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アッパレな米1月雇用統計で、利上げ織り込み度はどう変わった?

by • February 6, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off3146

Market Sees Little Possibility For An Early Lift-Off Even After A Blockbuster January Jobs Report.

米1月雇用統計が過去分の大幅上方修正を伴う会心のブロックバスターとなり、マーケットの利上げ織り込み度は確実に変化しつつあります。

FF先物動向によると、マーケットは2016年12月末までにFF金利誘導目標が”1.23−1.5%”へ上昇すると予想。米雇用統計前より、1回増える計算となっているんですね。利上げ開始時期は、年後半から9月に集約されつつあります。米雇用統計発表の2日前、6月利上げを見込む著名エコノミストは筆者に「マーケットは利上げ開始時期を12月へ後ろ倒しさせつつある」と忌々しそうに言い放っていたものですが、今ごろ彼は両手を叩いて喜んでいることでしょう。

2016年末の利上げ幅予想が以前より上昇したとはいえ、2014年12月FOMCでのFF金利見通しと比較するとまだまだ甘い。Fedメンバーの年末予想・中央値は1.125%ですから、マーケット予想からいかに大きくかい離しているかが分かるというものです。

なぜマーケットとFedの見方はこれほどかい離しているのでしょうか。

ひとつに、賃金上昇への疑問が挙げられます。こちらで指摘させて頂いたように、2014年11月の中間選挙と合わせて実施された州民投票で5州が最低賃金引き上げに可決したほか、2015年から全米20州以上で最低賃金引き上げを実施したため少なからぬ影響を与えたことでしょう。半面、生産労働者・非管理職の時間当たり賃金が1月の時間当たり賃金のヘッドライン以下だった。最低賃金の上昇を反映しつつも、管理職の賃上げが全体を引っ張ったと考えられます。

原油安ドル高への懸念も根強い。筆者もここに属しますが、労働関連の経済指標はラグを伴う傾向が高いという欠点があります。年始から、原油安を背景に油田サービス大手のシュルンベルジェをはじめエネルギー関連企業はリストラを発表してきました。米1月チャレンジャー人員削減予定数が約2年ぶりの高水準だったことも、不気味でしたよね。フェイスブックの決算で明らかになったように一部企業では採用を増やしつつありますが、IBMメイシーズなども大規模な人員削減計画の方針を打ち出しており、どこまで波及してくるか今のところ不透明です。

米新規失業保険申請件数のテクニカル要因も、留意したい。
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(出所:kpel965)

ドル高をめぐっては、産業界から反発の声が届き始めました。原油安とドル高のダブルパンチを受けた決算発表後、キャタピラーのダグ・オーバーへルマン最高経営責任者(CEO)は、米経済が利上げへの態勢が整っていないことを理由に「必要以上に早期の段階で利上げすべきではない」と主張。効率化を通じゼネラル・エレクトリック(GE)の再建を導いたジャック・ウェルチ元CEOも、CNBCで「Fedが利上げするなんて狂気の沙汰だ」と声を荒げます。

打って変わって、Fedは原油安がインフレの押し下げ要因と懸念しつつ1月FOMC声明文に明記したように「購買力を高める」と歓迎ムード。出口戦略にあたって世界経済の動向を配慮するとの文言を挟み込んだとはいえ、Fed関係者はドル高にも冷静なコメントが目立ちます。セントルイス連銀のブラード総裁は「米経済にとって、大きな問題ではない」と一蹴。3月で退任予定のダラス連銀のフィッシャー総裁は「労働市場にプラス効果」、同じくフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁も「米経済は柔軟性がある」と全く意に介しておりません。今年の投票権を持つサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁も、「エネルギー価格の下落とドル高は織り込み済み」と明言していました。

24—25日の旧ハンフリー・ホーキンス証言で、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長も原油安とドル高への不安を振り払うのか。あるいは、マーケットは利上げ開始を遅らせるよう催促してくるのか。以上の2点をめぐる見解に加え、「(利上げに)忍耐強くなれる」の文言削除へ扉を開くのか、注意が必要です。

(カバー写真:Bloomberg)

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