注目する労働参加率は62.8%。1月の62.9%から低下し、1978年2月以来の低水準に並んだ2014年12月の62.7%ヘ近づいた。

失業者数は前月比27.4万人減となり、前月の29.1万人増から減少に反転。過去6ヵ月間で4回目の減少を示した。雇用者数は9.6万人増と、9ヵ月連続で増加している。就業率は2ヵ月連続で59.3%となり、約5年ぶりの水準へ保った。

経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は、11.0%。前月の11.3%から低下し、6ヵ月連続で2008年10月以来の12%割れを維持している。平均失業期間は31.7週と、前月の32.3週から短縮。ただし、少なくとも2010年3月以来でもっとも短かった2014年9月の31.5週を上回る水準を維持した。失業期間の中央値は13.1週と前月の13.4週から短縮しつつ、こちらも少なくとも2009年以来の低水準とされる2014年12月の12.6週を超える水準を保つ。

フルタイムとパートタイム動向をみると、フルタイムは前月比0.1%増の1億2083万人となり3ヵ月連続で増加。パートタイムは0.3%減の2747万人と、減少に転じた。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
2月は11.0%、2008年9月以来の低水準だった2014年12月の11.2%を下回り改善が進む。不完全失業者数も前月比2.6%減の663.5万人と、減少基調に戻す。

2)長期失業者 採点-○
失業期間が6ヵ月以上の割合は31.1%と、1月の31.5%を下回った。平均失業期間は31.7週と、1月の32.3週から短縮。6ヵ月以上の失業者数も2月に270.9万人と、前月の280.0万人から3.3%減少。

3)賃金 採点-×
2月は前月比0.1%増となり、2008年11月以来の高水準となる1月の0.5%増から伸び鈍化。2月は前年同月比も2.0%の上昇にとどまり、5ヵ月ぶり高水準だった1月の2.2%以下に。2012年11月から続く1.9−2.2%のレンジ下限に寄せた。なお生産労働者・非管理職の場合は、前月比±0%の20.80ドル(約2500円)で、前年比は1.56%と1月の1.96%から鈍化しヘッドラインの2.0%からかい離した。

4)労働参加率 採点-×
2月は62.9%と、1月の62.9%から上昇。1978年2月以来の低水準である2014年12月の62.7%に近づく。非労働人口は9290万人と、これまで過去最悪だった2014年12月の9290万人に並んだ。軍人を除く民間労働人口も前月比0.2%減の1億5700万人となり、前月から減少に転じた。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、米雇用統計後にFed番のヒルゼンラス記者による「力強い米2月雇用統計で、Fedは年内の利上げへ動く(Robust Jobs Report Keeps Fed Moving Toward Midyear Rate Increase)」と題した記事を配信した。米2月雇用統計・NFPの4ヵ月平均は32.2万人増と1997年以来の高水準に達し、失業率は2014年12月FOMCの予想レンジの上限に到達するなか、Fedは3月17−18日開催のFOMCで利上げのタイミングについて協議する見通しだという。ただしイエレンFRB議長が議会証言で「賃金の伸びに大幅な改善はみられていない」との見解を示したように賃金動向はさえず、Fedが今年半ばに利上げへ動く保証はないとも付け加えた。

ロイターは、米2月雇用統計を受け「短期金利先物市場が下落し、今年の夏に利上げに着手を見込む声が強まったとみられる」と報じた。

BNPパリバは、今回の結果を受け年内利上げの圧力が高まったと分析しつつ「労働参加率が低下しなければ失業率は5.7%のままだった」と指摘。利上げにはインフレ動向も注視する必要があるとした上で、「上半期はPCEコアが鈍化する見通しのなかで条件は満たされる方向にはない」と付け加え、9月利上げシナリオを堅持した。ゴールドマン・サックスのジャン・ハチウス主席エコノミストも、Fedの第1弾利上げを9月で据え置いた。

一方で、ウェルズ・キャピタル・マネジメントのジム・ポールセン主席投資ストラテジストは、米2月雇用統計後にCNBCに出演し「6月利上げが濃厚になった」と強調。失業率は「1年間に1%ポイント、向こう6ヵ月で5%に達する見通しであり、Fedがゼロ近辺金利を維持する正当性はない」と力説した。

——以上、米2月雇用統計・NFPが大寒波・積雪に見舞われながら目覚ましい伸びを達成したため、3月17−18日開催のFOMCで「(利上げに)忍耐強くなれる」との文言を削除する地合いが整いました。問題は、伸び悩む賃金動向と労働市場の実体とのかい離が懸念される労働参加率にどう対処するか。1月の賃金上昇が最低賃金の引き上げの影響という実態を明らかにした一方、ニューヨーク市ではデブラシオ市長が最低賃金を13ドルへ引き上げる案を推進するように、全米で最低賃金の議論は高まり続けるでしょう。賃金が底上げされ一時的に数字が上振れしても、反動として中流層の賃上げが抑制されるリスクも。有給休暇の消化に消極的なアメリカ人のスタンスを踏まえると、賃上げ交渉に強気で迫る公算は小さく、賃金見通しは決して明るくはありません。

ダウ平均は、米2月雇用統計に反応し一時100ドル以上の下落を示しました。1)米雇用統計・NFPと失業率を背景とした早期利上げ懸念再燃、2)賃金の伸び低迷、3)労働参加率の低下——を嫌気したのでしょう。特に雇用の伸びが著しかったとはいえ、NFPのうち22%が低賃金の外食産業を含む食品サービスであることは、雇用改善の質に疑問を投げかけます。

(カバー写真:Reuter)

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