Summers Sides With Dimon Over Liquidity Issues.
イエレン氏に米連邦準備制度理事会(FRB)議長の座を事実上譲った、ローレンス・サマーズ元米財務長官。CNBCに出演し、米当局の規制強化に苦言を呈しました。
サマーズ氏は「規制当局が金融機関の安全性に注力する場合、マーケットの開放性と流動性を維持できなくなる」と指摘。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)兼会長が株主宛てに8日付けで送付した書簡と歩調を合わせています。
ダイモンCEOはというと、2014年10月15日に米10年債利回りが40bp(0.4%ポイント)も変動したことこそ流動性不足を象徴していると批判。その上で「30億年に一度しか起こらないような空前の出来事」と評し、市場が「威嚇射撃」を放ったと論じています。金融危機を経て米監督当局が銀行規制(通称ボルカー・ルール)を導入した結果、「銀行システムはこれ以上ないほど安全になった」としつつ、網の目のように張り巡らされた規制の悪影響により「新たに迫る危機が金融市場に及ぶ可能性が高い」と警鐘を鳴らしていました。
ボルカー・ルールにより短期的な自己勘定取引が制限され、ヘッジファンドの投資が規制され、銀行が自前でリスクを取る取引が事実上できなくなってしまい、マーケット関係者の間では証券市場でのマーケット・メークいわゆる価格形成の面で不安視されていたものです。ダイモンCEOはここを突き、金融市場はテール・リスクに脆弱と訴えています。債券市場と同じく「主要国の為替市場は世界で最も標準化され流動性が潤沢な金融市場とみなされる」ともコメントしており、足元のボラ上昇を規制強化の一環と追求の手を緩めません。
ダイモンCEOの書簡そのものこそボルカー・ルールへの「威嚇射撃」なら、サマーズ氏の見解は「援護射撃」といったところでしょうか。
米国をはじめ金融市場は確かに、2014年後半からFedの利上げ開始を視野に入れつつボラティリティが急上昇しています。一方で、米連邦預金保険公社(FDIC)のトーマス・ホーニグ副総裁は「ボルカー・ルールへのステルス攻撃は銀行によるリスクの高い取引を再開させ納税者が損失補填を余儀なくされる事態を招きかねない」と鋭く批判していました。2016年の米大統領選をめぐり、銀行規制問題も話題になるのでしょうか。世論調査では経済・失業への関心が最も高く、今年7月21日に自己勘定取引の停止が義務付けられるだけにますます議論は白熱していきそうです。
サマーズ氏はFedの金融政策について、時期尚早な利上げへの警戒を打ち出していました。同氏は「経済のリスクは景気過熱とインフレよりも、景気減速と停滞に傾いている」と指摘。インフレをめぐり「予防的な策は通じない、むしろ大きな間違いにつながる」とも付け加えました。サマーズ氏が仮にFRB議長であれば、6月利上げを回避したのでしょうね。
(カバー写真:CNBC)
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