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ドラギECB総裁、欧州債のボラ上昇でもQE規模拡大に言及せず

by • June 3, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2208

Draghi Didn’t Calm Down European Bond Market Sell-Off.

欧州中央銀行(ECB)定例理事会では、市場予想通り政策金利にあたるリファイナンス金利を0.05%で据え置いた。上限金利の限界貸出金利も0.30%、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.2%で維持している。

ドラギECB総裁の記者会見、前回4月は女性の抗議活動家が乱入するというサプライズに見舞われたものの今回はつつがなく執り行われた。同総裁は前回に続き、量的緩和(QE)をはじめとする支援策の「完全実施(full implementation)」を確約した。資産買い入れプログラム自体、前回と同じく「順調に進んでいる」とも発言。出口政策の協議は「時期尚早」との見解も示し、2016年9月までの実施を強調している。

QEの完全履行をアピールした一方、ボラティリティの上昇に対し「慣れる必要がある」と諭すにとどめた。足元で独債をはじめ欧州債が売りを浴び利回りが急伸するなかでも、クーレ理事がECB内で初めて言及した迅速なQE規模拡大への言質を一切与えていない。

独10年債利回り、ドラギ総裁の発言で急伸。
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(出所:Investing)

経済見通しについては「下振れリスクが残るものの、均衡に近づいた」との見解を表明した。前回の「ダウンサイド・リスクが残存するものの原油安・ユーロ安により均衡にシフトした」と、ほぼ変更せず。もっとも、足元の経済指標をめぐり「4−6月期に緩やかなトレンドを続けるとの予想と整合的」にとどめ、前回の「一段とモメンタムを取り戻した」を削除している。また前回の「経済回復は広がりをみせ、徐々に強まるだろう」から、今回は「徐々に強まるだろう」との文言を外し、全体的に下方修正した格好だ。

▽ECBスタッフ経済見通し改訂版は、以下の通り。

2015年見通し(6月時点)
GDP 1.5%
HICP 0.3%
2015年見通し(3月時点)
GDP 1.5%
HICP 0%

2016年見通し(3月時点)
GDP 1.9%
HICP 1.5%
2016年見通し(6月時点)
GDP 1.9%
HICP 1.5%

2017年見通し(6月時点)
GDP 2.0%
HICP 1.8%
2017年見通し(3月時点)
GDP 2.1%
HICP 1.8%

BNPパリバのケン・ウォトレット欧州・中東欧中東アフリカ共同ヘッドは結果を受けて「全体的には、ハト派寄りだった」と振り返る。理由は2点で、ひとつに「景況判断が4月時点より慎重」だったと指摘。もうひとつの例として、「マーケットのボラティリティ上昇はQEの完全履行を脅かすものではないと強調」した点を挙げた。ただしスタッフ経済見通しは据え置かれたままで、2015年のインフレ見通しは上方修正されている。しかも欧州債市場のボラティリティに対する質疑応答に絡み、QE規模を含め政策決定は「物価安定」動向次第とも返答するにとどめた。流動性不足に合わせたQE規模拡大のクーレECB理事の見解を打ち消すもので、ウォトレット氏は「独債を中心とした欧州債の売りを招いた」と結んだ。

——ドラギ総裁は、QE規模拡大を期待していたマーケットの梯子を外した格好です。おかげで欧州債の売り(利回り上昇)・欧州株安・ユーロ高の展開に。ギリシャ支援協議でようやく解決の糸口が見え始めるなか、支援拡充の必要性がはく落したと判断したのかもしれません。

(カバー写真:ECB/Flickr)

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