Is September Rate-Hike Still In Play?
米6月雇用統計は予想外に労働市場の鈍化を示唆する内容で、マーケットは年明けの利上げを織り込み始めました。
確かに、6月は労働市場鈍化の兆候が目立ちます。
1)労働参加率の低下
→6月は62.6%となり、5月の62.9%および3月の62.7%を下回り1977年9月以来の低水準。
2)非労働人口の増加
→非労働人口は9363万人となり、5月の9299万人から0.7%増加し過去最高。
3)フルタイムの雇用が減少、パートタイムが増加
→フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.3%減の1億2105万人と減少。逆にパートタイムは0.6%増の2767万人と、増加に反転。増減数ではフルタイムが34.9万人減少し、パートタイムは16.1万人増加した。
4)時間当たり賃金が鈍化
→6月は前月比±0%となり、5月の0.2%増を下回った。
労働参加率をめぐって、バークレイズの為替ストラテジストである門田真一郎氏は「発表元の米労働統計局(BLS)は厳冬の影響で卒業時期や学期末が遅れた可能性を指摘しており、実際に6月は季節調整がぶれやすい」とのコメントを寄せています。仮に大寒波の影響とあれば、労働参加率には改善余地が残る。米雇用統計前、フィッシャーFRB副議長やダドリーNY連銀総裁の発言にハト派色は強まっていませんでした。
大寒波で交通網が遮断し学期末が遅れ、卒業シーズンがずれ込んだ可能性は否めず。
(出所:Nottingham Trent University/Flickr)
非労働人口はベビーブーマー世代の引退に合わせ増加トレンドを維持する公算で、改善余地は狭い。フルタイムとパートタイムの動向は気掛かりながら、7月も流れを引き継ぐか見極めが必要でしょう。
時間当たり賃金動向こそ、Fedの金融政策にとっての鬼門。6月の前年同月比は2.0%上昇し、2013年夏場以来の高水準だった2.3%から鈍化しました。
詳細をみると、管理職を含む全従業員と生産労働者・非管理職は前年比で5月から鈍化。両者に横たわるかい離は、縮小の兆しが見えています。
▽生産労働者・非管理職の時間当たり賃金
前月比0.1%増の20.99ドル(約2580円)>全従業員は±0%
前年比は1.9%増<全従業員は2.0%増
▽週当たり賃金
・全従業員は前月比で±0%の860.78ドル(約10万760円)と、増加を2ヵ月で止めた。前年比では2.0%増となり、4月の2.3%増を下回る。
・生産労働者・非管理職の週当たり賃金は、前月比0.1%増の705.26ドル(約8万6750円)。2ヵ月連続で増加した。前年比では1.6%増となり、5月の2.0%増から鈍化。全従業員と並ぶ。
いずれにしても米6月消費者信頼感指数などセンチメントが高水準にも関わらず、 賃金動向は鈍いままです。
こうした悩ましい材料が並ぶ一方で、非農業部門就労者数(NFP)は失業率を低下させるに十分な20万人という節目を維持しています。長期失業者や不完全失業者も、大いに改善しました。労働参加率の低下に特殊要因が作用した可能性もあり、米6月雇用統計だけで9月利上げの可能性が消滅したと判断するのは時期尚早に映ります。また労働市場に加え海外の不透明性により成長率が下半期に減速するリスクも見逃せず、待てば待つほどタイミングを逸しかねない。米6月労働市場情勢指数(LMCI)や米5月雇用動態調査(JOLTS)にも、目を配る必要があるでしょう。
(カバー写真:Andrew Smith/Flickr)
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