Cœuré And Noyer Indicate More ECB Actions, Preparing For Greek Tragedy?
欧州中央銀行(ECB)のクーレ理事は、5月から6月に月額600億ユーロとする量的緩和(QE)の規模を「わずかに」拡大する可能性を点灯させました。1日遅れの19日に公表された講演原稿によると、7月半ばから8月に夏期休暇を背景に流動性が低下するためで、9月にも買い増す可能性に言及しています。ドイツの国債利回り上昇をめぐっては、相場反転を「懸念材料と判断していない」と発言。問題は「そのスピード」にあると説明し、「世界の資本市場における流動性低下の兆候として、過剰に変動している新しい例」と述べています。
中銀預金金利については、現状のマイナス0.2%から「理論上では」一段と引き下げられると発言。マイナス金利は「想像したほど、金融政策運営に困難を与えていない」とも語りました。ただ実際に引き下げるかは別問題とし、「現状のレンジ下限は効力を発揮している」と付け加えています。
定例理事会メンバーでフランス中銀の杉良太郎ことノワイエ総裁も19日、追加緩和を示唆。ユーロマネー主催の会議で「(ECBとユーロ加盟18カ国の中銀を指す)ユーロシステムは、インフレ参照値2%付近を維持する使命を果たすため、一段の用意がある」と発言しています。QEに対しても、2016年9月まで継続すると強調。インフレが参照値を回復しない場合は「以降も続ける方針」と述べました。
フランス人の定例理事会メンバーがそろって、なぜこのタイミングでハト派寄りの見解を表明したのでしょう?6月3日の定例理事会まで待てなかった理由があったのでしょうか?ざっと理由としては、
1)独債をはじめ欧州債利回り上昇への対応
2)ユーロ高けん制
3)米経済指標の弱含みを背景とした利上げ観測の後退への配慮
4)夏期の流動性低下を意識し先手を打つECBをアピール
5)FOMC議事録やイエレンFRB議長講演前を前に、金利上昇再開への備え
——以上の5つが考えられますが・・何より最大の懸念材料はギリシャだったのではないでしょうか。6月5日の国際通貨基金(IMF)への返済期限までに債権団と合意しなければ、デフォルトあるいはユーロ圏脱退が現実味を帯びますからね。
ギリシャの債務問題は、引き続き明確な妥結の兆しはみられず。ギリシャ悲劇そのままにデフォルトを迎えてしまえば、ただでさえ変動が激しいなか、ギリシャ債主導で欧州債利回りが一段と上振れしかねません。奇しくもフランス人お2人の発言は、ギリシャのチプラス首相率いる急進左派連合(SYRIZA)メンバー間で18日、国際債権団との「交渉決裂(ruputure)」を求める動きが先鋭化した翌日に出てきました。デフォルトすら辞さない構えです。チプラス首相自身も国内での圧力に耐えきれないのか同日、融資再開をめぐり年金支払いのさらなる削減に否定的なコメントを発していました。
SYRIZA支持者が集い、国際債権団と交渉するチプラス政権に物申す。
(出所:Adolfo Lujan/DISO Press/Flickr)
独10年債利回りが前日比10bp低下の0.57%を示したのも、グレクジット(GREXIT)の序曲と判断し安心感が流れたからなのでしょうか?ユーロは金利低下、力強い米4月住宅着工件数に押し下げられただけでなく、ECBが静かに鳴らした警鐘に反応した余地を残します。そういえばドイツやスロベニアなどの財務相をはじめ、ユーログループ議長からも「プランB」を準備済みとの発言も4月末から飛び出していましたし、ECBが「もしもの事態」に備えてもおかしくはないでしょう。
(カバー写真:EU)
Comments
戦後70周年、現代能「長崎の聖母」がNYで公演 Next Post:
MBA住宅ローン申請件数指数は4週連続で低下、金利上昇に抗えず